♬ Episode 33
黒板にあんな文字が書いてあるのに、泣けなかった。涙が出てこなかった。
絞り出そうとすること自体罪に感じた。
君の反応を伺った。
これといった感情の起伏が特に感じられず、関心もないと見た。
なので構わず座ってビデオの続きを見ようとした。
すると君が隣にやってきて、こちらに意味不明な視線を投げかけてきた。いや意味なんてないことはわかっている。
わからないよ、言ってもらわないと。
嘘かも。大体はわかってるね。
可能な限り、そうするつもりだったの。だってあなたたちのことを愛しているもの。ただし、君がそれを「本当に」望んでいる場合に限ってね。
それで、私が値すると判断し「ている」場合に限ってね。
視線と視線は別の次元では繋がっているのかしら。結局何も言わずに、君は教室の後ろの方に向かった。
茶番に飽きたので、私は視線をビデオに戻した。
司会と話している時、もう一度君を探してみたけど、もう姿はどこにも見当たらなかった。
それもそうさ。
今夜、月なんてどこにもないんだから。
2023.3.27 星期三 晴れ
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