【小話】研究とはボックスガチャである

はじめに

 αrufαです。昨今、大学の研究予算がさらに減るだのニュースで何か色々見ちゃったので筆を執った次第です。お気持ちといえばそれまでですが、一応それだけではなく、仮にも大学というものの中で、多少なりとも研究者、一般に博士と呼ばれるような人を見たことがある私が、内側とも外側ともつかないポジションからふんわりしたニュアンスで「研究って結局なんやねん、なんで大変やねん」って文章を書けたらいいなという記事となってます。

「研究」って何?

 まず大前提として、そもそも「研究」って何してるん?って話です。めちゃんこ平たーく言えば、「人類がまだわかってないことを、わかるために色々試すこと」です。仮説を立てて、実験して、結果を論文にまとめて次に渡すことを呼ぶわけです。
 ここで大事なのは、「人類がまだわかっていない」って部分。仮に研究で成果が出たとして、誰も答えがわかってないのだから、当然答え合わせなんてできません。とりあえず今起きてることを一通りまとめて、「なんとなくこうなんじゃないか」ということまでしか出来ないんだ、と思ってください。もちろん出た結論を投げっぱなしにするわけにはいかないので査読と言って誰かが研究したことを同じように試して検算(若干の語弊)することで、その答えの精度を上げて、正しそうであれば「一旦これで良しとしとこう」ということで論文が雑誌や教科書に載ったり、成果物が実際の現場で使われたりするわけです。

答え合わせの難しさ

 じゃあそれで成果物が実際の現場で使われて、これで大丈夫!正しかった!となれば万事決着なのかと言われたら、そうもいかないのが恐ろしいところ。後からダメだったケースも往々にしてあります。有名どころだとアスベストとかが該当しますね。建物に使うと丈夫で断熱効果高くて火災に強い!すごい素材だ!って生み出したは良いものの、数十年経って細かい粒子になって人間の肺をめっちゃ傷つける素材であることが発覚して使用禁止に…なんて事態も発生したり。特に難しいのは、「よくなかった」と判明するまでにどれだけの期間がかかるか分からないところ。「正しい」のか「正しくないけど間違いが見つかっていない」のかを判断する手段は人類はそもそも持っていないことを忘れてはいけないのです。

人類総出のボックスガチャ

 じゃあ研究したものがダメだったから、ダメな研究だったのか。というのは明確にNoです。かのトーマス・エジソンは「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ。」なんて言葉を残していますが、前段のアスベストの例でさえそのうちの1つの「うまく行かない方法」が発覚しただけに過ぎないのです。
 話を少し変えて、読者の皆様はソーシャルゲームにおける「ボックスガチャ」というものをご存じでしょうか。知らない方もご安心ください、要は「出したくじを戻さないタイプのくじ引き」と思っていただければOKです。このガチャは1枚以下の当たりとたくさんのハズレしか入っていませんが、ずっと引き続けていれば、いずれは必ず当たりを引くことが出来ます。仮に当たりが入っていなくても、引き続けることでくじ箱を空にすることができます。滅茶苦茶な言い分かもしれませんが、「ハズレは無限じゃない」「くじ箱にくじを戻したりしない」という2条件だけは幸いにして守られています。
 正直、研究というのは体感としてそんなイメージのものです。当たりには「人類の発展」って書かれてこそいますが、ハズレは何枚あるか分かったもんじゃないし、挙句1人の研究者が人生懸けて引けるくじの枚数は大体1枚というクソ仕様です。ごくごく稀に複数の箱から1枚ずつ当たりくじをピンポイントで引いていったりくじ箱を透視できているような、いわゆる天才がいたりはしますが、文明を得た人類の数千年の歴史でもそんな人間はハガキ1枚あれば全員の名前が書ける程度に稀な例なので無視していいレベルです。
 実際人類がガチャの天井を叩いた例もあって、有名なものだと熱力学(永久機関)や錬金術なんてのは最たるものです。たくさんの研究者が人生フルで使って「ダメだった」という結論しか残していないですが、その「ダメだった」こそが現在の人類に活かされている例ですね。

「普通の人」にできること

 と、まぁあれやこれや私の範囲で見てきた人たちの苦労ってこんなのだよってのを書きましたが、じゃあ研究者じゃない人たちはどういう気持ちで見てれば良いんだ、というのを最後にします。
 結論だけ言えば「鵜吞みにしない」が全てだと思います。研究者が「失敗しました」と言った場合、あくまで「この手段がダメだったことがわかりました」であって「何もかも無駄でした」ってことは無いですし、「成功しました」であってさえ「現時点ではうまく行ってますが今後の研究次第でひっくり返ることは普通にあります」なので「これが正しい完璧な正解です」ってこともありません。ただ、間違いなく彼らは「この研究で当たりを引けば人類は発展できるんだ」という信念を持っています。その信念を応援することが、私たちに出来ることと言えるかもしれません。正直傍目には何やってるか分からない人も大勢います。ですが無駄だということはまず無いと思っていただいて結構です。
 気持ちだけでも「人類のために頑張ってるんだ」と思ってくれる人が1人でも増えたら、人類の発展ガチャを引くペースは、今より少し上がるかもしれません。

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