【勉強の方針①】いかに手を抜くかを真剣に考えよう ver1.2

※適宜わかりにくいところを書き直したり、質問が出たところを補足したりする予定なので、versionを記載しています。

1 どこを頑張るかではなく、どこで手を抜くかにフォーカスしてみる

要点:僕は勉強ができない。

僕は、「いかに手を抜くか」という点については、司法試験の長い歴史においても、一番真剣に考えてきた自信がある。
まともな人は「そんな暇があったら短答一問でも解いたほうがいい」と考えるだろうし、実際、それは正論である。だからこそ、手の抜きどころの研究は蓄積されてこなかったのだろう。

しかし、病的に勉強が嫌いな僕にとっては、そういうものではないのだ。ただ「考える」だけなら、彼女の話を聞き流しながらでも、ウイイレしながらでも、テレビを見ながらでもできる。しかし、短答を解くためには、少なくとも一定の時間、目の前の短答問題に向き合って集中しなければならない。僕はこの数秒・数分によって、大幅に体力と精神を消耗してしまうのだ。だから、勉強する量・時間を減らすということは、僕にとっては死活問題だった。

さて、「1200時間」につられて、このnoteを購入してくださったみなさんにも、まず、怠け者の素質があることを自覚していただきたい。というのは冗談だが、これを読んでいる方の中には、「楽して早く受かる方法」を求めている方も少なからずいらっしゃるだろう。全く悪いことだとは思わない。僕自身がそうだったのだから共感しかない。

ただ、このnoteに書いていくのは、楽して受かる方法ではない。お気付きの方もいるかと思うが、「どこが重要か」と「どこで手を抜いてよいか」は、アプローチの違いにすぎず、コインの裏表である。したがって、究極的には一つの「答え」に収束するのだと思う。ざっくりした意味では、このnoteで僕が書いていくことは、巷に溢れる予備校のランクづけと同じなのだと思う。
もっとも、現実問題、このアプローチによる違いは大きいようで、僕が見る限り、予備校講師や上位合格者がいう「最低限」は全然最低限ではない。少なくとも、僕は試験当日までに、彼らのいう「最低限」の勉強をこなしていない。しかし、予備試験も司法試験も合格しているし、明日受けろと言われても合格する自信がある。

ところで、この1週間ほど、Twitterで「法クラ」のみなさんを観察していた。僕には、勉強法や答案の書き方について流れてくる様々な情報は、少なくとも一見するとバラバラに映った。もちろん、各自が言いたい放題言っているわけではなく、各々の哲学や根拠、責任感があるのだろうが、発言者が実際に勉強に費やした時間も、そのポリシーも見えないので、受け取る側として、誰のいうことをどのくらい真に受けたらいいのか、非常に難しいはずだ。合格順位を公表している人も多いが、それはあくまで結果である。肝心のプロセスが見えなければ、それが自分に真似できるレベルのものなのか、判断できないだろう。

一方、僕はここで、はっきりと「総勉強時間は1200時間です」「やらなくていいと思ったことは一切やらないというスタンスで勉強していました」と宣言しているわけである。僕のように、スタンスが明確な人間が実際に何を考えて何をやっていたのか、という情報は、それなりに参考になるのではないか、と思うのだ。
仮に「俺は/私はもっと勉強するわ!」という人にとっても、「少しでも手を抜ける要素があるならやらない」をモットーにしている僕が「ここだけは手を抜いてはいけない」という部分は、司法試験に合格する上でかなりの重要性を持つという意味で、ある程度は参考になると思う。各々の割ける時間と相談しながら、僕の提示する「最低限」に、予備校や上位合格者が「重要」と仰っている部分の勉強をプラスしていくのもありなのでは、と思う。

2 上位合格者から何を学べばいいのか

要点:上位合格者(予備校講師等も含む)の提供してくれるノウハウの背後には膨大な勉強量がある。彼らと同じ勉強ができれば、上位合格できるのかもしれない。しかし、怠け者が彼らのノウハウに飛びついて、中途半端にコピーしても、消化不良で終わったり、時間切れを起こしたりするリスクがある。まずは合格に必要な最低限の勉強をしっかりこなした上で、彼らから上位合格に必要なプラスアルファを学べばよい。

2.1 上位合格者はどういう人たちか

前提として、僕は「上位合格者」の方々を非常に尊敬している。めっちゃかっこいい。自分が二桁順位とかで合格していたら、絶対プロフィールに書く。

受験生の頃、僕が本格的に「手の抜きどころ」研究をする前の段階で、「楽して早く受かる」ために参考にしようと思ったのは、超上位合格者のノウハウだった。
※「ノウハウ」ってのは、教材の選択とその使い方、インプット・アウトプットのやり方、判例学習・条文学習のやり方など結構広いイメージ。

ネットで超上位合格者のブログや体験記、再現答案を見つけると、すぐブックマークして読み込んでいた。ただ、その目的は、上位合格することではなく、「効率のいい勉強法」や「点がつきやすい答案」を知ることにあった。もっと噛み砕いていってしまえば、「上位合格者ってのは余裕で受かったわけだから、彼らのやり方を真似すれば、彼らの半分くらいの勉強量でも合格できるんじゃないか」という発想だったのだと思う。

