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【158】音楽の話:「You Raise Me Up」は「明日に架ける橋」のアンサーソング!? 2023.7.24

1 ルーシー・トーマス姉妹

 発端はルーシー・トーマスさんでした。 
 友人に「ルーシー・トーマス知ってますか。すごいですよ!」というメールを頂き、早速ユーチューブで探して聴いてみるとまだ十代なのに落ち着きと余裕があり美貌と美声を兼ね備えた確かに将来性豊かな歌い手だったのです。
 で何曲か彼女の歌を見ていくうちに、彼女が妹さんとYou Raise Me Upを歌う動画を見つけ、これが素晴らしかったのです。

 これは素敵なデュエットですね。姉ルーシー16歳、 妹マーサ11歳の姉妹は最初ルーシーの正統的で豊かな美声に魅了されるのですが、聴いていくうちにマーサのややかすれたハスキーな声が気になりだし妹が歌うのを待っている自分に気付きました。動画の中に挿入される幼いころの二人の写真の、妹を可愛がる姉と甘える妹の仲睦まじい姿に癒されます。

2 You Raise Me Upという曲 ケルティックウーマン

 トーマス姉妹の歌でYou Raise Me Upという曲は凄いと思い、この曲の他の演奏を探してみました。
 するとケルティックウーマンのカバーが出てきました。ケルティックウーマンは以前から好きでしたのでどんな演奏をするのか聴いてみました。
 後で分かったことですが、この曲はケルティックウーマンの代表曲で、日本でもこの曲はケルティックウーマンの歌でヒットしたそうです。

 このライブコンサートの演奏はほんとうに良いですね。豊かで暖かくて大自然の力を感じさせる美しくて深い演奏だと思います。
 この曲の作曲者はアイルランドの方だそうです。
アイルランドの女性ユニットであるケルティックウーマンにとってこの曲は特に共感できるのでしょう。
 アイルランドやスコットランドというケルトの音楽は日本人にとってもなぜか親しみの感じられるメロディーが多いように思います。

3 バニー・バビオラさんのYou Raise Me Up

 さらにYou Raise Me Upのカバーを追いかけてみて、Vanny Vabiolaさんの歌唱に出会いました。
 湖の上をどこまで響き渡るかのようなダイナミックでドラマッティックな彼女の歌唱は感動的です。

4 You Raise Me Upと明日に架ける橋との関係性

 バニー・バビオラさんのYou Raise Me Upの動画では歌詞の英語が字幕で流れました。
 それを見ていたら、あることに気付いてしまったのです。

 ちょっと唐突ですが、サイモンとガーファンクルの最大のヒット曲「明日に架ける橋」を聴いてみてください。

似ているのです!
実は「明日に架ける橋」の歌詞とYou Raise Me Upの歌詞が、偶然とは思えない位そっくりなのです

You Raise Me Upの歌詞を見てください。和訳は私が訳したものです。

「You Raise Me Up」(あなたは私を奮い立たせる)
When I am down and, oh my soul, so weary
わたしが落ち込んで、わたしの魂がとても疲れ切っている時、
When troubles come and my heart burdened be
トラブルがやってきて、わたしの心が重荷に押しつぶされそうな時
Then I am still and wait here in the silence
わたしはじっとここにいて静かに待ち続ける
Until you come and sit awhile with me
あなたがやって来て、しばらくの間私の隣に座ってくれるのを、
You raise me up so I can stand on mountains
あなたはわたしを勇気付ける、そうすれば私は山々の頂きに立つことができる
You raise me up to walk on stormy seas
あなたはわたしに嵐の海の上を歩く力をくれる
I am strong when I am on your shoulders
あながそばにいてくれる時わたしは強くなる
You raise me up to more than I can be
あなたが力をくれると私は今までの自分以上の自分になれる
(以下繰り返し)
You raise me up so I can stand on mountains
You raise me up to walk on stormy seas
I am strong when I am on your shoulders
You raise me up to more than I can be
You raise me up so I can stand on mountains
You raise me up to walk on stormy seas
I am strong when I am on your shoulders
You raise me up to more than I can be
You raise me up to more than I can be

raiseには、「倒れたものや人を起こす」、という意味のほかに、「奮い立たせる、勇気づける」という意味があります。
I am on your shouldersというのは面白い表現ですね。直訳すると「私はあなたの両肩の上にいる」となり肩車でもされてるのかと思ってしまいますが、要するに「あなたが私のすぐそばにいる」という意味になるようです

 一方「明日に架ける橋」の歌詞は以下のようになります。和訳は私です。

「Bridge over troubled water」(激流に架かる橋)

When you‘re weary, feeling small 
君が疲れ切って自分自身をちっぽけに思い
When tears are in your eyes I’ll dry them all
君の瞳に涙が溢れる時 僕がそれを乾かしてあげる
I‘m on your side, oh, when times get rough And friends just can’t be found
苦しい時がきて、周りに誰も友達が見つけられない時、僕は君の隣にいよう
Like a bridge over troubled water I will lay me down
Like a bridge over troubled water I will lay me down

