先人たちのトルコ語入門書がカッコいい件:竹内(1970)とテュレリ(1968)
トルコ語の教科書で、日本で市販されている・かつてされたものはできるだけ入手して手元に置いておこうと以前から思っていました。最近ふと、自分より以前の世代の人たちはどうやってトルコ語の勉強をしておられたのだろうかと思うことがあったのと、以前に書かれたものは今見返すとどう感じられるのだろうかということが気になったので、いろいろと入手ルートを探って2冊ほど手に入れたのですが、
竹内和夫(1970)『トルコ語文法入門』(東京、大学書林)は比較的コンパクトながらもトルコ語文法の主要なところを網羅した一冊で、簡易的ながら練習問題もついているのが特徴と言えるでしょう。
で、やはりこういった本は先駆的な位置づけだろうと思うので、まえがきの部分というのが面白かったりします。同書のそれによりますと、「1956年に国立国会図書館で講義したときの原稿をもとに、それにかなり手を加えて作ったもの」(p3)とのこと。1956年にはトルコ語そのものについての講義が開催されたんだというのが自分にとっては純粋な驚きです(需要、あったんですねえ)。
しかも開催されたのが国立国会図書館。そんなことあるんだ、とも。今でもそういった類の講義が開催されているのか、不勉強にして存じ上げないのですが(しかも調べない)、今ほどのトルコ語人気(および需要)があったとも思えない時代だったと思うのですが、そういった先人たちの残したものが脈々と受け継がれて、後の東京・大阪外大での専攻語開設等々に結びついているのかもしれません。このあたりの話は諸先輩方に聞いてみるのが早いのでしょうけど。
さて、竹内(1970)にはもう一つ自分にとって面白いことが記されています。それが、「最近トルコ大使館の一等書記官であるOrhan Türeliさんが日本語で立派なトルコ語文法書を書いてくれました」(p3-4)の部分。その本とは、これのことだなと思って、そちらも古本で買い求めることに。
オルハン・テュレリ(1968)『トルコ語文法・会話』(丸善出版、東京)は、学部生の頃にもおそらく外大図書館あたりには所蔵があっただろうと推測するのですが、参照する必要も当時は特に感じなかったのでまったく手に取ることはありませんでした。
今自分のこの年齢、この立場になって改めて手に取って見返しますと、このテュレリ(1968)の扱っているトピックの多さと広さにちょっと驚かされます。かなり網羅的な内容の文法書になっていて、圧巻は本書巻末の「会話の練習」のパートです。
今でも十分使えそうな日常的な会話文、さらにナスレッディン・ホジャの寓話2点、かの(その筋では)有名なアタテュルクの「トルコ青少年への演説」逐語訳と、かなりサービス精神にあふれた構成になっているなという感想を持ちます。
先人たち、スゲーなと。上述の竹内先生といえば、同じく大学書林からのちに例の「ポケット版の赤い辞書」も出ている、トルコ語-日本語辞書を編纂した先生ということでも知られていますが、言語学・テュルク語学の立場から文法書・語学書を世に出された先駆者といえるでしょう。
オルハン・テュレリ氏のほうは上述の通り、当時のトルコ大使館で一等書記官を務めていた方ということですが、それでもこれだけ網羅的なトルコ語の文法書を当時残されたというのは大きな貢献でしょう。
氏の本のまえがきの面々も豪華で、三笠宮崇仁親王、当時トルコ大使トルグット・アイトゥ氏に続いて、柴田武先生(!)の推薦文まで入っています。柴田氏の推薦文の最後のほうではこう書いてあります。
実際、それくらいのトルコ語資料としての価値があるように思えます。ざっと見ただけでも、参照文法書としてもかなりクオリティが高いなという感想。あとは語学書として、練習問題があればなおよかった…というところをもって、後の世代の語学書公刊につながっていったのかなと想像します。
どうでしょう、現代トルコ語の日本で公刊された書籍としてはこの2冊あたりが先駆的な位置づけになると言ってよいのかどうか。あまり得意ではないのですが、そのあたりも今後少し調べてみようと思います。
別に誰のためとか、研究目的とかそういうことでもないのですが、純粋に私自身の興味ということで。雑学でも知っておくにこしたことはない主義でトルコ語にはアプローチしていきたいということでひとつ。
さてさてアドヴェンター企画、ようやく開始して1週間です。早いっちゃ早いな…長いっちゃ長いけど。まあせっかくの企画ですので(本家のほうには乗り遅れたけどな!)言語・言語学にできるだけテーマを寄せていくことにはしようかなと思います。
ではまた明日。Yarın tekrar görüşmek üzere!
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