マガジンのカバー画像

2019年鑑賞録

70
劇場、試写会、Netflix・Amazonなどの配信、有料チャンネルなどで観た映画・海外ドラマの備忘録 in 2019
運営しているクリエイター

記事一覧

『パラサイト 半地下の家族』格差だけじゃない…いびつな現代社会を映し出す傑作! 公開中

英題:Parasite ★★★★★+ 12/27~の先行公開にて。 何だったんだ、これは、すごいもの見せられた…というのが正直なところ。 前半は半地下で暮らすキム一家と、高台の豪邸で暮らすパク一家の格差を皮肉り、自虐と、度を超えた大胆さでこれでもかと笑わせる。 やっぱり、ポン・ジュノ監督のコメディセンス好きだな、と。その世界観にハマるソン・ガンホら俳優陣の演技に魅了され、著名な建築家が設計したという設定の豪邸の構図に唸らされていると、 転調してからの予測不可能な

2019年のベスト海外ドラマ+次点

今年は海外ドラマもたくさん観ました。1つのタームの終わりを実感した1年でもありました。皆様、よいお年を。 ●ゲーム・オブ・スローンズ8 最終章 シーズンとしては第4章や6章、7章あたりが面白いですが、やはり8シーズンの感謝を込めて。エミー賞でキャスト陣がずらりと並んだ時、胸いっぱいになりました。 ●Fleabag フリーバッグS2 今はフィービー・ウォーラー=ブリッジの時代。アンドリュー・スコットもよかった。 ●キリング・イヴS1-S2 こちらもフィービー。サンドラ・オ

2019年のベスト映画+次点

今年圧倒的に好きなのは、この2作『女王陛下のお気に入り』『マリッジ・ストーリー』。さらに年末になって案の定、名匠にやられました。 また、(チケットシステムに関しては言いたいことが山ほどある)池袋・グランドシネマサンシャインのこけら落としの際に2度観に行った『ダンケルク』もやはり素晴らしく、心に残っています。 ●マリッジ・ストーリー カイロ・レンだったアダム・ドライバーと、ブラック・ウィドウで単独主役を張るスカーレット・ヨハンソンがノア・バームバック監督の自伝的なストーリ

『ティーンスピリット』エル・ファニング熱唱 『ピッチ・パーフェクト』『バーレスク』好きにオススメ 1/10(金)~公開

原題:Teen Spirit ★★★★☆ 音楽映画をやってみたかったというエル・ファニングが、3か月のボイストレーニングの後に、吹き替えなしで歌唱シーンに挑んでいます。 舞台は、英ワイト島。ポーランド系移民として母子家庭で育った主人公のヴァイオレット・ヴァレンスキにとって、音楽だけが現実の世界から自分を解き放ってくれる心の拠りどころでした。 ワイト島はヴィクトリア女王が愛した景勝地としても知られていますが、そこに実際に暮らしたらどれだけ狭い世界だろうかと思います。

『ダウントン・アビー』全力でダウントニアンを泣かせにきます 1/10(金)~公開

原題:Downton Abbey ★★★★☆4.5 20世紀初頭を舞台に、英ヨークシャーの大邸宅“ダウントン・アビー”で暮らすグランサム伯爵クローリー家とその使用人たちの悲喜こもごもの生活を描いた大人気ドラマの映画化です。 私、ささやかなダウントニアン(ダウントン・アビーファン)でございます。 (通して4周くらいしかしていません) 予告編映像からも薄々わかっていたことではありますが、 あの音楽に乗って、あのお屋敷が映し出されたら、もう無敵。 復習する時間がとれ

『ラ・フィキ ふたりの夢』本物になる、ということ。 公開中

原題:Rafiki  ★★★★☆4.5 ケニアでは「よい女の子はよい妻になる」といわれるといいますが 主人公のケナとジキの願いは違います。 夢があります。 ケナなら十分医者になれるのに、“どんなに成績がよくても、女性は看護師でいい、医者の夫を捕まえればいい”という価値観が一般的です。  ジキもまた、本物になりたいと。 出会った2人が惹かれ合って、求め合っていく様が、とても自然で 美しい。 彼女たちを取り巻く色使いと同様、ビビッドでした。 しかし、そんな彼

『家族を想うとき』2010年代を締めくくるケン・ローチの本気。 公開中

原題:Sorry We Missed You ★★★★★+ 『わたしは、ダニエル・ブレイク』よりも、さらにさらに 重いものを私たちのハートにぶち込んできて、置き去りにしていきます。 今年『ジョーカー』『パラサイト』も確かに凄いものでしたが、本作もまた ケン・ローチが冴えわたっております。 フランチャイズや自営というある意味、言葉のまやかしのおそろしさ。 帰路でUberEatsの方を何人も見かけたけれど、重なってしまってさらに胸がザワつきました。 この家族、全面

