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【170】サイカチ(皂莢、梍)の木 2023.11.13

1 賢治さんの「さいかち淵」

 宮沢賢治さんの「さいかち淵」という作品を読んだことはありますか?
昔、花巻市を流れる豊沢川にあった淵で、子供たちが集まって水遊びをする絶好の遊び場だったようで、その縁に大きなさいかちの木があったのでこの名前が付けられたそうです。
未発表の村童スケッチと言われる作品群のひとつで、さいかち淵で遊ぶ村童たちの姿が生き生きと描かれています。
有名な「風の又三郎」の中には、村童スケッチの中の「さいかち淵」と「種山が原」がほとんどそのまま使われており、さいかち淵の中には又三郎の原型ともいえる三郎も出てきますが、まだこの段階では風使いの不思議な少年にはなっていません。けれど、この短編の最後の方で、

そのとき、あのねむの木の方かどこか、烈しい雨のなかから、
「雨はざあざあ ざっこざっこ、
 風はしゅうしゅう しゅっこしゅっこ。」
といふやうに叫んだものがあった。

という記載があり、誰もそんな風に叫んだものはいなかったと書かれています。
 又三郎の不思議な世界につながるものが姿を覗かせているのです。

2 幻視の作家

 こうした叫びは賢治さんはほんとうに聴いたことがあるのではないかと思うのです。
 こうした幻視であり幻聴は賢治さんは本当に体験していることなのではないかと思えてしまうのです。

 賢治さんが野山を歩き、野宿をしたりするとき、「かしわばやしの夜」や「月夜の電信柱」や「どんぐりと山猫」や「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」のような異

賢治さんが遺した絵を見ると、そんなことを強く感じます。

星空に裂けめができて何かが覗いている。不思議な絵
月夜の電信柱

 賢治さんは現実の世界の向こうに何を見ていたのでしょう?

 僕も、もしも夜の林を歩いているとき「欝金しやつぽのカンカラカンのカアン」と叫ぶ声が聞こえてきたら、「赤いしやつぽのカンカラカンのカアン」と喉一杯に叫び返すぞという心の準備はいつでもできているのです。 

3 さいかちの木があった

 さいかちの木に出会ったのはも15年以上前のことです。
 そのころ私は会社が虎ノ門の近くにあったので、昼休みは日比谷公園の方までジョギングしたりしていました。

 日比谷公園の中をうろうろし、「松本楼」のそばの林に大きな莢が落ちているのに気づき、何だろうと見まわしたら傍らの大きな木に「さいかちの木」と名札がかかっていたのです。

 これがあの「さいかち」なんだととても嬉しかったですね。

 その時一つだけ拾ったさいかちの実は今も持っています。
 それがこれです。

長さ30cmの大きな豆の莢

 からからに乾いて茶色になってしまっていますが、長さ30cmの大きな莢でした。
 さいかちはマメ科なんですね。
 下のURLに詳しく載っていました。

4 さいかちの実は食べられるの?

 さいかちの大きな豆はたべられるのだろうかと少し調べたら面白いことが解りました。詳しくは下のURLを見て欲しいのですが、

「サイカチの豆果には、石鹸の成分の一つであるサポニンを多く含んでいるので昔から洗剤として使われていました。
さやを水やぬるま湯につけて手で揉むとぬめりと泡が出てくる・・・」

のだそうで、さいかちの豆は石鹸代わりになっていたのだそうです。
【162】無患子の話をしましたが、サイカチもそうだったなんて、嬉しくなりました。
 そういうわけですから食べるのには向かなそうですね。

 泡を食ってしまいますから。

*賢治さんの作品は著作権が終了しているため、ほとんどが青空文庫で読むことができます。
 有難いことです。気になった方は探して読んでみてください。


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