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彼とは、夏に出会った。夏が似合う人だった。 私と一緒にいる時、彼は私の二日間をすごく大事に扱うけれど、私と一緒にいない時、彼は私の一カ月を酷く軽く扱う。彼は、夏が似合う人だった。 ・ 「会いたかった」 その言葉で始まるのも、これで何度目だろう。ぴったり月に一回の頻度で彼の部屋を訪れるようになって、もうすぐ二度目の秋が来る。 彼に何人、セフレがいるのかはわからない。恋人がいるのかもわからない。結婚してると言われても別に驚かない。ただ、必ず第三週目の、金曜日の夜から土曜日の
行きつけのバー。雰囲気のある店内。気のいいマスター。見知った常連。美味しい酒。 それだけ全て揃っていれば僕の心は洗われ癒され幸せを感じるはずなのに、ただ一つ、そこに異分子が加わるだけで、いとも簡単に世界が崩れる。 「ねぇ、聞いてる?」 異分子が隣で声を上げた。元々幼い顔を更に幼くして、全身で『構ってほしい』とアピールしてくるそれが、僕の平穏を壊していく。 ・ 「だいたい、彼は私のことなんて好きじゃないんだと思うの」 そのセリフはもう300回は聞いた。彼氏と上手くい
世界を征服しようと思ってるの。 初めて会った時、彼女はそう言って笑った。その笑顔が、まるで陶器で出来ているみたいな肌が、ずっと、僕の心に吸い付いて、いつまで経っても離れてくれない。 ・ カーテンの隙間から漏れた明かりが、昨夜の情事を映し出していた。生まれたままの姿でベッドに横たわる彼女の長い四肢に、シーツが絡みついて、一番『見たい』部分を見せてはくれない。 「美緒、おはよう」 彼女の体を跨ぎながら声をかける。吐息のような、鼻に抜ける音を漏らして美緒が体を揺らす。美