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会計の活かし方:もう暗記だけでは対応できない

オンデマンド講義終えることが出来ました。

さて、どんな構成だったのか、ざっと書き出してみたいと思います。

①5/7  ガイダンス(アンケートにより実施)
②5/14 決算発表、株主総会がどうなる?
③5/21 除外付適正意見に関する話(経営者と会計士の妥協を探る)見積りの問題(貸倒引当金)(政府が保証すれば引当金の見積り額は甘くてよい?)決算簡易分析(JAL、ANA、トヨタ)新型コロナウィルス対応に関する情報開示(クライシス・コミュニケーション)

*最初の振り返り:取っつきやすい講義を展開しようと思って、新型コロナウィルス関連の話題を調べて展開しました。この当時はやっぱり決算関連の話題が多かったですね。緊急事態宣言下で教員も学生も気持ちが慌ただしかったのを覚えています。この時は、決算などの関連する企業の情報をまとめるのが楽しかったですね。

④5/28 減損会計~処理解説編、事例編、現在価値と金利の決まり方
⑤6/4 減損に関する補足、クライシスコミュニケーション、決算発表の見方:決算発表の見方(任天堂、ホンダ、スズキ、ソフトバンク)、オリエンタルランドの決算分析
⑥6/11 のれんと減損に関する話、アカウンタビリティと持続化給付金の再委託問題、民間の力をどう考えるか:会計の視点からPFI、指定管理者制度を考える、決算簡易分析:電通グループ
⑦6/18 株主総会とプロキシーファイト、減価償却のなぞ(なぜ減価償却の会計処理は誕生したのか?)、不正の動機付け、フォレンジック会計、決算簡易分析:ヤマト VS 日本郵便 決算簡易分析(宅配便編)

当時の決算関連ニュースとして話題にあがっていたのが、『減損』に関する話でした。コロナの影響で固定資産、のれんを含めて減損で難しい判断が求められる、ということが多く、調べていて面白いテーマでした。この時は、講義内容とは別に、決算の分析を行い、なるべく事例を通じて会計を身近に感じてもらおう、としていたのを思い出します。


⑧6/25 概念フレームワーク、企業会計原則の基本を理解しよう、資産除去債務を通じて企業の環境債務を知る、決算簡易分析:サンリオの決算分析
⑨7/2 資産除去債務(後半:事例編)IFRS適用企業と日本基準適用企業の比較、金融商品会計基準:なぜ時価評価が必要か、星野リゾートの分析(16分)
⑩7/9 金融商品会計基準(中編)3つの論点から考えてみよう、リース会計(前半:リース業界の話を中心に)
⑪7/16 リース会計基準(使用権モデル)、金融商品会計(後半:時価評価と未実現損益の計上:IFRSと日本基準を比較しながら)、キャッシュフロー会計(倒産企業、リース企業を事例に)

この辺りに来るとトレンドのトピックスだけではなく、財務会計における本質的な問題に切り込んでいきました。難易度も高く、どうやって短い動画で説明するかな・・・と悩み苦しみました。知識としては知っていてもそれを短い時間で説明するには相当な工夫がいる、そのことを痛感したタームでした。この辺りからかなり授業時間が掛かるようになりました。


⑫7/22 収益認識(収益認識・測定のパラダイムシフト)
⑬7/30 税効果会計(確定決算主義、課税所得計算と税引前当期純利益の違いを知る)、連結(連結の範囲:連結か、連結外か?の判定の話)
⑭8/6 退職給付(オンバランス化されると負債が減る;退職金・企業年金を巡るお話)、税効果会計(後半:繰延税金資産の回収可能性)、連結(非支配持分と親子上場問題)、持分法(関連会社、ジョイントベンチャー)、総括(財務会計の現在とこれから、認識×測定、表示×開示で論点を整理する)

そして最後は走り切った形でしたね。収益認識は新しい基準でおおよその内容は知っていたものの、事例を調べるのが少々大変でした。これからの基準ですしね。ですが、この辺りを避けていると学生にとっては中途半端になってしまいますし、何とか頑張ろう!とやりました。

スライド1

最後のまとめのところです。

会計の論点整理の仕方として、認識、測定、表示、開示に分けて考えておくのがよいと思います。

各基準で独立の問題もありますが、多くの論点は重複しています。ですので、全体をみるときはこうした整理をして、「今何の問題を話しているのか?」を教員も学生も考えておくことが必要ですね。

スライド2

私見ですが、会計の問題は、認識×測定、表示×開示のセットで論じられることも多いと思います。*もちろん切り離して論じられることもあります。

特に認識×測定の重複議論は多いですね。認識×測定×表示を一つのセットで捉えて、開示は別に考えてもいいかもしれません。

スライド3

会計処理の流れから考えると、こうした感じですよね。

認識⇒測定⇒表示⇒開示という流れになります。

会計上の論点の多くは、認識、測定に集中していると思いますが、今後は、開示に注目すべきでしょうね。

スライド4

そして私の書いた最後のスライドです。

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時々、財務情報の重要性が低下する(有用性は低下しているというエビデンスはあります)、という議論がありますが、どうもしっくりこないんですよね。

上のスライドでも書きましたが、ファンダメンタルズな情報を提供する上での会計の発展は目覚ましいものがある、と振り返ってみて感じます。

もちろん、完ぺきではないです。現実を完全に写し取るなんてことは出来ませんから。となると、財務情報により担保されているから、非財務に着目が移ってきた、といえるのではないかな、と感じています。

とはいえ、走りながらの講義ですが、改めて分かったこともあります。

各基準には考えておくべき、抑えておくべき論点がある、ということです。

そこを抑えずして暗記だけで対応するのはもう無理なんだな、ということです。

しかしながら、資格試験においてはいまだに論点の暗記が行われているというのが現状ではないでしょうか?時間的な猶予を考えるとそれはやむを得ない側面もありますね。

ですが、研究者としてはこうした論点を包括的に考えて、「財務会計とは何か?」を常に学生に問い続けられる視点を提供する、ということが必要なんだろうと思います。

研究を行っていく上でも常に会計制度全体も意識する、ということが大事である、と改めて感じました。

学びの多いオンデマンド講義でありました。さて、これからはこの講義の内容を書きおろしていく作業に取り掛かります。

その作業の方が・・・大変かもですね。頑張ります。

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