漫才「年賀状」

A「最近年賀状どうしてる?」

B「一応近しい人には送ってる。」

A「偉いね。」

B「年賀状ってさ、干支にちなんだダジャレを書いたりするじゃん。」

A「ひつじ年だったら『あけましておメェ〜でとう』とか、いのしし年だったら『猪突猛進』みたいな。」

B「あれが好きで、この前12年分考えたんだよね。」

A「1周分だ。すごいじゃん。」

B「だから聞いてもらいたくて。」

A「良いじゃん、聞かせてよ。」

B「まず今年のうさぎ年からね。」

A「うん。」

B「『一皮むけてジャンプアップ』。」

A「うさぎってジャンプのイメージあるからね。いいね。」

B「次たつ年。『カラッと元気にアゲアゲな一年』。」

A「昇り竜みたいなことかな?上に向かってアゲアゲでってこと?」

B「へび年がちょっと難しくて。」

A「へびって難しいんだ。」

B「『景気も羽振りもいいけれど、酒浸りには要注意』。」

A「『羽振り』の部分にハブがいるね。後半は何?」

B「なんか『羽振りがいい』っていうと、酒の席を連想しちゃうかなと思って。」

A「別にそんなこともないけどね。前半だけでよかったと思うけど。」

B「うま年は簡単だった。」

A「自信ありそうだね。」

B「『桜咲く、馬(ば)さしく万事ウマくいく』。」

A「『馬さしく』気になるね。」

B「どうしても入れたくて。」

A「じゃあ次ひつじ年?」

B「『スクラム組んだまま、とんとん拍子。ジンギスカンより信頼感』。」

A「あのさ、これいつ考えた?」

B「まあ秋くらいかな。」

A「食欲がすごいわ。」

B「食欲すごい?」

A「食欲すごい。ひつじ年のやつ、もう1回言って。」

B「『スクラム」

A「まずラムが入ってるね。」

B「組んだまま、とんとん拍子」

A「マトンもいるね。」

B「ジンギスカンより信頼感』」

A「焼いちゃったね。ラムもマトンも焼いちゃったね。新年一発目に干支焼いちゃダメだよ。」

B「ダメ?」

A「『桜咲く、馬さしく万事ウマくいく』?」

B「これは焼いてないよ。」

A「馬刺し入ってるね、これ。焼いてないけどお腹にゲートインしちゃってるね。」

B「干支って食べちゃダメなの?」

A「食べるには早すぎるな。その年の象徴だから。へび年は?」

B「『景気も羽振りもいいけれど、酒浸りには要注意』。」

A「ハブ酒にしちゃってるね。酒に浸しちゃってるもんね。たつは?」

B「『カラッと元気にアゲアゲな一年』。」

A「竜田揚げだね。『カラッと元気』なんて揚げ物の枕詞だもの。うさぎは?」

B「『一皮むけてジャンプアップ』。」

A「多分りんごのうさぎだよね?うさぎの駄洒落で皮むかないから普通。」

B「ジャンプアップル、ってこと?」

A「今日本一うるさい。とにかく食欲が勝っちゃってるから。あんまり良くないよ、この流れ。」

B「でも、ひつじ年はもう1個あるから。」

A「まだあるの?」

B「『素晴らしいことが起こりウール』。」

A「衣替え始めたね。肌寒くなってウール出してきたじゃん。」

B「偶然だから。」

A「ほんとに?冬越そうとしてない?」

B「冬を越す前に年を越さないと。」

A「絶好調だね。次さる年はどうしたの?さるは食べれないけど。」

B「『今年は去るのを待つだけ』。」

A「諦めてるじゃん。食べれないし、暖も取れないから1年棒に振ってるじゃん。」

B「次行っていい?」

A「次はとり?」

B「『むね張って 元気ハツラツでいきましょう。クレバーな発想で、てばやく体を動かして、さあさあみなさんお立ち合い。ももの花咲く春から、もみじ舞う秋まで、ガラでもないこというけれどかわらぬご愛顧よろつくね。」

A「すごいな。え、何個使ってる?」

B「軟骨?」

A「焼き鳥に侵食されてるじゃん。鶏肉の部位何個入ってた?」

B「むね、ハツ、レバー、手羽、ささみ、もも、もみじ、ガラ、皮、つくね。」

A「捨てるとこなさすぎるだろ。もうハガキパンパンじゃん。」

B「そうだよね。こんな長い文読んだらみんな“ダウン”しちゃうか。」

A「羽根まで使っちゃって、衣替えも順調じゃん。次いぬは?」

B「いぬ自信ない。」

A「いいから言えって。」

B「『今年もワンダフルな一年に』。」

A「いのししは?」

B「傑作だよ。『ボタンを押したら、無事鼻炎が治りますように』。」

A「ボタン鍋のボタンか。ねずみは?」

B「期待しないで。『今年もよろしくお願いしマウス』。」

A「でも、食えない年の方が全然好きだな。だってジビエ使いたいあまり、文章の意味がわからなくなってるもんな。」

B「バラついた未来もランプで明るく見通せばイチボく瞭然。」

A「まだ良いって言ってないぞ。我慢できなくて牛がはみ出てきてるじゃん。」

B「スネかじりがネックだけど、遺伝だからミスジは争えないね。サンタクロースみたいなマメさと、コブクロみたいなシビレる歌唱力が自慢です。無テッポウでミノほど知らずなタン細胞でいつかハチノスにされる危険をハラミますけれど、頑張りにヒレいしてきっと儲カルビッグスターになるのでよろしくね。君を愛しテールよ。」

A「おい!年賀状だって言ってんだろ!ただの焼肉プロポーズじゃねえか!」

B「サーロインよりゴールイン。」

A「それやめろ!上手いこと言ったみたいな顔してるけど。」

B「ダメ?“ザブトン”1枚貰えると期待したんだけどな。」

A「もうとら年の分だけ言って黙ってくれよ。」

B「『ブラックなのはタイガーだけにしてね』。」

A「いやブラックタイガーは海老なんだよ。」

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