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ごくたま日記

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ごくたまに書く日記です。
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#スキしてみて

道草の花

重いビジネスリュックを背負いながら、今日もスタスタと歩きます。 ただ、ひたすらに、まっすぐに、前だけを向いて道をゆきます。 あまりにカバンが重いので、しばしば首と肩の凝りに悩まされます。 そのまま休まずに進むと、やがて頭が痛くなります。 ***** 行く手に桜が咲いているのが見えました。 桜の木の下まで行って立ち止まり、凝り固まった首と肩のストレッチをすることにしました。 首を反らせて上を向くと、まさに桜色に染まった花々が広がっていました。 木の枝先に視線を移すと、枝

春眠

公園の自然散策路をゆっくりと歩きました。 木立の道は、ゆるやかな上り坂でした。 新緑の空気を吸い込みながら一歩一歩進みます。 木漏れ日を体いっぱいに受け止めようと、両手を広げます。 指先が、道に沿って咲き誇る薄紫のツツジにあと少しで触れるところでした。 そうやって進んでゆくと、高い木々に囲まれた小さな広場に出ました。 見上げると雲ひとつない空でした。 空の手前で風が吹いているらしく、梢がゆれていました。 広場の隅に、木のベンチがありました。 そこに腰掛けることにしまし

寒空と感覚

いつもの公園に行き、いつものように子どもと遊び、いつものように僕だけが途中でへばりました。 冬の陽が当たる公園のベンチで、1人だけの休憩をしました。 ***** 座りながら、両手をポケットに入れ、肩をすぼめて、ぼーっと前を見ていると、なんだか公園がひっそりとしているように感じました。 決して、人がいないわけではありません。 ***** 奥に見える遊具のゾーンでは、すべり台やブランコで遊ぶ親子連れが見えます。ベビーカーや子供用の小さい自転車もいくつか置いてある。

1人でずっと小さな旅

NHKの「小さな旅」のテーマ曲。あの曲を聴くと、切ないような何とも言えない気持ちになるのは僕だけでしょうか。 子どものときからふとしたときに聞こえてきて、心の中に染み入っている曲だからかもしれません。 不思議です。 ***** 帰り道。電車の中で座りながら、正面の窓の外を眺めていました。既に日は暮れていて、空は暗くなっていました。暗い空の手前には、過ぎ去っていく街路樹のシルエットだけがはっきりと見えました。 なぜか、脳内に「小さな旅」のテーマ曲が鳴りました。ぐるぐる

味わいのみかん狩り

週末、みかん狩りに行ってきました。 みかんは大好きです。よく食べます。 子どものときは、「体が黄色くなるからもう食べるのをやめなさい!」と怒られながらも、みかんをひたすら食べ続けていました。 「食べ物で遊んではいけません!」と怒られながらも、親指をみかんに刺しては遊んでいました。 ***** 今回お世話になったみかん畑は斜面になっていて、みかん狩りの受付は斜面の中腹にありました。 そのため、駐車場からは斜面を登っていく必要がありました。 歩きやすい道が整備されて

ピアノの響き と 音の色

「音は響く」というあたりまえのことを、なぜかすっかり忘れていました。 ちょうど、1ヶ月ほど前でしょうか。僕の大好きなミュージシャンのピアノ独演会に行ってきました。 やっぱ、ライブはいいですね。 奏でられた生音が、体に響いてくるんです。 まあ、音というのは振動で、空間を伝わる波だといえば、そうなのでしょうけど。 ***** コンサートホールは500席ほどで、ちょっとした映画館くらいの広さでした。 僕は、2階席でしたが、十分に見える距離でした。むしろ全体が見渡せてい

片方の手袋

秋はもう行ってしまったのでしょうか。 いよいよ身に染む寒さになってきました。 朝から、しとしとと降る雨。 今日は、傘を持つ手が凍えないよう、今シーズン初めて「手袋」をはめました。 ***** 手袋の片方をなくしたことがあります。 たぶん、コートのポケットにしまっていて、どこかで落としてしまったのでしょう。 自分でも不思議なのですが、片方の手袋をなくしたそのシーズンは、春までそのまま、片方の手袋だけで過ごしました(ずぼら人間の極み)。 だから、次の冬を迎えたとき

