誰かさんの悪夢
(真っ白の背景に黒尽くめの男が佇む。安くは見えないが、高くも見えない不思議なスーツに身を包み、男は一人話し出す。)
不幸というものは、人それぞれによってその基準が変わるものです
例えば、財布を無くすことは大概の人にとっては不幸かもしれません
しかし、自殺をしようと思っている人にとってはどうでしょう。財布を無くすという出来事が、死への後押しとなるかもしれません。それは、当人にとっては幸運とも言えるでしょう
私は不幸です
ここのところ不幸続きです
一生懸命進めていたプロジェクトも頓挫しました。守秘義務がありますが、端的に言えば一気に社会に巨大な影響を波及させることができる。素晴らしきプロジェクトと言えます
営業もイマイチです。新規の契約がなかなか取れません
あ、そういえば嫌な夢を見ました。人々が手を取り合って踊り回っているのです。空には可愛らしい雲が浮かび、野山に花が咲き誇り、空気は穏やかな気温で満たされています
まさしく悪夢と言えます
何かが取り憑いているのかもしれません
まあ、これも最初に行った誰かの不幸は見方を変えれば幸福というやつです
なぜなら私は悪魔ですから
まわりまわって、世の中が幸せになる使い方をします。