「キリング・イヴ/Killing Eve」シーズン2 2人の関係の異常性と特殊性にクローズアップ! WOWOW放送中

原題:Killing Eve Season2  ★★★★★+ シーズン1のラスト、30秒後から始まるシーズン2を字幕版で。 WOWOWでは二カ国語版がスタートしています。 相変わらず面白いです。 サイコパスの暗殺者と彼女を追うMI6捜査官とのスリリングな攻防、それはもう恋と呼んでしまったほうがいいほどの濃密で刺激的な追跡劇を ヨーロッパ各国を舞台に、スタイリッシュかつクレイジーに描きます。 クリエイターは、「Fleabag フリーバッグ」でエミー賞3冠を得たフ

Netflix映画『キング』ティモシー・シャラメMeetsジョエル・エジャトンで新境地 配信中

原題:The King ★★★★☆ Netflixにて配信中ですが、アップリンク渋谷にて鑑賞。 ジョエル・エジャトンの演技はもちろん映画制作者としての才に全幅の信頼を置いている方は多かろうと思います。 今年はルーカス・ヘッジズの『ある少年の告白』もとてもよかった。 そんな彼がジョン・フォルスタッフ卿として、ティモシー演じる放蕩ハル王子の精神的支柱となっていきます。 こんなフォルスタッフは新鮮かも。(若いし) 戦争を起こしたがる輩というのはいつの世もおります。国

『イエスタデイ』歌詞まで全部覚えている、それほど愛したアーティストはいますか? 公開中

原題:Yesterday ★★★★☆ 年末に向け、書いていないものについて少しずつ書いていかねばという中、 ある映画を見て思い出し、想像以上によかったよなぁというのがこちら。 ザ・ビートルズが消えてしまった世界が舞台、以下略。 それに合わせてアレも消えてしまい、アレも、コレもない世界というのが なかなか楽しかった。 『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』「ゲーム・オブ・スローンズ」第六章でカメオ出演してきたエド・シーランも本人役、彼のマネージ

『マリッジ・ストーリー』離婚を通して「結婚」を問う…スカヨハ×アダム・ドライバーが史上最高 Netflixにて12/6より配信

原題:Marriage Story ★★★★★ 『イカとクジラ』『フランシス・ハ』『ヤング・アダルト・ニューヨーク』など、辛辣でもユーモアと温かさにあふれた作風で日本でも好きな人が多いだろうノア・バームバックの最新作。 『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウとしてお馴染みのスカーレット・ヨハンソンと『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』も控えるカイロ・レン役のアダム・ドライバーがタッグ。 結婚生活が破綻したNYの夫婦を演じます。 スカヨハは、かつて青春映画

『エルカミーノ:ブレイキング・バッド THE MOVIE』全BrBaファンに向けたジェシーの落とし前、最終章…たぶん Netflix配信中

原題:El Camino: A Breaking Bad Movie ★★★★★ 「ゲーム・オブ・スローンズ」と並んで、現代の海外ドラマを代表する傑作「ブレイキング・バッド」、最終回の“その後”を描いたNetflix映画。NetflixではこうしたTVシリーズの続編を「Netflix TV Event」と名付けたようです。 主人公となるのは、アーロン・ポールが演じたジェシー・ピンクマン。 最終のシーズン5、愛する人を殺され、脅しを受けながら囚われの身となっていた彼が

『サラブレッド』2大次世代女優が堕ちていく… 公開中

原題:Thoroughbreds ★★★★★+ アッパークラスの幼なじみアマンダとリリーが、あることをきっかけに疎遠になり、 そしてまた、あることをきっかけに距離が縮まります。 後者のきっかけは、リリーの高圧的な継父。 “無感情”という割に、他人の感情の揺らぎにはとても敏感なアマンダは 久々の再会ながらリリーが継父を憎んでいることにすぐ気づくのです。 そして、おそらく昔から自分の手は汚さずにきたであろうリリーは、 あの継父をどうしてやろうかと、考えていたとこ

『ジョーカー』Put on a happy face… 10/4(金)~公開

原題:JOKER ★★★★★ ジョーカー史上最狂…というわけではないかもしれない。 だが、最も哀しくて、切実で、現実みのあるジョーカーだ。 ゴッサムにも、ニューヨークにも 東京にも、どこかにいそうなジョーカーだ。 終わった後、しばらく言葉が浮かばなかった。 ホアキン・フェニックスの映画 独壇場、ということくらい。 そして今、10/1を過ぎてなおさら強く思うのは、 現実を見事に追い抜いてしまったのだな、ということ。 本国では厳戒態勢というのもうなずける。 あ