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日本郵政の今後を考える(2)必要とされる広義の生活保障システムの考え方

1. 生活保障システムとは?

生活保障システムという考え方はご存知でしょうか?

水島(1987)では、生活保障システムとは,疾病・傷害・老齢・自然災害・失業など個人が生活するなかでさらされることになる様々なリスクから個人を保護・保障する諸制度を一つのシステムとして捉えています。

水島一也編(1987)『生活保障システムと生命保険産業』,千倉書房

私の問題提起は、郵便局ネットワークは、この生活保障システムの1つとして考えうるのか?

ということです。

結論を先に言えば、「生活保障システム」の1つとして再定義すべきではないか?ということです。


1.狭義の生活保障システム

生活保障システムというと従来であれば、社会保障システムと同義であると捉えられることもあります。

通常、保険、社会保障システムの文脈で用いられる場合は、生活保障システムの3層構造(公的保障、職場保障、私的保障)の中でとらえられています。

公的保険を含む公的保障がベーシックな部分を支えています。それを職場保障、民間の保険事業などから提供される私的保障が補完しています。

よくちゃんと正社員になった方がいいよ?

というセリフ。

これは働いていることで受けられる様々な保障があるからにほかなりません。

いわゆる福利厚生です。

福利厚生には会社が任意で提供する部分と法律で定められている部分があります。

法定福利厚生とは、使用者側が、従業員、その家族の健康や生活の福祉を向上させるために、賃金以外のサービスを提供することが義務付けられています。一般的なものとして、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険などがあります。使用者はこれらの保険料の半額(または全額)を従業員の代わりに払う必要があります。

私的な福利厚生としては、家賃補助、社員寮、資格取得支援、社員旅行もあるでしょう。

また職場保障として大きいのは、退職金や企業年金もありますね。

最近トレンドになっている社会的包摂の考え方は、やや広義な考え方をとりながらも、生活の保障、リスクをケアするという考え方が中心でしょう。

社会的包摂と生活保障の文脈の中では、貧困・失業、差別などの社会的排除、経済社会全体として脆弱になっていくという危機感の下に、家族や企業、コミュニティ、非営利協同組織(NPO)などの制度・慣行と政策との関連性が重視されます。


3. 必要とされる広義の生活保障システムの考え方

生活保障システムをこうした狭い範囲で捉えることも、論点を絞り込む上では有用です。

ただし、私たちが生活していく上で、生活保障システムとは、公的な給付や医療福祉サービスだけではないはずです。

私たちが生活する上でのインフラも含めて捉えるべきではないでしょうか?

「生活が保障される」上で必要なものは何でしょうか?

電気、水道、ガスなどの基本的な公的なインフラが整っていること、学校にいけること(教育機会の提供)、様々な機会が平等に提供されること、などではないでしょうか?

そして、ものがちゃんと届く

ということもやはり一つの公的なインフラと捉えられないでしょうか?

メール、SNSの普及により手紙は減っています。

何かあった時、頼りになるのは実際の手紙だったりすることもありますよね?

また、今回のマスクの配布においても配達を可能にするのは長い間、維持されてきた郵便局ネットワークですよね?黒猫さんではない訳です。

もしこのネットワークがなければ、政府は必要な支援の物資を安全に届けることもできません。正式な通知を送ることもできません。

少子高齢化に伴い各種インフラの維持が難しくなっています。

郵便局ネットワーク、つまり、ものがちゃんと届く、というネットワークをどのように維持していくのか?

生活保障システムの観点から改めてその事が問われています。



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