「なをつむようなこと」

明日、世界がほろびるとしても
あなたはりんごの樹を栽えた
名前をつけることは、罪であり、愛だ
にじんだ今、ミシン台やコウモリ傘の出会いくらい、昏い愛だ

なつみの横顔がひどく白くかげってゆく
春の野に出でてなんにもしないまま
夕暮れとしりとり遊び
12月生れのくせ 夏に美しいと書いた
幽霊なら脚がないのでちょうどいいのに
まだぼくのなかにきみは立っているのだ
凛としたすがたで それはなんのよすがだったろう

名詞と、形容詞と、副詞のはざまで
ハザードランプがついたこと
知らないふり your words set you free.
靴ひもを結びなおすくらいの感覚で軽々に日々を笑っていたい

名を摘むようなこと
堪えた、答えはここにはいないから
傷口はふさがらずとも、痛いまま、いたいんだな

明日、世界がほろびるとして
ぼくの両手は土にまぶれつくせるか
なあ、罪の名前などおもいだしたくもないが
車線はななめに夜を区切って
流れんだ、連打、したレンダリングめいたエンゲージじゃないリング
ふかく、ふかく、沈んでそれきりさらばさ
それきりさらばさ

名を摘むようなこと
堪えた、こらえた、ここらへんでいいか
気の狂ったハッピービバーク
もうここらへんでいいか



 

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