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「オンライン・ポエトリー・ナイトフライト」感想

 結果発表後に、とおもったけど、べつにぼくの感想で各自の投票先が変わるわけでなし、いいや!えいっ!といってみます。みんなが感想言い合ってるのに乗っかれないのもくやしいもんで!ちなみにchori賞はいまもけっこうな数から悩み中。「最高」「すてき」「すき」がイコール高評価というわけではないのでそこんとこよろしくです。

 投票は本日23時までに@myeongsa_choriの投票用ツイートへお願いします!


吉見拓哉「百年の孤独」
「取り返しのつかない百年 おぼえている」「一瞬を繰り返す」リフレインがマルケスを想起させて、またこの低体温な詠み口がすばらしい。

jps《まるで金属の手触りだった》
雰囲気も詩そのものもすきなのだけど、個人的には音源との相乗効果という点がむしろマイナスになった目があって。
「笑えよ。」の入れどころであったり、「だけなのにな」のデリバリー(これは好みも入るか)等。

浦世羊島「」
日差しと庇からのナイトゲームへの移行等、細部も構成もいいし、なにより
声でキャラが立つというのはすごい。
プロ棋士を「将棋指し」というときの感覚で「詩書き」と呼びたくなる。

待子あかね「9」
待子さんの平熱でひたひた迫ってくる怖さ(誉め言葉)の真骨頂ですね。
フロウ的な寄せ方をしてきたのにはびっくりした。
いいなあ。

伊藤晋毅「砂かけババア」
発想が天才的なのに無音のビート・アプローチとか
謎の笑点とか一人芝居とか、とにかく芸の幅が広い!

田中ジョヴァンニ「最果て」
本気と書いてマジと訓むような作品。
非常に足し算のアイデアではあるんだけど、
これはいい表現の着地だなあとおもいました。

線描[オトノヨスガ]
オケと線描調の不穏感が抜群に
気持ち悪くて気持ちいい(誉め言葉)。
後半の日本語的な韻の畳みかけもすてきです。

オニヤンマ【俺は、続ける】
このために仕上げてきたのかー!エモい!
「ひとりのいいね!のために走れ」はこれはパンチライン賞をあげたい。
ただ、chori賞って作中で言うのはこっちがどぎまぎするよ。笑

素潜り旬『チキンみたいにプリッとした肉体』
素潜りはどこまでいっても
素潜りでけっして酸素ボンベはないんだなあ。
「根本的な解決に向かうって言い方がペニスみたいで素敵だ」が第四の壁を破って屹立してる。

遠藤ヒツジ「棚にあげる」
芸が細かい。
谷川俊太郎「定義」のころのような、説明と見せかけて外していく、あるいは三谷幸喜的ともいうべきか。細かいのに嫌味がないのはすごくすてきなこと。

葉月之寛「おねだり」
これは自分しかわからないけど、
前日にやりとりしたDM内容を踏まえていて、
それをこの葉月調でやられると、もう…。
「きみの横顔がちょっと見やすくなった気がする」はさらにどきっとしました。
ポエトリーリーディングの肝要をわかってはる。

ひしたに《過度》
テキストをなぞるうえで、
朗読としてはお手本に近いのだけど、
ケレン(ギミック)があると一気に景色が鮮やかになるんじゃないかなあとおもう。
たとえば「もっと  あげるね」(朗読上)とか。

テツ(水野哲)「今日の火」
心拍数が高い段階で電気を消されたら
ホラーかエロ、って話を直近詩人狼仲間でしたばかりなんだけど、テツさんはどちらでもなく、「ちょうどこれがこれくらい食べたかった」っていうとこを突いてきますね。
捌きが巧い。

popi/jective「そばかすサンデイモーニング」
ゆぽさんの声と詠み方でどきっとさせる冒頭から
展開していく場面が映像的で
「そばかす 星みたい 星座に見立てて~」
の流れがちょうすきでした。ギターもすごくすてき!

