ウヒョ助日本全国歩き旅 (第3回:日本橋〜品川)


東京郊外の自宅からのてくてく散歩、3日目に憧れの日本橋に到着。

「日本橋から◯◯km」という標識を、関東のあちこちの道路沿いで見かけるが。どうやらこの道路元標から、メジャーをピーっと伸ばして距離を測っているらしい。そうか、ここが起点なのか。すべての道のスタートなのか。

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さて、ここでタバコを吸いたくなった、ニコチン中毒おじさん。どれくらいタバコに毒されているかといえば、ひどい時は1日に5箱も吸っていた。

東京は、歩きタバコを撲滅すべく「喫煙所以外では吸ってはいけませんよ!」と条例を作って頑張った結果。今ではほとんど歩きタバコしてる人を見かけない。都心に近づくほどマナー意識が上がるのか、喫煙所すら見つからなくなり。コンビニの外に灰皿を置くこともダメな世界。

それでも都心のどこかに、いにしえの古代遺跡「灰皿」が生き残っているはずだ。

ウロウロ、キョロキョロしながら、目標もなく歩き出す。


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気がついたら、東京駅から南下し、浜松町の川っぺり。

浜松町といえば、羽田空港へ向かう東京モノレールがある。

わしが昔、上京するため北海道から飛行機で飛び立った時も、この浜松町に降り立った。浜松町のパチンコ屋に飛び込み「ミサイル」という名の一発台で大当たり。使った飛行機代を取り戻した思い出のある、懐にやさしい町だ。


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さらに南下していくと、オフィス街となった。フェンスの向こう側で何やら大きい工事をしている。こんなビルがギュウギュウにひしめき合う街に、ぽっかり空いた広大な空き地。よくこんな土地が残っていたな。何を作るのだろう?

見知らぬマンションの非常階段から、工事現場の写真をなんとなく撮っていたこの時は、2017年の2月であったのだが。

その2年後、茶の間に流れるテレビから「高輪ゲートウェイ」というイキった名前が、わしの耳に飛び込んだ。「その駅の名前はいかがなものか?」と世間がワイワイ騒ぐことになるのだが。

…そうか、あれは駅を作っていたのか。


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ダラダラ歩いた末に、品川駅に到着。

品川といえば、 東海道五十三次の一番最初の宿場町。新幹線も停まる、由緒ある立派な駅。ここで散歩を終えなければ、東京を出てしまう。住んでいる東京を出てしまったら、もう散歩じゃない。

これはあくまで、ダイエットのための散歩だ。ダイエット、ダイエット…。

そう念仏のように唱え、品川駅から電車を乗り継ぎ、地元に帰るわし。


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この品川に2度と戻ってきては、いけないのだ。

2度と。


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2017年 3月。早朝。

なぜ、また戻るかね。品川に。春とはいえ、まだ全然肌寒い。

これ以上歩いたら、次の宿場町、川崎に着いてしまう。あそこは神奈川県だぞ。旅にしたいのか、このダイエット散歩を。


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早朝の運河沿いを、ゆっくりと歩き始める、わし。

時間が早すぎて、朝の散歩をしてる人すら見かけない。


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パイプに並んでとまっている鳥が(スズメじゃねえな…)には気づいていた。いかにも海にいそうな鳥。そうか、運河だけに海が近いのか。


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突如現れた、大きい水門。

この後ろには、大きいクジラの絵が描かれてあった。

幻想的な景観。ウットリとしてしまう。ファイナルファンタジーの召喚獣・アレクサンダーに出会ってしまった気分。これは死ぬな。


しばらくボンヤリと水門を眺めているうちに

(こういった風景をたくさん見たら、漫画のアイデアの「種」になるんじゃないだろうか? 自分が見聞きした物の中からしか、アイデアは決して生まれない。ずっと家の中では、いつかアイデアの在庫が尽きてしまう、この散歩をダイエット以上に、意味のあるものにできないかな…?)


……この水門がキッカケだった。

ダイエット散歩が、目的を持った「歩き旅」に変わった瞬間。

水門が、新しく見る景色の数々が、頭の中で次々と物語を生み出し始めた。そしてのちにすぐ、この水門は、わしの作品の中に登場することになる。


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伊藤龍先生の漫画「蟻の王」7巻。

原作の「塚脇永久」が、わしウヒョ助の、もう一つのペンネームである。


かすかに潮の香りがするような、しないような。そんな冷たい朝の空気を吸い込みながら、品川からフラフラと南に向かって歩き出した漫画家42歳。

この歩みはさらに東京の外へ向けて加速する…!

(つづく)

ご機嫌がよろしい時、気分で小銭を投げていただくと嬉しいです。ただあまり気はつかわず、気楽に読んでくださいませませ。読まれるだけで感謝です。