「サイン」

きみのいちばん近くにいる災厄はなんだ
八百八十八通りくらい挙げてもいいが
答えはいつだってなまあたたかく眠りこけている
遠くサイン、イン

おかえりなさいとただいまが手を組んで
ぼくを殺しにくるような夕焼けのち
世界じゅうの毛細血管がはじけとんで
なんでもないジョークだって誰かを変える

成熟するってことはときどき悲しいな
Today is the killer
こんなに歩いてきたのに振り返る道をなくして
脚の痛みだけがぼくを知っている

おおきな約束を
何度でも破ろうぜ
ちくちくくちくなった腹のなかで
まだ見ぬ焦燥を飼っていたい

踏みつぶすまで気づかなかった絶望がさ
なつかしい顔で爪を伸ばす
なあ
きみのいちばん近くにいる災厄はなんだ
雰囲気だけの箴言ならあげてもいいが
口にすればするほど意味は濁ってく
泳いでもその目に沈まないで
Today is the killer
Today is the killer
Today is…
Today is…

しろと　くろとの　まんなかから
ぼくを抱きにくる夕焼けの血
流した涙程度で拾える強さならいらない
たしか、轢きかけた、思い出たちよ
存分にアスファルトを割ってくれ

きみのいちばん近くにいる災厄はなんだ
それはひょっとして希望じゃないか
親指、人差し指すっ飛ばし
中指を立てて　折る
祈る
ヘンなつくりでできてる
そんなふざけたサインですくいたいひとがいる

そんなふざけたサインで
すくいたいひとがいる