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2024.01.29 1:02

彼女と予定が合わなかったが、観に行ってきなよ、と言ってくれて14:20開始のPERFECT DAYSに向かうことにした。彼女の出発予定と合わせて一緒に家を出て知り合いのところに寄ってから電車に乗る。

結婚に向けて決めることが多く、予定を前もって立てるのが苦手な僕は電車でいつも眺める海の姿を見ることなく色々と話し込んでいた。

映画まで予定があったので降りたことのない駅で降りて見ることにした。彼女から借りているコンパクトカメラに35mmを装着して、ブラブラと行ったことのない古本屋に立ち寄った。友人の好きな古本屋で店主の方が絶妙に堅物の男性で、なにか僕もこんな感じになるのではないだろうと少し心配したいた。マップでチェックはしていたが食べたことのなかった肉まんのようなシュウマイのようなものを愛想の良い中国出身であるカタコトの日本語を喋るおじちゃんに注文して二つばかり食べ、お腹を少し膨らましながら歩いていた。

少し歩くと、車に乗っている時に気になっていた大きなアーチ型の高架下があって、僕はこの街にこのアーチがあるんだ、などと記憶の辻褄を合わせていた。

電車の窓からいつも眺めていた行ったことのない商店街は僕が想像していたより人気(ひとけ)がなく、ほぼ地元民が利用するような雰囲気が漂ったいた。豆腐屋のおじちゃんや練り物屋のおばちゃんもみんな携帯を触って、異国のスパイスの香りがどこかから漂っていた。僕は軽くまだ完全に使いきれてない彼女のカメラで綺麗な光をパシャパシャと撮りながら時間を潰して歩く。

ふらっと一杯でもしようかと一度覗いたのことあったワインバーはまだ開いてなくて、結局いつものアーケードの下で適当な親子丼とミニ蕎麦セットを頼んで、腹を膨らまし映画館へと向かう。

ちょうど前の上映が終わった人たちが流れ込んできて、結構な人の量で意外だなぁと思ったりしていた。コーヒーとスコーンを買い、そそくさと上映が始まる前にスコーンを食べ終えた。スコーンは持つのが熱いくらい温められていたが中は少しだけ冷たかったのを覚えている。チケットを予約する前は空席はチラホラとあったが暗くなる頃には周りは満席だった。気になったのは年齢層が60代が多く見受けられてこれまたびっくりしていた。

彼女から和製版のパターソンのようなものと聞いていたのでその心意気で向かったが概ね、間違いではなかった。より日本市民として純度の高いある男のパターソンと言い換えても、だれかにめっちゃ怒られることはなさそうな気がする。

途中まで彼女がいなかった時のほぼ僕に等しかった。何か自分を見ているようで嬉しい気持ち反面、その映像から見えてくる自分の未来像のようなものに笑顔だけでは見れなかった。

後半に進むにつれて東京でもともと住んでいた叔父ちゃんと重ねたりしていた。その重なる像は輪郭がどんどん近くなり、苦しくなっていた。映画を観終わった後に感じるどちらかと言えば負の感情は映画館の中にいた人の中でかなり純度が高く想像を超えた負のスパイラルのような思考を自分でもしているなぁと感じていた。

総合的に考えても僕は叔父ちゃんにこの映画を観てほしいなど決して言えないし、叔父ちゃんからこの映画を万が一のどうだったと聞かれても、観てないと答えるかもしれない。映画はバッドでもハッピーでもないが僕には綺麗に見えすぎていた。

上映中に聞こえてくるイビキが僕の心をどんどんと不安にさせていた。僕は自分と照らし合わせてどこか勇気をもらうようなシーンもあれば、不安のような気持ちにもなったり感情の起伏を感じていたが、こんな映画なにが面白いのかわからないという人も絶対にいるなと感じていたからだ。変わらない日々の幸せがわからない人だと断言できる。しかし僕はそういう人とこれからもどこかでこの世界をシェアしながら生きていかなくてはいけない。

映画が終わり明かりがつくと同時に僕は周りの人の感想を聞きたくないというより、聞くのが怖くてすぐにイヤホンをした。否定したような意見を聞くと自分を否定されたような気持ちになるからだと思う。

足早に映画館を出る。上映中に雨が降り路上が濡れている。夕方前の大丸は光を綺麗に受け止め綺麗だった。いつも見る街の風景の中で些細な変化を撮影するようにした。何か気になるものや撮り収めたいものがあれば、周りの目など気にする余裕もない。僕は写真をただ集中して撮ることにしていた。

僕は今続けていることを続ける。それに尽きる。写真を撮り、言葉を綴る。庭の花に水をやり季節ごとに野菜を育てて、何かを学ぶ。詩を書いてギターを弾く。ご飯を作って大切な人と食卓を囲む。海に行って彼女とコーヒーを飲む。

自分の生き方が誰に評価されるでもなく、自分がどう思うのかだと。誰かの幸せや喜びと比較してはいけない、僕が今幸せかどうか、その曇りのない日々を積み重ねていく。ただただそれを続けていくしかない。

僕はそれを分かっているが、たぶんまだ分かってない。

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