IFRS17を巡るゴタゴタ

IFRS17「保険契約」は知る人ぞ知る、マニアック中のマニアックな基準です。国際基準に沿った保険会社に関する会計処理を定めた基準です。一言で言えば、保険会計全般は、難易度が高く、複雑で理解しにくい…です。ですが、案外、大事な基準でもあります。というのも保険会社の会計だからです。

この基準が適用されることで、保険会社の運用にも影響ある基準かも…といえば、分かりますよね?日本生命は70兆円、第一生命ホールディングスで50兆円以上の資産を保有してますから。まぁ日本はIFRSが強制適用でないので、関係ないといえば関係ないのですが、国際基準が走り始めると国内の基準にも実質的に影響されるので、無視できるわけではないです。

でそうした前振りは置いておいて、そのIFRS17が適用を2021年から2022年に延期するという事と、基準が修正されるというお話が出ています。

IFRS第17号「保険契約」の改訂に関する提案の微調整と最終化(IASB April 2019 meeting)

https://home.kpmg/jp/ja/home/insights/2019/04/board-meeting-flash-19-04.html

*最新動向についてはIFRS17プロジェクトのページ(英語)を参照していただくのがよいですが、日本語のページでも情報はある程度拾えます。

このIFRS17は、

「基準公表⇒適用に向けた準備⇒基準適用」

というプロセスが行われるはずなのに、

「基準公表⇒適用に向けた問題が噴出⇒再度修正案を公表」

という何ともゴタゴタしたことになってます。

なぜ、こうした事態になってしまうのか?辛口に言えば、基準適用に向けたプロセスに問題があるのだと思います。色々な意見を取り入れながら、関係者も努力されていると思うのですが、見切り発車で基準公表し、修正案を公表しないといけない状況に陥ることは、基準そのものの信頼性を低下させる事態になりかねません。

この辺り、理論的な整合性などのチェックが十分であったのか?実務上の問題点は十分に洗い出していたのか?基準設定者にそうしたことに精通した人がいたのか(会議は何度も行われたはずなのに、なぜ見落としがあったのか?)という事が問われている気がします。

と同時に理論的な点において貢献できるのは、我々研究者ではないか?、とも感じています。

つまり、研究者としてこうした状況を打開するために切り込んだ意見を言えるように研鑽を積まないと・・・とも感じています。引き続きウォッチして、微力ですが、この分野に貢献できるように取り組みたいと思います。研究者はどこまでも無責任な存在でもありますが、そのことを自覚しつつ、切り込んでいけるだけのもの(見識)を持ちわせていることの重要性を日々感じています。

大先生から、「この分野は上野君がもっとしっかりやれ!」という激励も受けています。自戒して頑張ります。


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