しかし、冷静になってみれば分かるとおり、そんな上手い話があるわけはない。説明するまでもないかもしれないが、昔の自分を戒める意味で、理由を書いておこう。

本当にたまたまだが、僕は、司法試験1位3人、2位1人を含めた1桁合格者を何人も、個人的に知っている。2桁合格者であれば、友人と呼べる関係にある人間だけでも、両手では足りない。僕の経験上、上位合格者には、ざっくり分けて、次のような方々がいる。
※予備校の講義やSNSではなく、ロー・修習・事務所などで友達だったりお世話になったりした、リアルの知り合いなので、彼らのパーソナリティや経歴もよく知っている。「すごい知り合いがいる俺すげー」タイプのマウンティングではなく、下記分析の根拠として書いているので悪しからず。

①司法試験というゲームにハマって出題趣旨とかまで研究し倒した人たち
→予備校で講師やりがち。一度悔しい思いをされて一念発起された方も。
②法学の勉強そのものに真摯に取り組んできた人たち
→たぶん、司法試験委員にとっての理想像。一発合格者でローの成績もいい人が多い。
③予備校を信じ切った人たち
→ひたすら講座を受講し、答練も真面目に受けた人たち
④たまたまラッキーで上位だった人たち
→中には天才もいるのかもしれない。

④の方々は予備校やSNSで自分のノウハウを公開しない(できない)だろうし、仮にしていたとしても有害なので耳を貸す必要はない。また、③の方々も、せいぜい予備校の合格体験記に講座や答練の利用法を書く程度で、積極的にノウハウを公開することはないだろう。

2.2 上位合格者のノウハウのどこをパクるべきか

では、①・②、あるいはその双方に該当する方々のノウハウは、参考にしてはいけないのだろうか。もちろん、そんなことはない。勉強する上で参考になることは多いだろう。しかし、大前提として、この人たちのノウハウが、膨大な勉強量の上に成り立っているということを忘れてはならない。上位合格者の中には、5000時間、1万時間勉強している人なんてざらにいる。
※友人の二桁前半合格者は、2年間ほぼ1日も欠かさず、自習室で「10時間終わるまで帰らない」生活を続けた。計算すると、ローの2年間だけで少なくとも7000時間を超える。

一つ例をあげるならば、判例学習である。司法試験の採点基準については別の記事で触れるが、司法試験で上位合格するためには、判例の理解をしっかり答案に表現できる必要がある。上位合格者の中には、「いうほどやっていないよ」という方もいるかもしれないが、それは「当社比」であって、僕に比べれば、かなりしっかりやっているはずである。これも、詳しくは各論で説明するが、結論からいえば、本当に1200時間で合格しようとすれば、判例プロパーの学習に割ける時間はほとんどない。実際、僕は、司法試験受験生なら当たり前に知っているような判例の多くを知らない状態で本試験に臨んでいる。
※もちろん、知っていなければマジで一発で落ちかねないレベルのものは、答案に再現できるレベルまで理解するようにしていた。この点についても各論で詳述。

上位合格者の推奨するレベルで判例を潰せば有益なことは間違いないだろうが、それを頑張るあまり消化不良や時間切れになってしまう人もいるだろう。他のもっと重要な事項の理解が不十分なまま本番を迎えることになってしまうかもしれない。

長くなってしまったが、僕の言いたいことをまとめると、こういうことだ。

上位合格者の勉強
=①司法試験に必須だと本人が考える勉強+②必須ではないが本人が意識してやっていた勉強(=本人が上位合格の要因だと考えていることが多い)
※ここでいう「勉強」は教材や論点だけではなく、「条文素読」のような勉強法も含む。

多くの上位合格者は、「必須」の勉強とそれ以外の勉強を自分なりに区別しているように思える。しかし、実は①はさらに以下のように分解できる。
①=❶司法試験に必須の勉強+❷司法試験合格に有益だが実は必須とまではいえない勉強(ここも上位合格の要因)
全ての受験生がおさえるべきは❶のみで、余裕がある人は、❷まで、さらに余裕があれば②までやればいい。

もちろん、たかが一合格者のお前に、なんで❶がわかるんだよ?というご指摘はあるだろう。そこを突っ込まれると合格者講義なんてものは、ほとんど成り立たないのではないかと思うが。。
冒頭で述べたように、少なくとも僕は勉強を❶だけに絞ることについては日本一考えてきた自負がある。担当するロースクールの指導でも繰り返し話してきていて、指導した学生の9割が一発で合格してくれている(みんなが頑張ってくれただけという説もあるが。)。
今後の具体的な記事の中で、ただ「これは要らない!」と言い捨てるのではなく、要らないと僕が考える理由を述べていくので、納得できたものだけ取り入れてもらうのでよいと思う。「あなたが要らないといったところが出たから落ちました。どうしてくれるんですか」というクレームがきても、さすがに背負いきれない。

さて、ここで、このnote連載のタイトルを思い出していただきたい。最も伝えたいことは、「1200時間あれば司法試験に合格できる」ということではなくて、「❶の勉強=最小限の勉強だけでも少なくとも1200時間はかかる」ということである。
※厳密にいえば、今は僕の時代より択一の科目数が少ないので、ロー経由であればもう少し少ない勉強時間で合格できるかもしれない。

仮に3000時間の勉強で司法試験に臨もうとする場合、特に意識せずに、❷に1200時間、②に1000時間かけ、❶には800時間しかかけられなかったとする。断言するがその人は合格しない。実際、長年勉強していても、朝から晩まで自習室にいても不合格になってしまう人は、こういう人たちである。頭が悪いわけでも、勉強が足りないわけでもない、やり方に問題があるのだ。

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