要注目ソロアーティスト ぺんぎんの憂鬱、『曖昧夢』 リリース記念インタビュー
一度聴けば抜け出せなくなる
ぺんぎんの憂鬱はヘクトーよるをまもるの企画ライブに別プロジェクトに出演したのをきっかけにこのプロジェクトを知りました。
ちょうど落ちるのPVが公開されていてそこからリリースされた曲や活動をチェックするようになりました。
なんとなくではあるが、いずれ何かしらで関わるような予感がしていたところ音源リリースの連絡がきた。
リリース前に一度音源を一通り聴かせてもらったが、曲からなんとなくではあるがVo.たなさんのキャラクターが伝わってくる感じと曲がしっかりと、かっこいいのがとても印象的でした。(個人的にM4.決めないが好みだった)
前作の音源も聴けば聴くほどにいつの間にか繰り返し聴きたくなっていて、
ここ最近でぺんぎんの憂鬱を知った方たちも同じような状況になっているのではないでしょうか。
今回リリースされた曖昧夢は各地で反響を呼んでいますが、この反響は単純なものではないと個人的に思います。
SNSでリリースイベントに向けてひたむきに努力をする様子が連日更新されていて、今回の音源に対する思いが直接話していなくとも伝わってきた。
おそらくこの努力があってこそ今回の反響だったのでしょう。
今回のインタビューはこの連日の努力の原動力、たなさんの音楽活動に対する思いやソロで活動するときの心の内を皆さんに知ってもらいたくインタビューを敢行しました。
音楽活動している方にもそうでない方にも是非一読してもらいたいです。
◎自己紹介をお願いします。
都内でときどき活動するソロプロジェクトです。不穏でかわいい躁鬱オルタナティブを自称して曲を作っています。
◎バンド名と曲名が印象的ですが、由来を教えてください
バンド名はアンドレイ・クルコフというウクライナの小説からアイディアをいただき、「ペンギン」のみひらがなにして付けました。間違えてカタカナで書くと小説の方にご迷惑かかる可能性もあるので、みんな気をつけてもらえると助かります!
曲名はタイトルからつけることが多いかもしれないです。「落ちる」「塩」「2086」などはタイトルを先に決めて、それに因んだ歌詞を考えています。「落ちる」などよく読むといろんなものが落ちていたり、「塩」の冒頭は「としおいてる」など、意外としょうもないです。
◎今回リリースされた音源が各地で反響を呼んでいますが、活動はいつからされていましたか?
反響呼んでますか?そういうことにしてもらえると嬉しいです。
2018年にりんご音楽祭のオーディションに出場したのが初ライブでした。当初4人で始まり、スリーピースを経てソロプロジェクトとなり、しばらく休憩した後最近また頑張っています。
◎今回の音源は4曲入りですが、いつ頃レコーディングされた曲なんですか?
私が大学を卒業した2021年春からの1年間です。半年空いて就職の予定だったので、その間に作ってリリースしたかったんですが全然無理でした。1年かかった…
◎近年、ソロで活動されるアーティストさんが増えてきておりますが、レコーディングやライブ時などのサポートメンバーはどうやって決められていますか?
最近は自主企画のときのメンバーを固定サポートとしていて、彼らは全員大学時代のサークル由来です。50 pears、Catt、國などのメンバーとは長い付き合いで、いつもお世話になっています。サークルに限らず仲良しのバンドや好きなバンドのサポートをしている方に頼むこともあります。
◎独特な雰囲気やテンポが心地いい曲達ですが、どのようなアーティストから影響を受けていますか?
『曖昧夢』は3年前に作った曲を音源化したので、その頃特に好きだったtricotやカラスは真っ白、メランコリック写楽などの影響が大きいと思います。きのこ帝国や相対性理論などもずっと好きです。最近はMogwaiやSoccer Mommyが大好きです。
◎レコーディングやライブ時に使われている機材を是非教えてください
あんまりこだわりなくて、よくわからないまま使っています。
エフェクター
BOSS BD-2 Blues Driver
One Control Strawberry Red OverDrive
RAT
BOSS DC-3 Digital Dimension (たかはしほのかの真似)
BOSS RV-6 Reverb
ギター
Crewsのジャズマスター(ぺうつメイン)
高校のとき買ったSquierを改造したワンマスター(CALメイン)
レコではエンジニアの中村さん宅にあるもっといいギター使ったりも
その他
BOSS VE-20 ボーカルエフェクター
Akai MPX8 (MC流す用のサンプラー)
◎リリースイベントを開催される際にフライヤーを連日手配りしたり、ゲリラ的に路上ライブをしたりと現代では珍しいアナログな宣伝をされていて、個人的に心を打たれたのですがその時の心情はどんな気持ちでしたか?
