「JUDY」を見て

映画感想日記第3弾。
今回見たのはこちら。

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B087QMHL3T/ref=atv_hm_wat_7_c_7de9kC_1_8

イギリス・アメリカの合作で2019年に公開されたルパート・グールド監督による映画。
ミュージカル「オズの魔法使い」の主演で知られるジュディ・ガーランドの伝記映画。

この映画から感じ取ったキーワードは「搾取」。
正直、序盤の展開は主人公のジュディ・ガーランド(レネー・ゼルウィガー)に全く同情できず、怒りを感じていた。
宿泊費を滞納したあげく当たり散らして、しまいには子供をほっぽり出してパーティーに出かけて。
とんだ毒親だな…と思った。

しかしジュディの10代の頃のシーンを見るにつけ、ジュディがこうなるに至った背景が手に取るようにわかった。
10代でスターダムに駆け上がったジュディは厳しい管理のもと育てられ、痩せ薬を飲まされ食事も恋愛も厳しい制限をかけられ。
まさに業界に搾取され精神をすり減らし潰れていく様を見せつけられ辛かった。

次々と夫を変え、元夫から親権の譲渡を要求され。
ボロボロになっているジュディだったが、子供への愛情にはこだわりがあったようで、生活の基盤をつくるために単身渡英し勝負に出た。
何十年も蝕まれた心は完全にすり減っており、酒や薬に溺れ不眠症に悩まされ、ステージに対する恐怖でいっぱいだった。
しかしいざステージに上がるとやはりかつてのスターに観客も大盛り上がり、才能を存分に見せつけ大成功に収める。
そしてステージが終わるとまた乱れていく。
そんな繰り返しだった。

自分は教員になって5年目になり、週12~14コマの授業をこなしているが、未だに1コマ1コマめちゃくちゃ緊張している。
もちろんそんな感じは1ミリも見せずに端から見たら教師も生徒も生き生きしている授業はできていると思う。
でも職員室に戻ると身も心もボロボロで毎回廊下に出るときは強い覚悟を決めてスイッチを入れている。

そういうスイッチを入れる瞬間って人の前に立つ仕事ならあるよなあと思っていて、レネー・ゼルウィガーの演技はそこのオンオフの使い分けが絶妙だった。
まさに憑依しているかのような圧巻の演技だった。

新しい夫になったミッキー・ディーンズ(フィン・ウィットロック)が仕事の獲得に失敗し、ジュディにとっては子供たちと安定した暮らしを送るために非常に厳しい状況に。
挙句の果てにミッキーが当たり散らし喧嘩別れ。
そしてジュディが酒に溺れステージ上で客に当たり散らしトラブルに。
その後娘のローナ・ラフト(ベラ・ラムジー)と電話するがこのシーンが非常に印象的だった。
序盤のホテルでのシーンの目の演技でも若干感じていたが、表面上は母親のジュディを慕いながらも、どこか達観して気を遣っている感じがあった。
電話のシーンでそれが強烈に感じられて、ローナの方が大人だなと思った。
そして父親の家での安定した生活を望むことを告げられ、ジュディは絶望の淵に。
ミッキーとのこと、ステージ上でのトラブルのこともあったが、やっぱりジュディにとってはこのローナの態度が一番心に来たと思う。
時の流れは恐ろしいなと思った。

この映画の中で本当の意味でのジュディのよき理解者となっていたのはアシスタントのロザリン・ワイルダー(ジェシー・バックリー)だと思う。
粛々と進めジュディを無理やりステージに送り出しているように見えるが、敢えて代役を用意していることを伝えてジュディに火をつけて送り込ませたり、色々考えて接しているんだなあと思った。
最初のステージ後の「最高でした」、最後のステージ前のケーキパーティー。
すごく愛を感じた。
搾取され、プライベートも制限され、心が蝕まれる業界において、どれだけアシスタントやマネージャーが良き理解者となれるか、がとても大事なんだなと思った。
家族とも違う、恋人とも違う、友達とも違う、契約者とも違う、一定の距離を保ちながら芸能人をサポートするこの仕事。
すごく大事なんだなと思った。

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