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【184】源泉かけ流しの大浴場以外何もない心安らぐ伊豆船原温泉「湯治場ほたる」の話 2024.1.16

1 温泉に行こう

 今日は特に予定が無かったので温泉に行くことにしました。いままでに行ったことが無い所にしようと伊豆や静岡中東部の温泉をネットで探していたら「湯治場ほたる」という所がひっかりました。
「湯治場ほたる」は、伊豆半島を国道136号を通って南下し、414号と分かれて西の土肥港に向かうた途中の天城湯ヶ島上船原にあります。
 
 ここは豪華ホテル船原ホテルが廃業し長らく廃墟になっていた跡地を、源泉かけ流しの温泉の泉質が素晴らしいことを惜しんだ時之栖グループが買い取って最低限のリニューアルをして日帰り温泉に改装したものだという話で、温泉といっても、大浴場が一つあるだけで、ジェットバスもサウナも無し、タオルも浴衣も髭剃り、歯ブラシのサービスもなし、レストランもないのだそうです。

 今時の至れり尽くせりのスーパー銭湯的な温泉とは真逆の方向性なのが、一体どうなってるんだろうと、ある種怖いものみたさのような好奇心もあって行ってみようということになったのです。

2 湯治場ほたる

 ナビを頼りに進むと、問題なく道の左側に「ほたる」を発見、広い駐車場に車を停めました。営業開始11時の5分前に着いたということで車もまだほとんど停まっていませんでした。

時間前だったので少し気にしながら向かいましたが、もうフロントはオープンしていて優しく受付をしてくれました。

広くて立派なフロント

 「湯治場 ほたる」は、元のホテルの遺構を再利用しているのか、構えは大きく中も広々としていてロビーなんかは立派でした。

 けれどこれを過ぎると、装飾とかは一切なく、往時は横山大観、川合玉堂、ピカソなどの名画が飾られ、22金を124㎏も使用し長崎平和記念像を制作した北村西望さんが設計したという純金風呂が据えられたなどという面影は全くなくガランとしてスペース有りまくりの薄暗い殺風景な内装の廊下を歩いていくと、大浴場に行き着きます。

殺風景な通路

 ノレンを潜ると脱衣場で大きなロッカーが並んでいます。

脱衣場

着物を脱ぎ、次に進むと、ガランとした寒くて広い洗い場があり、そこを抜けてドアを開けて大浴場に入ると、開場の5分前には着いているのでほぼ一番乗りかと思っていたのに、もうすでに何人もの人がお湯に漬かっているのでした。
 あれ、もっと前から開いていたのかなと不審に思いながら見て見るとこれがお地蔵さんなのでした。全部で十体近くの石のお地蔵さんがものも言わずにじっとお湯に漬かっていらっしゃり、人間の先客は二人位なのでした。

お地蔵さまが入浴してござる

 1分間に80ℓ自然湧出されるという源泉を豊富に使用したお風呂は、幅13メートル、深さ80センチととにかく広々としていて、3つに仕切られており、ぬるい、ふつう、熱いの3種類の温度になっています。

広い温泉は3つに仕切られ左から「熱い」「普通」「ぬるい」になっています

 お湯の湯口は「熱い」の所にあり、それが仕切りをオーバーフローして「普通」「ぬるい」に順次流れていっているようでした。

 浴槽はザラザラしたコンクリート造りで、ただただ四角くて平なだけのシンプルな構造です。
 半地下の穴倉的イメージですが、向かい側は大きく吹き抜けになっていて明るい日が射しており、そこまで行ってみると外には船原川が川音を立てて流れており、さわやかな風と開放感と露天感を楽しむことができました。

向こう側は吹き抜けで日が射し風が入ってきます

 最初に「普通」40-42度位に入ったあと、「ぬるい」(上は35度位、底の方は水状態)に入り、次いで「熱い」43-44度位に入って、その後は主に「ぬるい」と「熱い」を交互、時々「普通」という感じで入っていました。

 この温泉は、加温無し、加水無し、循環無し、濾過無しの源泉かけ流しで、今まで行った温泉の中でも最高ランクの気持ちよさでした。

 「ぬるい」に漬かって川沿いの壁際の据わるところに横になって、日差しと風を感じながら寝てみたら余りの気持ちよさにほんとに眠ってしまってしまい、心底安らいだ感がしました。

目の下には船原川のせせらぎ

 お地蔵さまは、近くに寄ってみると可愛いよいお顔をしているのでした。 
 おかしかったのは、先客の丸い頭の熟年の方が目を閉じてお湯に漬かっておられたのですが、この方がお地蔵さんにまけないくらい良いお顔をされていて、お地蔵さんに交じって全く違和感がないのです。思わず手を合わせたくなりました。

 ちなみに、この温泉の源泉の温度は99.4度と高温なのですが、これを下の写真のような湯雨竹というものに滴らせることで自然冷却し加水することなく湯船に供給しているだそうです。
 でも、湯口の所に不用意に手を突っ込んだら ウアッチ まだまだ火傷する熱さでした。ご注意です。

竹製温泉冷却装置「湯雨竹 (ゆめたけ)」

 ところで、この温泉には、ほんとうに、この大浴場一つしかなかったのです。(というか、有料の露天風呂付個室は別にあるそうです。)

 でも、それだけで充分過ぎました。

 この広い湯舟で温度の違う3種を交互に入っているだけで豊かな時間がゆっくりと流れて行き、なんにもないということの贅沢さを感じることができました。

3 床暖房の無料休憩室:最高!

 もう一つ、とてもよかったのが無料休憩室でした。

 広い休憩室には床暖房がされていて、いっぺんで落ち着くなあと感じました。

休憩室は床暖房されていて机、仕切り、座布団、毛布などが自由に使えます

 「ほたる」にはレストランがない代わりに持ち込み自由になっていて、休憩室で飲食してよく、置かれている給茶器とレンジは自由に使ってよいのです。

休憩室には電子レンジ、給茶機などが備えられていました。

 休憩室で、家でつくって行った弁当を拡げ、お茶を飲みながら食べて、そのあとは毛布をかけてしばらく横になってみましたが、暖かくてポカポカして気持ちいいこと。熟睡していびきをかいているおじさんもいました。

 そのあと、これも無料のマッサージチェアコーナーで体をほぐし、もう一度お風呂に入ってから帰ってきました。

無料のマッサージチェアコーナー

 この日は結局3時間くらい滞在したのでしたが、温泉に入り休憩室で休んでまた温泉に入りを繰り返していたら何時間でも居られるね。次はそのつもりで来ようという結論に達しました。 

 というわけで、「湯治場 ほたる」すっかり気に入ってしまいました。
 また行きたいと思っています。
                                            <終> 

*家に帰ってから調べてみたら、前身の船原ホテルは1983年に火災を起こし、営業を再開することなく、そのまま廃業となったとのこと。
一億三千万円をかけた純金風呂が火災後十数年そのまま放置されていたが1998-1999年頃に何者かに盗まれ犯人は見つかっていないなど壮絶な事実が書かれていて驚きました。

 ただし、火災の時に亡くなった人はいなかったということなのでその点はご安心を。

*現在の湯治場ほたるについては下記サイトに詳しく書かれていました。写真を記事内で紹介させていただきました。ご了解ください。

*添付写真はネットからお借りしました。もし差し支えあれば削除しますので連絡ください。

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