ポエトリー・ナイトフライト寸評

優勝はFJひねくれもん。
ゲストが鈴木陽一れもん、というところで
見事に韻を踏んだ結果だった、は超ドープな常套句のジョークとして。

今回、エントリー6名だったので
急遽2周(1人5分×2回)としました。
その結果、1位と2位の差がうまい棒数本分というドラマが生れた。
それもだいぶん高い水準、というか、
ぼくが過去に出場して優勝したスラムでも
なかなかもらったことがない額で。
それがまずうれしかった。
お客さんもありがとう!!

さて。
(以下は順位と関係なく、順不同です)

■FJひねくれもん
第2期のPNFからのオープンマイク常連だけれど、
とってもオーセンティックなアートフォーム。
教科書に乗っけたいような押韻、発語、それが光っていた。
欲をいうならば、射程距離が短いこと。
日常を描くであれ、個人の懊悩を映しだすであれ、
そのことそのものはけっして悪くはないけど、
いまのところ、それ一本でしか勝負できないようにもおもう。
つまり5分ならすばらしいけど、30分それを聞き続けたいか、というと、
すこし外したり崩したりの余地があったほうがいい。
(このあたりは直接本人にも伝えました)
とはいえ、熱量で無理押しするわけではなく、
ちゃんとイーブンな地点から発する表現は確実にセンスだとおもう。

■三刀月ユキ
リコーダーやスマホでの音使い、
不穏な空気とシベリア、黒田三郎、
ロシアとウクライナなど縦糸横糸が絶妙にハマっていた。
惜しむらくは、朗読の発声が常に揺れているので、
長くやればやるほど聴き手はその不穏感に慣れてしまう。
標準的な出し方のうえでギミックとしてこれが使えれば
もっとドラスティックなドラマがつくれるんじゃないかしら。
ただ、隣席に誰が座ろうとかまわない、
という種類の突き抜け方に徹してもかっこいいとおもう。

■はったみさと
テキストの強度はまごうことない。
ただ、日常淡々型としてそれを突き詰めるのか、
まだ作家性が確立できていない気がする。
とはいえそれを「もったいない」というには
彼女のテキストは勁いので、
もうすこし興味が「朗読」から「詠むこと」に向けばいいな、と。

■くだん もりしま(件-空断-)
はるばる名古屋からの参戦ありがとう!
すばらしかった。
好き嫌いは多少分かれるだろうけれど、
演者としてちゃんと「表現」に顔が向いている立ち姿でした。
今回の出場者のなかで唯一お客さんの空気を見てるな、という印象で、
それが2周目の海外川柳には顕著にハマったかんじがする。

■川島むー
安定安心のむーさん。
パフォーマンスのクオリティとオリジナリティは一頭地を抜いていた。
ただ、コインの裏表だけれど、
そこに圧倒的な突破力がない。
これはスタイルの問題で、
サッカーでいえばものすごく精度の高いパサーがゆえに、
それだけに聴き手を選んでしまうきらいもあるのかなって。
(そのパスを受けられるか否か)
もしこれが50番勝負なら1位だったかもしれない。

■的野町子
小道具を使いつつ「マイクが苦手」と、唯一生声での朗読。
テキストは衒いありやなしやの絶妙なラインを行き来するし、
声も通りやすく、脈絡がはっきり浮かび、
キャラクタ性も個人的にとてもよかった。
終わった後に滲み出ていた悔しさも、
「あっ、スラム向きのひとだ」とおもえて。
希望としては、もうすこし小狡くなってもいいのよ、と。

以上、寸評でした。
出場してくれた方々、ご観覧のみなさま、
ほんとうにありがとうございました!

次回は5月28日(土)PUB VOXhallでお会いしましょう!!


 

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