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重伝建がなかったらどうなるか--廃墟になっていた
昨日は、多度津町教育委員会の「重要伝統的建造物群保存地区視察研修事業」に参加しまして、「美馬市脇町南町」(徳島県美馬市)の重伝建の先進地を視察して参りました。
重伝建地区とは「城下町・宿場町・門前町・寺内町・港町・農村・漁村などの伝統的建造物群およびこれと一体をなして歴史的風致を形成している環境を保存」(文化庁)するための制度で、歴史的な景観を保存しながら地域の活性化を目指す取り組みです。
美馬市脇町は、昭和63年に28番目に制定され、すでに30年以上の実績を持つ先進地です。脇町の「うだつの町並み」は往時の景観を保存すると同時に、地域を未来へと残すために官民協働で事業に取り組んで来ましたが、先進地を視察するだけでなく、その苦労や取り組みの実際の話を市民の方からも伺う事ができました。
御年80歳の7代目の保存会の会長さんは、最後の質問に次のように答えていたのが印象的でした。
「重伝建が選定されてなかったらどうなったと思いますか?」
「廃墟ですよ。町は廃墟になったと思います」。
多度津町では来年度の選定に向けて地区の選定は完了し、現在、地域住民の同意の取り付けに取り組んでいます。
金比羅参詣の玄関口として江戸期に栄え、当時をしのぶ家屋が残されていますが、こうした歴史的景観が未来へと残され、併せて活用されることで、「歴史と文化の町」多度津町が豊かになっていければと願うばかりです。
「廃墟」という言葉を重く受け止めたいと思います。
建築はどんなに負けようが、負けたふりをしようが、それでもまだまだ強いという事実を自覚することである。資源やエネルギーを消費し、周囲の景観に影響を与え、ユーザーの行動や心理を規定し、そのような様々な形で建築は勝ってしまうのである。
(出典)隈研吾『負ける建築』岩波書店、2004年。
氏家法雄/独立研究者(組織神学/宗教学)。最近、地域再生の仕事にデビューしました。