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不動産投資の利回りを解説|不動産屋の言葉を鵜呑みにしてはいけない

「利回り10%の好物件です。すぐに売れちゃいますよ」

不動産屋のこんな言葉にすぐに飛びついてはいけません。

そもそも、利回りをちゃんと理解できていますか?

「そんなの簡単だよ、家賃年収を物件価格で割ればいいんでしょ?」

その通り、正解です。

それが不動産屋が言っている利回りの正体。

しかし、あなたが投資判断するのに、この利回りを使ってはいけません。

「えっどういうこと?利回りって投資判断に使うんじゃないの?」

と思いましたか?

株式投資の場合、利回り5%であれば投資金額に対して5%のリターンが得られることをいいます。

100万円分の株を買えば、年間5万円(5%)のリターンが得られるということです。

では、不動産投資の利回り10%の物件とは、100万円分の投資に対して5万円のリターンが得られるということなんでしょうか。

答えはNoです。

利回りについて正しく理解できていない人は、ぜひ最後までご覧ください。

表面利回りと実質利回りの違い

不動産投資の利回りには「表面利回り」「実質利回り」の二つがあります。

楽待や健美屋などの不動産ポータルサイトで記載されている利回りは「表面利回り」を表しています。

不動産屋が言う利回りも「表面利回り」のことです。

表面利回りと、実質利回りの違いは次の通りです。

・表面利回り=家賃年収÷物件価格

・実質利回り=(家賃年収-必要経費)÷物件価格

不動産投資は入居者から家賃をいただいて利益を上げます。

投資とはいうものの、実際のところは事業そのもので、お店や会社を運営するのと同じように経費が掛かります。

この式だけ見たら、経費はたいした金額はかからないように見えますが、不動産投資の経費は思いのほか多くの金額が掛かります。

家賃年収の2割に収まればいいほうで、悪ければ3割、4割とかかる物件もあります。

利回りの計算例

・家賃年収100万円
・物件価格1,000万円

このような物件の場合、表面利回りは「100万円÷1,000万円=10%」です。

この物件で年間の経費が20万円(2割)かかると、実質利回りは「(100万円-20万円)÷1,000万円=8%」に減ります。

経費の分は手元に残らないので、実質的に8%の利回りしかないですよという意味ですね。

経費を引けば実質利回りが計算できる?

