日本郵政の決算分析(中編)ユニバーサル・サービスについて考えてみる
中編では、日本郵政が提供を「義務」づけられているユニバーサルサービスについて触れます。
日本郵政は、「日本郵政」だけに適用されている郵政民営化法の下で運営されています。その中で様々な制約が課さられています。最大の制約の一つがユニバーサル・サービスの提供義務です。
4. ユニバーサル・サービスの提供義務
ユニバーサル・サービスとはそもそもなんでしょうか?ユニバーサル・サービス(英語: Universal service)は、一般的には社会全体で均一に維持され、誰もが等しく受益できる公共的なサービスの全般のことを指します。
例えば、電気、ガス、水道から放送、郵便、通信や公的な福祉と介護などでの、「地域による分け隔て」のない便益の提供義務、です。
郵便代ははがきを貼るだけで、どこでも同一料金で送ることが出来ます。ただし、はがきとは異なり、ゆうパックでは、北海道、沖縄に送る場合、余分にお金かかったりしますが、これも距離に見合ったお金が取られているだけで特別に高額な料金が発生しているわけではありません。
市場主義の考え方でいえば、過疎地への郵便は非効率な訳ですから特別に料金を高くすべき、とする考え方もありかもしれません。
ですが、そうはなっていません。
また田舎の郵便局は、あまり需要がないから整理したほうがいい、とする考え方もあるかもしれません。ある程度そうしたことは行われているかもしれませんが、極端に統廃合が進められている話は聞きません。
それは全国にあまねく郵便の公益性を保障するためにほかなりません。
ただ、郵便においては少々難しいのは、水道、電気、ガスと違って、なくても生活が困らない、ような話が時々ありえます。
一方で、銀行の店舗の統廃合は進んでいます。
銀行は統廃合が進んでいるのに郵便局はなぜ?
ということですね。
繰り返しになりますが、日本郵政グループは郵政民営化法という法律に基づき運営されていいます。そして、同グループが、ユニバーサル・サービスを提供することは法律に基づいて課せられている義務です。
日本郵政民営化法第5条ですね。
日本郵便は、その業務の運営に当たっては、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務を利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的にかつあまねく全国において公平に利用できるようにする責務を有することとされております。(法第5条)
郵政民営化法(a) 趣旨 郵政民営化の基本理念、基本方針等を定めるとともに、公社の解散に伴い、公社の機能を引き継がせる新たな株式会社(以下、本③において「新会社」といいます。)の設立、新会社の株式、新会社に関して講ずる措置、公社の業務等の承継等に関する事項その他郵政民営化の実施に必要となる事項が定められております。2012年5月8日公布の郵政民営化法等の一部を改正する等の法律の施行に伴い、郵政民営化法が改正され、郵便サービスのみならず、貯金、保険の基本的なサービスを郵便局で一体的に利用できるようにするユニバーサルサービスの確保が義務づけられ、また、当社が保有するゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の株式については、その株式の全部を処分することを目指し、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の経営状況、郵政事業に係る基本的な役務の確保の責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとされております。
(同社の有価証券報告書より)
少し経緯を整理しておくと・・
準備段階として日本郵政公社の設立→日本郵政公社の解散と同時に株式会社化→上場
という手順を踏むわけですが、その過程で、平成19年10月1日でユニバーサルサービス義務がなくなっています。
この辺りは、
みずほリポート -(みずほ総合研究所 2016/03/28 )
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/report/report16-0328.pdfのまとめがわかりますいです。
このように平成19年10月1日に規定がなくなり、そして平成24年10月1日に復活しています。
このユニバーサルサービスの提供義務が課せられているということを考えずに郵政グループの分析をすることはできません。
効率化とユニバーサルサービスの提供は二律背反することもありますし、どうしても限界があります。
こうした制約がある中で、どのように運営しているのか?
それが日本郵政の決算を読み解く上で非常に大事になってきます。
余談ですが・・・・
思えば、大学の構内に郵貯のATMがなくなったのも平成19年10月1日~平成24年9月30日の間だったかもしれません。
この間、あちこち合理化を進めていたような記憶がありますね。
大学でも郵貯のATM復活してくれないかな笑
後編は、これまでのことを踏まえて決算分析をしていきます。
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