林檎が落ちる
「因果関係とはなんですか。因とは、果とは?」
と聞かれた。
頭の中で思考をぐるぐる巡らせた。
因果関係。よく知っている言葉のはずなのに、僕は、君は、私たちはそれが「なんなのか」を考えたことがあるだろうか。
それっぽいことを考えたこともあっただろう。結論は?出てないはずだ。
でも自然に、頭の中で円を描いていた。
因が果を呼び寄せ、果が新たな因を孕む。新たな因がまた果を引き起こす。私はそのぐるぐるした沿線上を何度も何度も巡って、今、ここに座っている。次の駅に辿り着くまでのレールを敷いている。駅に辿り着いてからレールなんて敷いてるんだと気づく。
隣の隣に座った女の子が口を開く。
「たとえば…種子が原因だとして、成長した木もしくは実った果実が結果」
脳裏には、生い茂った木の幹の先に真っ赤な林檎が実っている。風がそよぎ、葉っぱの隙間から太陽の光がキラキラと表面に映る。
ぽとっ。
不意に林檎が落ちる。
時間が経ち、林檎が腐る。雨が降り、大地に芽吹く。月日が流れ、木に成長する。冷たい風の訪れとともに真っ赤な林檎が実る。
ぽとっ。
林檎が落ちる。
…
因果関係に終わりなどあるのだろうか。命が尽きることで円は千切れるだろうか。いいや、死は新たな始まりに過ぎない。
林檎を見ている私がいる。林檎を見ている私を見ている私がいる。林檎を見ている私を見ている私を見ている私がいる。
メタメタメタタタ。
林檎を一口齧れば
心が蘇ると聞いたのだけれど
2024.4.18 星期四 曇りのち小雨
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?