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自然農という名のゼロ地点

山に登るという表現は、時に比喩として、目標に向かって進むこと、コツコツと毎日続けること、のように使うのですが、自然農に出会い、師匠や研修仲間と話したり考えたりする中で、「山に登る」ではない、何か違うイメージが浮かぶようになりました。

それは、「山をくだる」というイメージ。

自分の足で前に進むというよりは、流れに身を任せるようなとても受動的な感覚です。

以前みんなで、「無目的」であることはどういう状態かということを話し合いました。
自分の中から生まれた一つのあやふやな答えのようなものは、みんなの中にもそれぞれ形を変えて存在している。
何か安心感というか、方向性は皆同じなんだという事実が自分の軸をより太くしてくれたような気がしています。 

今までは一人で坂道を歩くだけだったのに、今は前や横に同じように歩みを進める仲間がいて、時には楽しく、時には少し立ち止まって景色を眺めるような、そういうことなのかなと感じるようになりました。

自然界と人間社会の間を行ったり来たりする毎日ですが、畑にいると本当に心が落ち着きます。
それは、畑でいることが自分の原点、もっというとゼロ地点になったということ。
迷ったり疲れた時に戻れる場所が一つできたことは、僕の人生に大きな意味をもたらすだろうと思うのです。

これが大きな社会の“うねり”になることはないだろうと思いつつ、波紋のように自分の周りから広がることを願っています。

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