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「表紙ミスプリ事案」への雑感


先月末、慢性のLPP収集癖がまた発動してしまいましてドイツの例の会社から日本語訳の『星の王子さま』を購入した話をここで書いたことがありました。

年が明けまして今月、5日ほど前に上記注文の本が届いたのですが、裏表紙を見ますとなんと日本語になっているべき引用文の箇所が、別の言語(具体的には中国語になっていました)になっていたことに気づきました。

これはおそらく、同時期に同社から中国語訳も出版されていることが関係しているのだろうと思われます。

正直なところ、それに気づいた瞬間はけっこうがっくりきました。しかし返品して返金してくれというのも、本の価格のわりにはこちらの返品手続きも面倒だろうし、そもそも訳者のドリアン助川訳は日本で出版されているものも入手済みだし、まあいいかと思うことにしまして。

一方、出版元のEdition Tintenfass社さんはこのことに気づいていらっしゃらない可能性も高いので、一応裏表紙にミスプリがありますよ、ということをInstagramのアカウント経由でお伝えしたのでありました。出版社はドイツにあるのですが、英語対応もしてくださっているのでこういうときは助かりますね。

そうしましたらすぐお返事を賜りまして、すぐに解決を目指しますのでこれに懲りず引き続きご支援のほどを、という内容でした。さすがE.T.社だ。心の狭いワイなどとは大違いだな…と自己反省しつつ、もちろんこの程度のことで今後取引などしない、とかなるわけもありません。今後また販売を再開されたときに、しかるべき修正が行われていればそれが何よりですから。蒐集家のはしくれとしては、同志たちにも思いをはせるのがマナーというべきでしょうしね。

さて、この件に際していろいろと近しい(オレ目線でですけどね!)方々からコメントをいただいたのですが、コレクターの方々の中にはこういったミスプリの本こそ「おいしい」と思われる方がいらっしゃるようで…ある知り合いのモンゴル諸語研究者のAさん(仮名・東京近辺在住)は「それは逆にレアものかもしれませんよ」とおっしゃいましたよね…

いや。このRoutledgeから出ているシリーズのこれ、お値段は『星の王子さま』などは比べ物になりませんのよね。それでいて、「ツングース(Tungusic)」となっているべき背表紙がよりにもよって「テュルク(Turkic)」になっているのを見た日にゃあね…

しかしこれはこれとして、いずれ修正されたものが出回るようになった時には、初版のミスプリということで逆に価値を感じてしまう…ということはあるのでしょうかどうでしょうか。

もうお一方、先輩蒐集家のBさん(蒐集の執念が鬼やばい)も同様の趣旨のことをおっしゃる。

自分、この境地にはまだ達していなかったな、と思ってしまいました。そうかそういう考え方はわりとありうるのだな、という気づきは得ましたが。

まあまあいずれにしても、ミスプリが修正されるのであればそれにこしたことはないだろうという意見には変わりないのですが。


さておきまして。

このドリアン助川訳、以前感想を教えてくださった方がいらっしゃったのですが、改めて私も今回ざっと目を通してみました。特に中盤のあたりですか、飲んだくれ・実業家の言葉には大阪弁(らしき言葉遣い)ですとか、ランプ係は東北弁(具体的にどのあたりかはちょっと私の知識では特定できないのですが)のような訳を充てておられるところがあって、なるほどここのあたりでも賛否というか、読者の好き嫌いが分かれそうなところだなとは思いました。私はどっちか、ですか?私はそれはもう(以下略)

まあ、蒐集家のはしくれなのでですね。それでも1冊は1冊です。
ミスプリ事案に遭遇しつつも、貴重なコレクションのうちの1冊ということで。ただ、今後ドイツの出版社のほうでミスプリが修正されるようであれば、それはそれで別途入手したいと思ってしまう程度には我ながらどうしようもないなとも思う今日この頃です。

追記(2024年1月29日)

モンゴル諸語研究者Aさん(仮名;東京周辺にご生息)の後日談を賜りました。

「おいしいからこのままで」…
心、広い… 見習いたい…(ワイならすぐ代えてもらいたいかもしれないがたしかに悩ましい!)

※さらに某大学の先生でおられるKさん(仮名・東京近辺在住(推定);二重の意味で「仮名」の人として知られている)もこのようなコメントを寄せてくださいました。

レア度高まるというのは世の常でしたか…
あれ?じゃあワイ、勝ち組じゃね???

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