「なんだ、経費の分を引いて計算すればいいだけね。
そんなの簡単。とりあえず2割にしとこう」

実質利回りの計算をこのぐらいの感覚でやってる人がほとんどだと思います。

しかし、これだとまだまだ甘い。

この程度の考え方だと、現実と乖離した利回りしか計算できないので注意しましょう。

「家賃年収から経費を引けば手残りが計算できるから、それでいいでしょ?」

いえいえ、まだまだダメです。これだと不動産屋のいいカモにされてしまいます。

もう少し真剣に、詳しく実質利回りについて理解を深めましょう。

実質利回りを理解するための5つのポイントを紹介します。

ポイント①購入時の諸経費を含める

利回りを計算する際は、購入時の諸経費を含めましょう。

諸経費とは、仲介手数料、不動産所得税、登録免許税などのことです。

金額は物件によって異なりますが、物件価格の7%~10%が相場です。

安全側で計算したい方は10%を見込んでおきましょう。

売り主から直接購入する際は仲介手数料が不要になるので、4%~7%に抑えられます。

現実的にはそのようなことは少ないので、10%としておけばよいです。

ポイント②家賃収入を実勢ベースに見直す

不動産屋が提供する「家賃年収」は絵にかいた餅の場合がほとんどです。

現状が満室で、すでに家賃が発生している物件ならよいですが、1/3や半分が空室の場合、空室の部屋の家賃は想定家賃が設定されます。

この想定家賃は実勢よりも高めに設定されていることが多いです。

本来なら3万円しか取れない部屋に、4万円の家賃が想定されていることはざらです。

レントロールを入手した際は、地域・築年数・間取り・設備などの条件で検索して、実際に貸し出されている近隣の物件の家賃相場を確認しましょう。

「この条件なら3万円しか取れなさそうだな」と判断したら、先ほどの想定家賃4万円は3万円の読み替えて家賃年収を設定しなおしましょう。

「家賃年収100万円で、表面利回りは10%です!」

と書いてあっても、実勢ベースの家賃で設定しなおしたら家賃年収は80万円で表面利回りは8%しかなかったということもあるので注意しましょう。

すでに入居者がいる物件も、古い入居者が昔からの高い家賃を払って表面利回りを押し上げていることもあります。

なかには知人や親族を一定期間だけ住まわせて、高い家賃に見せているという強者(あくどい)売主もいるので注意が必要です。

不動産屋からレントロールを受け取った際は、実勢ベースの家賃相場を調べる癖をつけておきましょう。

ポイント③ローン金利・所得税を考慮する

実質利回りを計算するうえで必要な経費の中身を理解しておきましょう。

賃貸物件を運営するためには、おもに次のような経費が掛かります。

・管理委託料
・水道光熱費
・固定資産税
・空室損
・修繕費
・大規模修繕積立金

管理委託料は管理会社に管理を依頼するときに支払う報酬で、家賃の5%程度が相場です。

水道光熱費は月千円で全体に占める割合は少ないです。

固定資産税は不動産を所有している人にかかる税金です。

築年数が浅い物件は価値が高いと判断され、多くの税金を取られます。

建物の構造も「RC>鉄骨>木造」の順で固定資産税が高くなります。

築30年の木造物件と、築10年のRC物件では家賃年収は変わらなくても、びっくりするぐらい固定資産税に差が生まれます。

築古木造で5%程度、築浅RCだと10%は固定資産税を見込んでおきましょう。

賃貸物件は、常に満室ということはなく順調な運営をしていても年平均5%程度の空室損(機会損失)が発生します。

順調な運営で5%なので、一般的な物件であれば10%程度は空室損が出ると考えていた方がいいでしょう。

修繕費は退去時の原状回復費用や、設備故障時の突発的な費用です。

想定するのはなかなか難しいですが、家賃収入の5%程度見ておきましょう。

大規模修繕とは、外壁・屋根の塗装費用です。

大規模修繕は10~15年に一度、定期的に行うことで建物を長く利用できます。

全8戸程度のアパートで200万円程度の費用が必要です。

15年に一度ということであれば、200万円÷15年=13万円を年間に積み立てる必要があります。

修繕積立金は物件の規模によって金額が異なりますが、家賃年収の3~5
%程度と想定しておけばいいでしょう。

では、ここまでの数字を足し算してみます。

管理委託料5% + 固定資産税5% + 空室損10% + 修繕費5% + 修繕積立金5% = 経費30%

このように一般的な運用ができる物件でも家賃年収の30%程度は経費がかかるということですね。

空室が多かったり、築古で設備機器の故障が多かったりするとさらに経費がかかります。

築浅で空室損が少ない物件で、経費20%が達成できるかどうかというところです。

また、築年数や構造によって比率が変動するので、物件ごとに調整しましょう。

「なるほど、築古物件なら経費30%で実質利回りを計算すればいいんですね」

と、思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。

前置きが長くなりましたが、ポイント③の本題はここからです。

実質利回りを計算するのに、もうひとつ、とても重要な費用が隠れています。

それが、「ローン金利」「所得税」です。

この二つの指標までいれて実質利回りの説明をしてくれる不動産屋はまずいないでしょう。

個人がシミュレーションするときも、この指標が抜け落ちることが多いです。

先ほどの物件をローンで購入した時で考えてみます。

・家賃年収100万円
・物件価格1,000万円
・借入金額1,000万円
・ローン金利2.0%
・借入期間20年

このように物件購入費用をすべてローンでまかなった場合、初年度に20万円のローン金利が発生します。

金利負担分は返済が進むと小さくなっていきますが、それでも返済期間中にずっと5~20%近くの金利を払い続けることになります。

1年目:20万円(20%)
5年目:17万円(17%)
10年目:10万円(10%)
15年目:6万円(6%)

さらにさらに手元に残った雀の涙の利益からお上に所得税・住民税を支払わなければなりません。

税金の額は本人の年収によって変わりますが、一般的なサラリーマンであれば利益の30%を税金で持っていかれると考えればよいでしょう。

この30%は家賃年収そのものにかかるわけではなく、経費やローン金利を払った後の残りのお金(利益)にかかります。

実質手残り = 家賃年収 - 経費30% - ローン金利5~20% - 所得税(利益 × 30%)

さきほどの物件で計算してみましょう。

家賃年収100万円 - 経費30万円 - ローン金利20万円 - 所得税15万円(利益50万円 × 30%)= 35万円

実質的な手残りは初年度では、35万円まで減ってしまいましたね。

なんだか悲しくなってきませんか?

