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盛岡のとある小さな珈琲屋で働き始めるまでの話。

珈琲が好き。
から、珈琲屋になりたい。
そう変わっていったのは、昨年の1年間が大きい。

新型コロナウイルス感染拡大で、世界中がてんてこまいで、いつもの日常が送れなくなった時、一人ハンドドリップで珈琲を淹れて飲む時間がかけがえのない時間だった。こうして珈琲は私にとって約10年ぶりに必要不可欠な存在だと認識をするようになっていった。

一度きりの人生、精一杯、今を生きよう。
東日本大震災の時でも今回のコロナでも、そう気付かされた。
改めて自分はどうなりたいのかどうありたいのか考え続けた1年間となった。

好きを仕事にできるのか?そもそも好きを仕事にするとかそういう類のものなのか?わからないけれど、
「珈琲屋になりたい」その想いは日に日に強くなっていった。

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そして、2021年4月、岩手県岩手郡岩手町にお引っ越し。
これまでは陸前高田から車で3時間かけて足を運んでいた盛岡が50分の距離になった。私は盛岡の喫茶店巡りに精を出し始めた。


珈琲は不思議だ。見た目はどれもほぼ同じなのに、飲んでみると全然違う。
喫茶店やカフェも不思議だ。メニューはそんなに大きく変わらないのに、過ごし方や店を出る時の気持ちは全然違う。
特に盛岡の珈琲、喫茶店文化は個性がそれぞれで、彩りがあり、とてもおもしろいと思った。

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ある日、私は一軒の喫茶店に訪れた。
店に入る前から、豆が焙煎される良い香りがぷんぷん。店内に入ると、年季の入ったテーブルや床、壁。椅子に座ると、珈琲豆を店員さんがしゃかしゃか仕分ける心地よい音に気づいた。
初めてのお店では私はブレンドを頼むことにしている。その店のこだわりを知れる気がするから。ここでももちろんブレンドを注文。
一口飲む。
濃厚な液体が身体中に染み渡った。身体中の細胞たちがじわじわと喜んでいた。すごく美味しかった。
店の名物カスタードプリンと一緒に食べてみた。
柔らかい甘さと深煎り珈琲の苦味がマッチする。これまた美味しい。非常に幸せな組み合わせだと思った。
またとない至福の時を過ごしていると、珈琲豆を買いに来る常連さんたちがしばしば訪れることに気づく。地元の人たちにも愛されているお店なんだなあ、本当に素敵だなあと思い、私も珈琲豆を買って帰ることに決めた。

店を出る時、珈琲を淹れてくれた店員さんに「すごく美味しかったです」と恥ずかしさを堪え、まっすぐ目を見てお伝えした。
「またいらしてください」笑顔で言ってもらえた。

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ここで働きたい珈琲の修行をしたい、そう強く思って、次の日、連絡。
紆余曲折あり、約1ヶ月後、やっとお話をさせていただけることになった。

初めて飲んだ珈琲が美味しくて忘れられなかったこと、いつか珈琲屋を開くという夢があること、みんなに愛され40年の歴史を持つこの喫茶店を私も支えていきたいと思ってることを私から伝えた。
オーナーも、一人のお客さんとして印象に残っていたようで、私の話にじっと耳を傾けてくれた。そして、ぜひ一緒に働きたいと言ってくれた。
また、偶然ではあるが、オーナーのお母様は陸前高田にゆかりのある方で、私のこれまでの活動への共感と応援をしてくださり、お母さまからも背中を押してくださった。
ご縁を感じた。
ここでなら、新しい自分に出会える気がした。

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「自家焙煎コーヒー屋 クラムボン」

珈琲で繋がる人と人、
珈琲から広がる世界。
私はこれから、まだ見ぬ濃く深い珈琲の世界に足を踏み入れることとなる。
身体中の細胞がドキドキし始めてることを感じる。
珈琲が連れて行ってくれる新しい世界が楽しみだ。

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