激流の上に架かる一本の橋のように、僕は君の前にこの身を投げ出そう
激流に架かる橋のように、君の前にこの身を投げ出そう

When you‘re down and out when you’re on the street
When evening falls so hard I will comfort you

君がうちひしがれて帰るところもなく街を彷徨い、
夜があまりにも冷たく落ちかかってくる時、僕は君を慰めてあげる

I‘ll take your part, oh, when darkness comes And pain is all around
暗闇が押し寄せて、苦しみだけがあたりを取り巻く時、僕は君の重荷を背負ってあげる
Like a bridge over troubled water I will lay me down
Like a bridge over troubled water I will lay me down

激流の上に架かる一本の橋のように、僕は君の前にこの身を投げ出そう
激流に架かる橋のように、君の前にこの身を投げ出そう

Sail on silver girl, sail on by Your time has come to shine
all your dreams are on their way 

船出しよう銀色の少女よ 
まっすぐに進んでいくんだ いっぱいに風を受けて
君の輝く時が来た 君の夢が今皆かなおうとしている

See how they shine,oh, if you need a friend I'm sailing right behind
ご覧、君の夢がどんなに輝くのかを
そしてもしも君が一人の友を望むなら 僕は君に続いて帆をあげよう

Like a bridge over troubled water I will ease your mind
Like a bridge over troubled water I will ease your mind

激流の上に架かる一本の橋のように 僕は君の心を安らわせてあげる
激流に架かる橋のように君の心を安らせてあげよう

*「Bridge over troubled water」を「明日に架ける橋」として売り出したのは商業的には日本のレコード会社の大ヒットだったのでしょう。上手い訳だったと思います。けれどサイモンとガーファンクルのセントラルコンサートでの歌唱を聴いていた時に、「ええっ、違うじゃないか」と衝撃を受けたのです。
この橋が「明日に架かる橋」という漠然とした夢のようなイメージではなく、「荒れた水の上にかかる橋」(私は「激流に架かる橋」と訳しましたが)、であり、緊迫した具体的なイメージだったことにです。

 私はこの曲は「激流に架かる橋」でなければならないと思うのです

両曲が発表されたのが「You raise me up」が2002年「Bridge over troubled water」が1970年ですから、「Bridge over troubled water」の方が先に造られていることになります。

二つの曲の歌詞を比べてみていかがでしょうか?
「Bridge over troubled water」は苦しい状況にある女性を身を投げ出して援けようとする男性の歌であり、
「You raise me up」は苦しい状況にある女性が男性に力づけられる歌であり、二つの曲は鏡合わせのペアであるように見えるのです。

いわば、「You raise me up」は「Bridge over troubled water」のアンサーソングであると見ることができるような気がするのですが、そう思うのは私だけでしょうか?

 You raise me up と I will lay me down という二つの言葉は照応しているように感じられるのです。

5 「You raise me up」のYouって誰なの?

 しかし、もう少し調べてみると、別な疑問が出てきたのです。私はトーマス姉妹やケルテックウーマンなどの女性が歌うのを聴いたのでYouは男性の恋人だと思い込んだのですが、
 実は「You raise me up」はアイルランド/ノルウェーのミュージシャン、シークレット・ガーデンの楽曲で、2002年のアルバム『レッド・ムーン』に収録されているそうなのですが、作詞は、アイルランド出身のフィクション作家ブレンダン・グラハムという男性なのです。
 探してみるとこの曲を男性がカバーしているものも数多いのです。

 中でもものすごかったのが、マルティン・ハーケンスさんでした。

マルティン・ハーケンスさんはオランダの方で、歌手志望で失業中のパン職人だった57歳の時に、娘さんが本人に無断で応募したテレビオーディション番組オランダ・ゴッド・タレントで優勝しデビューしたという異色の経歴の方だそうなのですが、本当に心揺さぶられる感動的な歌唱だと思います。
 
 この演奏などを見ると、この歌が男女のラブソングというのではなく、Youが同性の親友であっても成立すると思えてきます。

6 Youは神なのか?

 更に、深く考えてみると、もう一つの見方は Youは神であるというものです。
 「You raise me up」の歌詞には聖書の中の言葉がいくつも使われており、全体的な雰囲気も聖歌、賛美歌に近い宗教的な感じがあります
 もしもYouが神であり精霊でありキリストである存在と考えると、荒れ狂う海の上を歩くといった言葉が納得いくようにも思えるのです。

 けれど、それならば歌詞の中でもっとはっきりと「主が力をくれる」という表現をするのではないかと思えるので、神を持ち出さねばならないとまではいかないとも考えられます。

7 まとめ

 色々書きましたが、何が正しいか結論は出ません。
 私的には、恋する男性への無限の信頼を歌ったラブソングという捉え方がやはり一番しっくりくる気がしています。
 でも、どのような捉え方でも自分なりに感じることが出来ればよいのではないかと思います。

 皆様はどのように思いますか?
 コメントいただけたら嬉しいです。

 長時間お付き合いいただきありがとうございました。


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