「ANKH」

人と猿の違いすらさだかではないのに
カニの器を推し量るのは困難だった
用水路、田畑、その先に十字路
どこまでいっても緑はあまく繁茂し
川は川のかたちでしか流れることはない
しようか、しようか
感じ方も漢字カタカナも忘れてしまった
わたしたちはこんなにきらきらと雨上がりに光る
くりかえす嚥下、喉の奥の愛だの恋だのを
ひとごとのように七色に染めて
そのなかで赤だけがやけにかたくにじんでいる
指を折ってみればまだ六月なのだ

ファラニチの風をぼくが知らないように
人類最初の詩人はポストカードに留守番のまま
ベルトコンベアーで解体される生と死のスタンザ
天使が通り過ぎたあと溶けかけたハッピーアイスクリーム
哺乳類と甲殻類が手を取り合い入水して
どろどろに溶けてゆく
国道沿いをやがて強襲する夜
沈黙を舌で鳴らすみたいにことばはぼやけた
外は行頭へ繰り上がる気配がする
消化しきるにはすこしばかり持ち重りのある口癖が
いまさら、焼け野原のうえ、なつかしくおもいだされる


(※第3期「ポエトリー・ナイトフライト」二次予選の8作品から着想を得た詩です)


 

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