50m走に挑む君へ

今日は、君にとって、初めての小学校の運動会だ。 開催できてよかったね。先生たちに心から感謝しよう。 ただ、今年は規模を縮小し、現地で応援できるのは、家族で1名だけとなった。 だから、僕は、今日、遠く離れたこの場所から、君にエールを送ろう。 ***** 「50m走」 この種目に、ひそかに燃やしてきた君の闘志を、僕は知っている。 積み重ねてきた日々を知っている。 はじまりは、君が大好きな作家さんの「じょうずになろう はしること」という本を、たまたま図書館で見つけ

秋陽

家の近くの公園の広場に、ひときわ大きな1本の木があります。 もう、すっかり秋めいて、その木の葉っぱも色づいていました。 風が吹くと、まるで桜の花びらが舞うように、色づいた葉っぱたちは、秋風に乗って散っていきました。 ***** 公園で遊んでいると、その大きな木の梢に、キラキラと光るものが見えました。近づいて見上げてみると、1枚の葉っぱでした。かろうじて枝にぶら下がって、落ちそうで落ちない1枚の葉っぱでした。 その葉っぱは、風が吹くたびに、くるくるくるくるとまわります

愁色

見知らぬ街に来た。都会のベッドタウン。 夕方、この街の駅前に、ポツンとたたずむパン屋に入った。 甘いパンとホットコーヒーを受け取り、2階のカフェスペースへと向かう。 階段をのぼり終えると、通りに向かって大きな窓があった。1人掛けのイスが並び、カウンター席になっていた。 そこに座ることにした。パンとコーヒーを置き、カバンを下ろし、イスに腰かけた。 コーヒーがまだ熱い。すぐに飲むのはあきらめて、香りだけを嗅いだ。 ***** なんとなく窓の外を見た。道ゆく人々が見え

キャンプめし

週末、キャンプに挑戦してきました。初心者向けのキャンプ教室です。 インストラクターの方が、テントの張り方や食事の作り方などを1から丁寧に教えてくれます。しかも、道具も貸していただける。そんな素晴らしい教室に、運良く参加することができました。 ***** 夕食は、自分たちで火をおこし、飯盒(はんごう)を使って、お米を炊くというものでした。 飯盒で作るメニューは、なんと「秋鮭とキノコのバターしょうゆ味の炊き込みごはん」。 秋の味覚の炊き込みごはんとは、なんとも洒落ていま

見知らぬおばあちゃんとのわずかな会話

今日は、いい天気でした。 歩いていると、空は青いし、風はキリリと気持ちがいい。 赤信号で、あゆみを止めると、僕のちょうど真横に、杖をついたおばあちゃんがやってきました。 ***** 「いい天気ねぇ。」 と、おばあちゃんは、僕に話しかけてきました。上品な雰囲気の方でした。 「いい天気ですね。お散歩にはちょうど良い気候ですね。」 と、僕は応えました。本当にいい天気でした。 「孫がね、家で、あれよ。パソコン。今日は、わたしが買い出しなの。」 と、おばあちゃん。

春菊の種をまきたかったけど。

ふとんに寝転んだまま、スマホの時計を見ると、まだ朝の5時でした。 なので、もう一度、目を閉じました。 雨の音がします。ベランダの手すりに雨粒が当たる音。「タタタタタタタ・・・。」 カラスが遠くで鳴いています。「カア、カア」ではなくて、どちらかというと「クウァ、クウァ」って感じ。 バイクが1台通りました。「ブーーーン。」たぶん、新聞配達の原付の音。 そうか、やっぱり今日は雨か・・・。 ***** 僕は、小さな畑を借りて、家庭菜園をやっています。初心者なので、農家の

秋に晴れた日の車内で

朝の通勤電車は、混雑と逆方向だから空いている。 立っている人もちらほらいるが、皆、座ろうと思えば座れる。いつも、そのくらいの混み具合だ。 今日も空いていた。僕は、ドア付近の端っこの席に座った。 最近は、せかせかと時間を惜しんで、ある本に夢中になっている。 でも、今朝は、「随分と晴れているなあ」と思って、その本は開かずに手に持ったまま、正面の大きな窓の外を見た。 ***** しばらくぼんやりと眺めた。 数日ぶりの青い空だった。 電車は、鉄橋に差し掛かると、 ガ