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現場の医療の覚エ書1-せん妄と不眠症-

1.せん妄と不眠症の関係

せん妄とは、突然に生じてしばらく継続する「意識の障害」である。具体的には、注意力・集中力が低下して、見当識が失われる。

せん妄は、「高齢・認知症」といった素因を持つ人に「身体疾患、薬剤、手術」などが引き金を引くことで引き起こされ、「環境の変化や不眠」などによって悪化が後押しされる。

ここに、せん妄と不眠症を合わせて考える意味がある。せん妄が発生したときに、「高齢・認知症」といった素因に介入することは難しく、「身体疾患、薬剤、手術」をなかったことにもできない。また、環境調整はある意味常識的な感覚で対応が可能である。一方、不眠はある程度の独立性と介入可能性をもってせん妄を後押しする。ように思われる。

2.不眠症の治療薬

せん妄リスクが少ない薬剤をまとめていきたい。

〇トラドゾン……抗うつ薬であるが、催眠作用が強いものの1つ。そこまで作用が強いわけではないが、代わりにリスクが少ないことがうれしい。半減期が短いため、持ち越し効果が少ない。また、筋弛緩作用が少なく、転倒リスクが低いのは看護的においしい。

〇ロゼレム……ロゼレムはメラトニン(松果体から分泌され、睡眠を司るホルモン)をじんわり増やす作用があります。なので、患者さんを自然な眠りに導きます。ただし、切れ味はよくないので、待てない場合には使いにくいですね。夜間に明るい環境にいると、メラトニンの分泌異常がおきたりします、ちなみに。

〇デエビゴ……覚醒を促すオレキシンの作用を阻害することで、眠りに導く薬剤です。飲んですぐ効くのがおいしいです。ベルソムラもオレキシン受容体拮抗薬です。

3.せん妄(ここでは活動型)の治療薬

<興奮を伴わない場合-内服薬->

〇トラドゾン……さっき出てきた睡眠障害に使える抗うつ薬ですね。

<興奮を伴う場合-内服薬->

〇セロクエル(クエチアピン)……非定型抗精神病薬(分類はMulti-Acting Receptor Targeted Antipsychotics)の1つです。適度な鎮静効果があります。糖尿病には禁忌です。

〇リスパダール(リスペリドン)……こちらも非定型抗精神病薬(分類はSerotonin Dopamine Antagonist)の1つです。鎮静効果に加えて、幻覚・妄想を抑え込む効果があります。

<静注薬>

〇ハロペリドール……定型抗精神病薬ですね。

〇アタラックス-P(抗ヒスタミン薬)……呼吸抑制が来ないのがおいしい。ワンショットで使用できる。

4.最後にご注意

その1:まずは薬に頼る前に環境を整えましょう

その2:ベンゾジアゼピン系はせん妄を起こしやすい

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