苦しかったです!人と話すのも人前に立つのも嫌いなので、これからはできるだけそうしなくていいようにしたいです。
やっていた理由はいくつかあって、まずなんでもいいから一つ異常に頑張ることがあるといいかなと思いました。
フライヤーを2000枚発注してしまったのでこれを必死に配ることにしようと思いました。
あとは、「必死にチラシを配る姿」が効果的かなと思っていました。そういうのが好きな人に好感を持ってもらえるし、やりすぎることで関係者が引いてくれたら(おれも頑張ろう…)となるかもしれないので笑
シンプルなチラシの効果はおまけと思ってましたが、2回お会いしたりチラシを見かけたりすると印象に残るみたいで、そこは発見だったし、後半は結構意識しました。
◎ライブに出演する際、ソロかバンドで出る基準はどのように決められていますか?
基本は誘われたときにどちらか指定されるのでその方向で検討します。
平日/祝日、ステージの広さ、対バンの体制、 他のライブとの日程、etc.
◎今回の音源のジャケットが両面かわいらしくてインパクトもあったのですが、テーマは何か決められていたのでしょうか
暗くて憂鬱な雰囲気をベースにバグや間違い、勘違いとしての、瞬間的で空回りした明るさがテーマとなっています。要は前者が現実で後者が夢ですね。
ジャケットとフライヤー(= ジャケット裏)、あとMVも同じテーマで各アーティスト・監督さんに相談しました。ジャケットの表は「日常の中の非現実」が表現されていてでかい魚がいますし、裏は結構不穏やバグ感に振りつつキャラクターや色合いはかわいい感じ、MVは数種類の夢の中で矛盾に陥っています。
考えていることを曲から汲み取って表現してくれる素敵な方々にお願いできて幸運でした。みんなにはテーマとか意味とかよくわからないままもやもやしながら聴いてほしいです。
◎ソロで活動されていると、ご自身で物事を進めていく機会が多くなってくると思いますがご自身の中でライブ出演や音源リリースなど意思決定の基準はなにかありますか?
そのとき自分が元気かどうかに左右されがちです
私が死んだり破産したりやる気をなくしたら終わることを意識して、無理はせず持続可能な活動を目指しています…
◎今回のインタビュー記事からの初めての質問事項なのですが、皆さんに聴いてほしいアーティストやアルバムなどありましたら教えてください
ayutthayaですね。一番好きなアーティストです。演奏の確かさもサラッとした佇まいも大好きです。曲ではmy badやchu-ni、GUMなどが好きで、いろんな要素で影響を受けていると思います。
◎今回の音源は二部構成ということですが、具体的にテーマなどは設定されて作られたのですか?
まず『曖昧夢』は明るくて速い2曲と暗くてゆっくりの2曲を交互に配置しています。現時点で明るい曲はぺんぎんの憂鬱にはこれ以上ないので、稀有な作品になるかもしれないです。
そういう意味で『曖昧夢』だけでも躁鬱だったんですが、入れ子構造になっていて、『曖昧夢』を躁として次作はより鬱が強い作品にする予定です。
次作のジャケットはもうセットで作ってもらっています。ここ1年くらいの趣味を反映した、ポストロックやプログレっぽいとてもかっこいいEPになると思うので私も楽しみです!
◎上記の質問以外でも伝えたいことがあればご自由にお答えください!
お金が本当にないのでライブに来たり、CDやグッズやBandcampなどで応援してください!とりあえずUkiyoさんで販売中のCDが売り切れになってほしいです。
終わりに
インタビューも回数を重ねてきましたが、今回はソロ活動のリアルな声を聞けたのではないかと思います。
ソロでの音楽活動のリアル感とたなさんのプロジェクトに対する気持ちを伝えられたかなと思います。自分もビラ配りやゲリラでの弾き語りに心を打たれた側でした。
SNSやネットの戦略的なアプローチも効果的かと思いますが、たなさんのようにとにかく地道な活動もまだまだ心打たれる人はいると思います。
音楽活動も活動のやり方が多様化してきましたが、大事なのはどういう音楽活動をするにしろ結局は思いや熱意をもって音楽に乗せて活動し続けられるかだとぺんぎんの憂鬱の現在の活躍を見て感じました。
自分もまだほぼネットのみでの活動なのでいろいろと勉強させてもらいました。
進む道に迷ったら無骨に泥臭くやってみるのもいいかもしれませんね。
それでは、また。