けど、これが現実です。

利回りが高いと物件を購入したものの、手元に全然お金が残らない。

しっかりと勉強せずに不動産投資を始めてしまう人が、ローンを返せなくなって首が回らなくなる理由が分かりますね。

表面利回り10%!と言っていても、現実はこんなもんなんです。

ポイントまとめ

以下の物件をもとに、実質利回りを計算するためのポイントをまとめてみましょう。

・家賃年収100万円
・物件価格1,000万円
・表面利回り10%

①購入時の諸経費を含める

物件価格には10%の諸経費を含めましょう。

1,000万円×1.1倍=1,100万円

②家賃収入を実勢ベースに見直す

実勢ベースの家賃を調べたら、家賃年収は100万円ではなく80万円だということがわかりました。

③ローン金利・所得税を考慮する

ローン金利・所得税を考慮したときの手残りは次の通りです。

家賃年収80万円 - 経費24万円 - ローン金利20万円 - 所得税11万円(利益36万円 × 30%)= 25万円

この物件の場合、手残りは25万円になりました。

最後に、この物件の実質利回りを計算してみましょう。

25万円 ÷ 1,100万円 = 2.3%

なんと表面利回り10%だと思っていた物件の実質利回りは「2.3%」しかないとわかりました。

「表面利回り10%!すぐに売れちゃいますよ」という不動産屋の言葉に飛びつかない方がよい理由がわかりましたか?

最後に:現金で買えば利回りは増える?

ここまで読んで、「ローン金利が高いんだから物件を現金で買えばいいんじゃないか?」と思った方もいると思います。

すばらしい、その通りです。

ローンを借りるから金利が発生して、実質利回りを圧迫してしまうんです。

それならいっそ、現金一括払いにすればいいじゃないかと思うでしょう。

家賃年収80万円 - 経費24万円 -  所得税17万円(利益56万円 × 30%)= 39万円

ローン金利がなければ手残りは39万円まで増え、実質利回りも「39万円 ÷ 1,100万円 = 3.5%」まで向上します。

お金を借りない方が利回りはよいのに、なぜ多くの人はローンを組んで不動産を購入すると思いますか?

「そりゃあ1,000万円も現金をもっていないからでしょ」

たしかに、現実的にはその理由が一番大きいでしょう。

しかし、現金がある人もあえてローンを組んで不動産を購入します。

それはなぜか?

ローンを組めば利回りが激的に改善するからです。

「?????????????」

そうですね、今までの説明と真逆のことを言っているのは分かります。

けど、そうなんです。

追伸:お金持ちはお金を借りる

種明かしをしましょう。

・家賃年収100万円
・物件価格1,000万円
・借入金額1,000万円
・ローン金利2.0%
・借入期間20年

このような条件で不動産を購入した人は、ローンを利用しているので実際に自分が支払った費用は諸経費の100万円(10%)だけです。

先ほど計算したように手残りは25万円あります。

実際に支払った金額(100万円)で利回りを計算してみましょう。

25万円 ÷ 100万円 = 25%

なんと、利回りが25%まで跳ね上がりました!

「何を言ってるんだ?」って感じですか?

これは、物件そのものの実質利回りではありません。

投資家が実際に投資した費用100万円からみたときの、利回りです。

「100万円を使って物件を購入したら、年間25万円のリターンが得られた」ということです。

なんだか魔法のようですね、まさに錬金術士。

そうです、これが、これこそが不動産投資の醍醐味です!!(興奮してしまいましたよ)

ローンを組んでお金にレバレッジ(てこの原理)を働かせた結果がこれです。

このように、お金持ちはお金があっても銀行からお金を借りて不動産を購入します。

ローン金利を払いたくないと思って1,000万円で現金買いしたら、リターンは39万円だけで、投資利回りは3.9%しかありません。

同じ1,000万円を100万円×10個に分けて、10棟の不動産をローンを借りて購入すれば、「年間25万円×10個=250万円」の手残りが得られます。

現金買いした人の10倍早く資産が増えます。

お金持ちはこのようにして、お金を借りて資産を増やしていくんです。

なんだか、わくわくしてきませんか?

不動産投資、面白いですよね。

不動産屋の「表面利回り10%!」の言葉に騙されて物件を購入してはいけませんが、ここまで計算して「破綻しない」と判断できればぜひローンを借りてチャレンジしてみてほしいと思います。

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@ukeru12936

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