「取り合えずSDGs宣言」に感じる違和感と危険性:ボトムアップアプローチの必要性
SDGs(持続可能な開発目標)、随分の市民権を得てきた気がします。
共通した問題を語られるフレームワークがある。
そのことにSDGsの大きな意味と貢献価値があります。
SDGsでは包括的な問題、目標設定が行われています。
環境、社会、経済に関連する考えうる問題・課題を包括してるSDGSでは17の目標に169のターゲットが結び付けられており、具体的な行動が促されています。
さて・・・それと同時に感じること。
SDGs宣言なるものです。
SDGs宣言とは、企業や学校などの団体が「SDGs(エスディージーズ)(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」に取り組むことを誓い、社内や社外に公表する宣言書を指します。
宣言そのものはよいことだと思いますが、問題は何をしたいのか?
ということを明確にしないといけないのではないでしょか?
他も宣言しているから、とりあえずうちも・・・のノリで行うことには違和感を感じます。
宣言した内容に対して責任を負い、コミットしていかなければならないのではないでしょうか?
というのも表面上の宣言をしてとりあえず格好をつけたい!では意味があるのでしょうか?
問題は、
何をするの?
ということをきちんと考えていくことではないでしょうか?
そして、「何をするの?」をトップが考えて、下の者に「やれ!」といえばよいのでしょうか?
トップが恰好つけた状態で宣言をして、組織の人間はついてきていますか?
ということです。
目標設定に向けて組織の人間をコミットさせていない状態で、
トップが「はい。SDGs宣言します!」と言っているケースが多いのではないでしょうか。
レポートは日本企業の特徴として、ボトムアップで推進を図った後経営陣の認知度が高まりPDCAで回してトップダウンで構築、ステークホルダーに普及していくプロセスをたどっていると分析している。
これはやや古い調査ですが、本質は変わっていないと思います。つまり、あ、トップがSDGs宣言をバタバタと、「とりあえずやることが大事」というノリでしてしまっているのではないか、ということです。
そうした宣言について、組織(下)の人間はどう思うか?
「勝手にやっているだけ」と思い、動かないのではないでしょうか?
そして、SDGsでこんな宣言したから○○やれとトップがいって命令として降ろしたところで、それはもうSDGsハラスメントではないでしょうか?
業務もそれで増えたら目も当てられません。
SDGsは人の視点に立ったフレームワーク、です。
にも関わらず、社会、組織の人間のことも考えないでSDGsを行っているのは本末転倒ではないでしょうか?
基本理念をしっかりと理解し、社員に教育を行った上で、目標設定を全員で考えて行うべきでしょう。
つまり、トップダウンだけでなく、ボトムアップ、つまり組織の下から意見を構築して、取り組むべき目標設定を行う必要です。
こちらの記事に問題点の核心が書いています。
IGESの森秀行所長は「ボトムアップとトップダウンの融合型アプローチが必要。PDCAを回せば社内での理解が進むだろう」と説明した。さらに「『社会のニーズ(SDGs)=ビジネス』という考え方は大変重要だと思う。欧米ではそういうスタンスで進めている。行政は明確なビジョンや実施体制の構築が必要で、自治体でもSDGsを総合計画へ取り込むべき」と、企業だけでなく、社会全体でSDGsを推進することを提言した。
*公益財団法人地球環境戦略研究機構(IGES)の説明は以下を参照されるといいと思います。地球環境問題についてかなり豊富な情報が集約されていますね。
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)は、「地球環境戦略研究機関設立憲章」の趣旨を踏まえ、新たな地球文明のパラダイムの構築を目指して、持続可能な開発のための革新的な政策手法の開発及び環境対策の戦略づくりのための政策的・実践的研究(戦略研究)を行い、その成果を様々な主体の政策決定に具現化し、地球規模、特にアジア太平洋地域の持続可能な開発の実現を図ることを目的とし、1998年3月に日本政府のイニシアティブと神奈川県の支援により設立されました。当初は財団法人として設立されましたが、2012年4月に公益財団法人に移行しました。
国連グローバル・コンパクトの日本の取り扱い団体ですね。
国連グローバル・コンパクト(UNGC)は、各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組みです。UNGCに署名する企業・団体は、人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止に関わる10の原則に賛同する企業トップ自らのコミットメントのもとに、その実現に向けて努力を継続しています。
UNGCは、1999年の世界経済フォーラム(ダボス会議)の席上でコフィー・アナン国連事務総長(当時)が提唱し、潘基文現国連事務総長も明確な支持を表明しているイニシアチブです。企業を中心とした様々な団体が、責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに自発的に参加することが期待されています。2000年7月26日にニューヨークの国連本部で正式に発足し、2004年6月24日に開催された最初のGCリーダーズ・サミットにおいて腐敗防止に関する原則が追加され、現在の形となりました。
現在(2015年7月時点)では世界約160カ国で1万3000を超える団体(そのうち企業が約8,300)が署名し、「人権」・「労働」・「環境」・「腐敗防止」の4分野・10原則を軸に活動を展開しています
グローバル・コンパクトはSDGsよりも古く、宣誓にも近い10の原則に署名する点に特徴があります。内容も環境だけでなく、「人権」「労働」「腐敗防止」などの社会をより意識した宣言になっています。
個人的にはSDGsよりはこうした老舗のフレームワーク(原則)の方がよりシャープで、やるべきことが明確化されている印象があります。
それもそのはずで、SDGsは包括的なフレームワークを取ることで、すべての問題を同時並行的に解決していこう!という野心的な目標です。
SDGsは目標が多すぎて取り組みにくいと感じている組織はグローバル・コンパクトの原則やそれに関する具体的な取り組みなども参考にしてみるといいかもしれません。
話が逸れました。
では具体的にどうすばよいのか?
意識すべきは従業員エンゲージメントでしょう。
従業員エンゲージメントとは、従業員が企業の理念やビジョンを理解し、コミットしている状態で、つまり貢献意欲を取り組めている状態です。
こうした調査でも分かるようにエンゲージメントは企業の業績を高めるために重要とされています。
何が言いたいといえば、SDGs宣言をする(もしくはグローバル・コンパクトの宣言に署名をする)場合、企業理念や目標とのすり合わせが必要であり、かつそれに対して従業員との対話を心がけて、コミットさせていく枠組みを入れなければ、SDGs宣言をすることで、企業理念とのズレが生じて、従業員エンゲージメントを低下させてしまう可能性がある、ということです。
SDGs宣言したことで従業員エンゲージメントが低下する・・・そんなシャレにならないような状態にならないように、取りあえずSDGs宣言に要注意ですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?