五時のスイカ割り

「遠くへ行っちゃダメよ」
「五時までには帰ってきなさい」
生半可に返事をして遊びに出掛けて以来
五時が訪れることはなく
あたしはスイカの横で蒸し暑い砂浜に埋まっている

あたしとママを繋ぐ電線は
陽が傾くにどんどん伸びて
鬱陶しがった人間たちは電線を砂の中に埋めていく

時の砂に電線はあっという間に覆い隠された
なにを辿ってあたしは家に帰ろう
「あっちあっち」
「こっちこっち」
「遠くへ行っちゃダメよ」
鬨の声があたしの方へ降り積もる

「五時までには帰ってきなさい」
「そこだ!行け!」
飛び散った赤は、故郷の夕焼け
五時のサイレンだけが鳴り響く