相談

 親に秘密が増えて、僕は大人になっていく。周りの波に流されて自習室に籠っていたけれど、受験の直前に志望校を変えた。「なんとなく、この学力なら都内のこの辺の大学に」という道が、無機的な街灯にぼんやりと照らされていて、両親も「そんな感じに」と応援してくれている。それが急につまらなくなった。
 知っている大学の中で、一番遠くの大学に行きたくなった。自分の経験が何も通用しない、そんな場所に、自分の夢が落ちている気がした。図書館にも、ネットにも、友達との話の中にも見つからなかった景色がきっとある。
「北海道に行きたい」
と話す僕に両親は、
「相談しよう」
と言った。
 初めての言葉に、僕は何だか嬉しくて、少し安堵した。

(300字SS企画参加 掌編『相談』)



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