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【読書】ネット社会の未来像 (神保・宮台激トーク・オン・デマンド (3))

この本は、インターネットでのニュース解説動画配信番組のビデオニュース・ドットコムのプログラムのひとつである「マル激トーク・オン・ディマンド」をまとめたものです。

この本は私にとっては、「ポストモダンの社会とは」という情報を得るために非常に役に立った本でした。以前「世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて/柄谷 行人」を読んでいたので、ポストモダンについて自分なりの考え方もできておりタイミング的にもよかったです。

この本を読んで感じたのは、日本社会は「ポストモダン」という視点ではアメリカやヨーロッパとぜんぜん違う社会だということです。
 
この本では、ポストモダンへの対応として、アメリカ社会は社会の「システム化(役割&マニュアルが優位な関係性の領域、コンビニ&ファミレス的)」を是認し、その上でで社会ルールを構成する手法をとっている、ヨーロッパでは社会がすべて「システム」化されないようにするために、あらたな「生活世界(善意&自発性が優位な関係性の領域、地域商店街的領域)」を構築し対応していく手法をとっている(スローフード/スローライフがその典型例)ことが書かれています。そして、日本はどうかというと、アメリカのようにすべてを「ルール化」する社会はあまり向かないし、かといってヨーロッパ的な「生活世界」を新たに再構築するにはすでに「生活世界」が崩壊している、とどちらの選択肢もとりえないことが指摘されています。

たしかに、すべてを「ルール化」し、「あ・うん」の呼吸がない社会というのも不安ですし、かといって、昔の「ムラ」社会に戻って「世間」に縛られるのも嫌だし。そのバランスをどのようにとるのかが日本式のポストモダン社会のテーマような気がします。

宮台氏はそのひとつの方向性として、「人為的共同体」の構築をこの本で提示しています。

過去に存在したローカルな共同体の諸機能をプラスマイナス含めて分析した後に、マイナス機能を無害化しながらプラス機能を最大限発揮できるような人為的共同体を営もうというのです。(本文抜粋)

以前私は、ポストモダンの社会について「強い個人」による「積極的なコミュニケーションによる合意」により、この本で指摘されている「システム」と「生活世界」のバランスはとれるのではないか、そのような社会はインターネットの発展により可能になるのではないかと考えていました。

この本では、そのような考え方は市民的理性に過剰な期待をすることが前提になっており、機能しなのではないかと指摘しています。

私はこの本を読んで、宮台氏の指摘する「人為的共同体」とは、

1.従来の互酬性の高い共同体は存在しない、かといって個人の連携でそれを補完するのには、個人のスキル/リテラシーが高まっていない。
2.なので、共同体を新たなコンセプト/考え方のもとに再構築する必要がある。
3.具体的には「伝統的家族」から「変形家族」への移行、「不安&不信ベースの生きかた」よりも「内発性ベース&信頼性ベース」の生きかたが濃密でかっこいいというメッセージの発信、「仕事での自己実現」&「消費での自己実現」でない「非自己実現的な幸い」への価値観の移行などが考えられる。

と理解しました。

そして明日からできる自分のポストモダン対応としては、

1.今までの「仕事での自己実現(自分らしいさを職業を通じてアピール、高い報酬を得る・・・)」&「消費での自己実現(かっこいい服を着る、いい車に乗る・・・)」的な価値観だけでなく、「非自己実現的な幸い(家族・恋人とのの時間を大切にする、地域社会に貢献する・・・)も大切にすること(その比率を高めること)。
2.それを「個人」としてでバランスをとること。
3.「非自己実現的な幸い」は今までの伝統や価値観にしばられないこと(地元でなくてNPO/NGOに参加することによる社会貢献、様々な家族のあり方への理解、ネットを活用した新しいコミュニケーションを前提とした関係性への理解・・・)。
4.それを実践している姿がまわりから「かっこいい」と思われること。

が考えられるのではないかと思います。(4が一番大変かもしれません・・・)

この「人為的共同体」と「非自己実現的な幸い」は今後非常に注目されるのではないかと思います。(関連しそうなキーワードとして、SNS、NPO/NGOの人気、ワークライフバランス、URの宣伝などがすでにありますね。不安をあおるのではない「まともなビジネスチャンス」もありそうです)

いろいろなことが起こり、何かと不安な社会なので、「昔の共同体へ戻ろう」とか、「すべてをシステム化してしまえ(アメリカ資本主義万歳)」的な安易な意見や取り組みがありますが、それはすべて思考停止的な反動なのかと。

これから日本では「政治の季節」が訪れそうですが、その視点で各党の施策をみてみたいなと思いました。また、この考え方をベースにビジネスチャンスも探ってみたいとも思いました。

(2007-09-16 の記事を編集し再記載)

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