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あなたたちに、よく言っておく。すなわち、『胎界主を読め』。

………読んだか?

なぜ読まないのだ?!

まぁ流石にこんな雑なフリで読む人間は居るワケもないよね。わかってるわかってる、そんなことは私も。然程長い記事にするつもりは無いが、順序だてて行こう。
と言って、大した理由があってこの記事を書こうとしているわけではないのだ。ただ『Twitter(自称X)で散々胎界主の話をしておきながらnoteでは何も書いたことが無かったな』と思い立ってちょろっと何か書いてみているだけなのだ。
この後の記事ではネタバレに相当することも多少は書くであろうから、胎界主を読む気になったら記事の途中でも遠慮なく切り上げて胎界主サイトへ飛んで欲しい。


先日、胎界主のあらすじを書くならどうするか?という話題があった。数分考えて私が出した答えはこうであった。

胎界主のあらすじですか?いい歳こいてヒーローごっこにハマったオッサンがなんやかんやで追い詰められて自殺する話ですよ

この紹介で関心を持てたあなたは、さいわいである。この記事を読むのは切り上げて速やかに胎界主サイトへ飛び込むのだ。

さて、大抵の人は『そんなワケあるか!』とか『そんなんで面白いワケあるかよ!』といったような感想を抱いたであろうが、それこそ『我が意を得たり』であるし、極限までディテールを削ぎ落とすと実際にこういう話なのである。そのうえでキチンと面白い。これは本当の話だ、信じて欲しい。

信じたのなら迷うことは無い。今すぐ胎界主を読み始めるべきだ。お疑いならば、これもまた胎界主を読むべきだ。ぜひ自分自身で読んで確かめるのが良かろう。

そして取り残された半信半疑のあなた。あなたのためにこそ、私はもう少し言葉を紡ぐとしよう。


この先を読むと、これから胎界主を読むあなたの楽しみをある程度奪ってしまうであろうことはご承知頂きたい。
加えて言うと、わかりやすさを重視したので厳密には正しくない表現となっている部分もあるはずだ。この点もご容赦頂きたい。


『胎界主』という物語の主人公は凡蔵稀男(ぼんくらまれお)という、おそらくアラサーくらいのオッサンである。

我らが主人公 俺の俺達の凡蔵稀男

見ての通り死体のようになまっ白(ちろ)く、見て分かりにくいが左右の目の形がチグハグな、奇妙な風体のオッサンだ。人里離れた公園墓地の管理人として、たったひとり住み込みで働く彼には、生まれついて特別な力が3つあった。
一つは人や魔物の命の強度とそれに迫る危機を、頭部から伸びる環状の紐のヴィジョンとして見ることが出来る才能である。

赤い方が命の強度を表す『いのちの緒』と呼ばれるものである

二つめは、この紐に指で直接触れて切断する才能である。紐を切ると相手は死ぬ

痛みも苦痛もなく、ただ静かに命が喪われる。

彼はこの二つの才能を活かして、公園墓地管理人の傍ら魔物退治や暗殺業を営み、地元のヤクザからは『亡くし屋』の異名で恐れられていた。

そんな風にして孤独な人生を送っていた彼だが、ある出来事をきっかけにして、『人を助ける喜び』或いは、『人に縋られる悦び』に目覚めることとなる。ここから彼のヒーローごっこ、『助ける者』が始まるのだ。

こんな顔をされてあなたは助けずにいられるだろうか?

『助ける者』に目覚めて以来…なのかどうか作中で定かでは無いのだが、彼のもとには手頃なトラブルが次々と舞い込んで来ることになる。とはいえ彼は神サマでもコミックのスーパーヒーローでも無いので、いつもいつも上手くいくばかりではない。時には大きな失敗をすることもある。

台本があまりにバカバカしくてセリフが棒読みになったと思われる稀男。即座に芝居だとバレる。

そんな日々が暫く続いたあと、彼は自身の3つめの才能を知ることになる。それは運を操る力。『運ぶ力』と称される才能であった。
『運ぶ力』には二通りの表れかたがある。一つは、引き起こしたい事象を言葉にしてそれを実現する表れかた。これは魔法(のようなもの)の一種で、これを行使する人は『マナ使い』と呼ばれる。

マナを込めて「ジュースしこたま飲ませろ」と口にすれば、自販機が『たまたま』故障して中身が全部出てくる。

もう一つの表れかたは、『たとえ口にしなくとも、心に思い描いているだけで、事態がそのように運ばれてゆく』というものである。厄介なことに、この力は常に働きっぱなしで、本人にも決して止めることは出来ない。そして不幸にして、稀男の運ぶ力は思い描きうることが殆どなんでも叶ってしまうほどに強力であった。
この事実が明らかになったとき、彼の胸中では様々な思いが渦巻いたようだ。自分と周りの人々とに、幸運と幸福ばかりがあったのなら良かった。だが実際に起こった事は、そうでは無かったではないか。
『あれもこれも、身の回りに起こった全てのことが、本当は自分のせいだったのではないか…?』そんな苦悩を、彼は後々まで一言も口にすることが出来ないままとなる。周りの人々の幸福を心から願えるほど善良でなく、さりとて不誠実さに居直れるほど悪辣でもなく、ヒーローのような勇気もなく、弱さを見せられる友も無かったのだから。

このようにして、我らが主人公、俺の俺達の凡蔵稀男の試練は始まり、荒れ狂う運命の大河は、やがて彼を死地へと導いてゆくのであったーーー


どうだろうか?
彼がいつ、死ぬのか。
彼がなぜ、死ぬのか。
彼がどのようにして、死ぬのか。
誰かの手で訳された『ことば』ではなく
自身の目で確かめてみたくはないだろうか?
もしそうであるなら、私はあなたたちによく、そして再び、言っておく。

『胎界主を読め』

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