タッチとハンドリング

私たちの仕事は、相手に触れる事がほとんどです。

全く触れないという事はほとんどありません。

可動域訓練、感覚訓練、動作訓練、介助などあらゆる場面で相手に触れます。

この時、触れかたが繊細であればある程良質な変化がでます。

雑に扱うと悪い変化が起きます。

ここではタッチとハンドリングについて説明します。


タッチとは

大きな違いとして、タッチは「相手の状態についていく」

ハンドリングは「相手についてきてもらう」

この違いです。

先ずタッチについて。

タッチで重要なのはファーストコンタクトの時です。

この時、強く押す、握るなど雑に触れると筋緊張が上がったり痛みや不安、不快を引き起こし、その後どうやっても良い反応はだせません。

まず優しく触れていきます。

この時息を吐きながらタッチするより、息を吸いながらタッチしていく方が余計な圧をかけずにすみます。

そして相手を感じます。

体温や皮膚の柔らかさ、呼吸や脈のリズムなど相手の身体状態を感じその動きについていきます。

このとき、感じよう、ついていこうという気持ちが強すぎると逆に上手くいきません。

あまり強い意図を持たず背後の空間を広く感じると様々な情報を感じ取ることができます。

その状態で自分の手が相手の身体に馴染んでいくまで待ちます。

自分の手が相手の身体に馴染んできたら、相手主体で動いてもらいます。

そして苦手な動き、局面において一緒についていきます。

この時、こちらから何か操作しようとせず、ただついていくだけです。

これだけで、ぎこちない動きがスムーズになっていく事があります。

これがタッチです。

例えば、歩行時に左右への重心移動が不十分で、遊脚時に麻痺側足尖が引っかかってしまうようなケースにおいて介助歩行する時、こちらの意図が強く入りすぎるような介助では、セラピストの介助が逆に邪魔をしてしまい、バランス崩してしまいます。

こんな時、丁寧に触れて、余計な意図を持たずに相手の動きについて行ってあげるだけで良好な重心移動が促されることも多いです。

このような、相手の身体に馴染むようなタッチが出来る事は、臨床で有用です。

タッチは比較的ご自身で動ける方に対して実施すると有効です。


ハンドリングとは

次にハンドリングですが、ハンドリングは「相手についてきてもらう」です。

相手の出来ない動きに対して、こちらのハンドリングによって動きの介助、誘導していきます。

人それぞれ動きに対して反応しやすい部位、しにくい部位があります。

反応しやすい部位は、その方が普段からよく使う部位です。

だから介助、誘導時に少し方向性を提示するだけでついてこれます。

しかし、ハンドリングに反応しにくい部位や方向はその方が

普段使わない部位、方向と考えられます。

言い換えればその方にとってその部位、方向は存在していないと考えられます。

無い部位は動かしようがないわけです。

動きについてこれない部位に対して無理やり動かすのはハンドリングではありません。

どうしてもこう動いてほしいこう動かしたいという気持ちが強くなり、相手がこちらの動きについてこれていないにも関わらず力任せに動かそうとしてしましがちです。

そうすると相手はそれ以上の力で反発してきたり、緊張を高めお互い力比べになります。

そんな状態で学習できるはずもありません。

あくまでもこちらの意図に対して相手がどう応答するか丁寧に対話していくのです。

大事なのは、動きについてこれる所とついてこれない所との境界線を意識します。

この境界線部分が学習ポイントです。

動きのついてこれないポイントがあれば、すぐに目的の方向に動かそうとするのではなく、目的とは反対方向に一度動かしてみます。

反応しにくい方向というのは案外反対方向が反応しやすかったりします。

しかも、大きく動かすのではなく、皮膚をずらすように小さく動かします。

そして、待ちます。

ここで待てない方が多いのですが、動きの提案をした状態で待つ時間は、相手が情報を解釈している時間で、大事な学習ポイントになります。

急いで力づくで超えようとしてしまうと、相手の学習機会を奪うことになります。

大まかな動きの方向を提案しつつも、相手が反応できる強さ、幅、速さでハンドリングし、動きが止まったら待ち、また反応しだすと動かしていきます。

動きの境界線を見極め、少しづつ境界線を広げていくようにハンドリングしていきます。

この作業をしっかり時間をかけて実施します。

こういった動きは自転車に乗るのと同じで、一旦能力が形成される局面に入り、一度動きが分かると一気に反応が良くなります。

このようにある部位の動きが良くなると、その部位に関係する次の部位へ移り、同じことをし、範囲を拡大していきます。

そして全体へ波及させ、全身運動を形成していきます。

起居動作では、胸郭からのハンドリングでは反応が良いのに、骨盤からのハンドリングでは反応が悪いなどあります。

これは、その方が胸郭優位に動いているといえます。

胸郭からの動きの精度を高めることも大事ですが、苦手な骨盤からの動きの精度を高めることも大事です。

骨盤からハンドリングし、上記のように、動きの境界線を確認しながら時間をかけて動きの範囲や方向を拡大していく。

これがハンドリングですね。

タッチと違いハンドリングはこちらの割合が大きいのでその分繊細さが必要になります。

ご自身では上手く出来ない動作をタッチやハンドリングによって成功の先取りをして、その成功体験を基準に再現性を高めれるよう促すツールです。

一度ご自身の臨床を振り返ってみるのも大事ですね。

お読みいただきありがとうございました。

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