斎藤木馬『層雲』
「芸」(というとご本人は厭かもだけど)
「草(背景)」と「云」が「芸」をそのままゆくような強さ。
独特なので好み(落語や狂言の経験とか)によっては
わかれるかもだけど、とにかく収束がかっこいい。

サン・シモン【行間には誰が住んでいるの?】
とっつきやすくて書きづらいテーマとおもうけど、
攻めの姿勢だなとおもいました。
ただ、着地(「どこへ行くの」)がすこし弱いかなと個人的には。
関係ないけどギター持ってへんやん!とそこは笑いました。

SOLA「ルーチンワーク」
機械的な、ちょっと不自由な朗読なのだけど
それが「レタス~」のハメ方や以降の乗り方に生きてきてるなあと。
縛りプレイの良さをひさびさに実感しました。

白井太一朗「めだまやき」
「黄身」「堅く」「しら(白)」をはじめとしたダブルミーニング祭り、譜割もふくめてお見事でした!
2分以内で過不足ない伏線と回収。
こういう志向はすき。

内藤重人「2020.4.26」
「僕らは靴を履いていなかった」という、
冒頭それだけの一行が、この表情と声を通すと
スリーベースになって内藤ペースになるふしぎとおもしろさ。
全体的な精度も高く、たくまざる愛嬌も
こぼれてきて、すごくすてきです。

みっしゃん《花蔭》《白線》(※1作品)
ケレンのない詩を詠むひとなので、
今回のレギュならなおさら1編にしぼったほうがよかった気がする。
詩も朗読もよいのだけど、筋はいいけど並べると力に欠ける部分はあって、
2編である意味がぼくにはわからなかった。
そこは闘い方の話になってくるんだよなあ…。

りちゃそ《blue doll》
朗読すごく上手なのだけど、一度その定跡というか、
「朗読はこうしてみるもの」を外して
ポエトリー・リーディングしてるのを聴きたいなあ。
(ニュアンスがわかりづらかったらごめん)
朗読でボトムアップするタイプの詩(風)というより、どうやってテキストをつれていってあげるか、の意識かな。

小豆原一朗「床屋」
「みっともないんで」が
「ミッドナイト」に空耳して、
そのあとに「夕陽」がきてハッとしたり、
それくらい「読み取ってやろう」って気にさせるすきな作品でした。
まめくんの詩には鍛えが入っている。
ラストもかっこいい。

TASKE「すべての障害を楽器に」
「うるさいだけが音楽じゃない」はくらった。
TASKEさんはほんとうにテーマへの寄せが
うつくしくて(ときにばかばかしくて、でもそれがなお)すてき。
ポエトリー・リーディングです。
うん、ポエトリー・リーディングです。

蠱毒「柔らかい死体人形」
比喩表現の直線的な連打がすこし気になりました。
朗読自体はすごくすてきやとおもうんだけど、
ある意味音楽でいうと00年前後のV系みたいに
好みは分かれるかもしれないです。

空廻 a.k.a 目綿灯「」
自分のなかにリズムの文脈があるのを感じる。
語っていることは平坦なんだけど、
「俺は笑うときに草は使わない」からの
ズバッと味をつけてくる技術、最高。

iidabii「」
そこで「ストリーキング」て。笑
iidaくんのいい意味でのコントロール荒れる
かんじの球はすごいなあ。
熱の持つ意味をしっかりわかってる
たのもしさがあります。

元澤一樹「ある宵の明星」
あからさまに新著を推してくる姿勢、いいね。笑
前半、七五を意識するなら、もうすこし
朗読の入りと抜けの強弱を考えてみるといいかも。
ザクロのくだりはハッと目に映えたなあ。

川原寝太郎《詩を書くということ》
これも芸が細かい。
かいしゃくをしてあげたいのはやまやまなれど、
これは2分ルールがちょっと邪魔をしてしまったやもだねえ。
将棋でいうなら玉形が薄いままで無理攻めって感で寝太郎の詩風とは違う
(そのおもしろさもある)。

河野宏子「(無題)」
小品を投じてくるところに感じる
自信そのままに良作だとおもいます。
そのなかで「どうだ」の表情が、個人的には
もっと振り切ってほしいなあ、などと。
どこか諦観のように聞こえたので。自分は。

ずんやまずん子「凪いだ夜空にホタルがともる」
絶妙に秒単位での遅れ投稿だったのだけど、
「16時」という意味(日本語の魔力)では投票対象とします。
うちなーたいむだ。言葉の叩き方が巧いのだけど、すこし「間」について考えてもおもしろいかも。
いわゆる朗読や声優さんの王道ではなく
ポエトリー・リーディングの「間」として。


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