情緒ゼロ短歌をもっとやるぞ

なんたる星4月号出てます。うわー

今回企画で「情緒ゼロ短歌」というのをやっていて、情緒のまったくない短歌というのは作れるのだろうか…という思いつきをみんなでやってみています。

何パターンか情緒のないやつを考えてたら楽しくなってしまい、誌面では一首と自解とみんなの分への評という感じでまとめていますが、勝手に一人でもうちょっと考えてみようという場所です。無を考えるのは楽しい。
僕の考えた中でボツにしたやつとそれぞれの自解を並べながら考えてみます。

レンガ寄り人類の顔かき混ぜるごぼう農家のティックトッカー

サラダボウル方向。ぱっと思いつく系統はこれだった。ただ支離滅裂なのって「こういうのね」と思われつつも面白がられる余地は常にあってしまう気がして、例えばなんかそれらしい評をつけようとすればつけられてしまう。こういうのを5万首ぐらい揃えてやれば無にはなりそう。

構造は緻密に計算されており高重量に耐えられるよう

事前にかるく「どんな感じの短歌にになるんでしょうね」というのをメンバーと話してたんだけど、そこで加賀田が「つまんない偶然短歌みたいな感じかな」と言っていて、それもありそう~と思ったので作ってみたやつ。wikipediaっぽい雰囲気かつなんでもない内容にはできてる。けどもうちょっと短歌っぽい方が情緒ゼロ短歌としては正しいのでは??と思ってやめにした。

xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx

これはボツじゃなくて提出のしかたの例のために置いたやつ。
31字だけど31音かはわからないので短歌でもない。でもゼロではあるのではないか?この方向にいくとしたら「x」に未知数・変数の意味がつきすぎてるので「x」ではよくないと思った。

ききききききききききききききききききききききききききききききき

ひらがな。連続でこう書いたときに極力別の文脈が乗ってこないような文字として「き」は意図して選んでいる。

」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

記号。記号は何選んでもなにかしら「っぽく」見えてしまいそうですね。読めないという問題もある。

xxxxxきききききききxxxxx」」」」」」」ききききききき

混ぜてみる。これはおんなじ文字だ!みたいな意味っぽさも消えていていい。ただ短歌っぽさは「文字の数でだけ短歌に寄せようとしている憎たらしさ」に限られる。

無へと往くだけならこのあたりをゴールにすればいいけど、やっぱり短歌っぽさも欲しかった。誌面では一個くらいはこういうのくるかなと思ってたけど、みんなわりと短歌でしたね。面白さでいえばそっちの、あくまで短歌方向からゼロに漸近させる方が良さそうだったので正しいと思う。

歩いてるアイディアマンが歩いてる 進んでいます 駅の⽅ですね

なんたる星2022.4月号

自分が出したやつ。「アイディアマン」はかなり虚ろな単語としてピックアップしたんだけどおもしろい単語と思われがちだった。人によって連想されるニュアンスがかなり違うのかもしれない。そもそもあんまり使う言葉でもない上に使われる場面も曖昧で、経験や通ってきたフィクションでどういうふうに使われてたかによって印象がブレてそう。
「歩いてる」を重ねたのはちょっと怠惰だったかも。"実況してる感"は出せてるので無意味ではないがもう少し構造を仕込んだうえでゼロにできていると技術点が高そう。

五千万欲しいと思う 二億なら四倍ぐらい欲しいと思う

スコヲプ/なんたる星2022.4月号

みんなの提出歌ではスコヲプのがすごかった。これはいいなー。誌面にも書いたけど背後に虚が感じられるのがいい。普段の会話も絶対つまんないもんなこいつ。つまんないけどいっぱい喋る。
ただこれはサラダボウルとは逆で、いっぱい集めると面白くなってしまう感じがする。こういう奴が浮かび上がってしまうから。

「一首の背後におもしろい誰かを感じさせない」というのはおそらくどの方向でも共通の必要条件で、そのはりぼてをいかに作るのか?あるいはどのように作らないのか?が情緒ゼロ短歌づくりのポイントといえそう。最低限短歌といえそうな文字列から、短歌らしくありながらその情緒の正体が虚無であるようなものまでのグラデーションにすべての情緒ゼロ短歌は存在するだろうか。わからん。

情緒ゼロ短歌連作も楽しそうですね。難しそうだけど。

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