見出し画像

自律性の2つのタイプ:アニマルスピリットをどう考えるのか

前回の記事で偽と真の自律性の話をしました。そしてその中で偽の自律性で社会的に大きな成果をあげている人もいることにも触れました。

この点は自律性を考える重要な点なのでもう少し深掘りしたいと思います。というのも割合だけ考えるならば偽の自律性で活躍されている人の方が多いのではないかと思うからです。

アニマルスピリットという言葉ご存知でしょうか?

アニマルスピリットは、あのジョン・メイナード・ケインズが述べた言葉として有名です。それをノーベル経済学賞を受賞したアカロフ・シラー両先生が行動経済学の知見から現代流にアニマルスピリットを解釈したのが本書になります。

アニマルスピリットはネガティブにもポジティブにも取りうる言葉です。

人は経済活動を行うにあたって常に合理的な行動をするのではなく、自分自身の野望(望み)のために非合理的な行動をします。それが企業家によるイノベーションの源泉になりえ、経済の発展にも重要な役割を果たします。それと同時に不正行為も、自身の目的を達成しうるために犯すことがありえます。

こちらの続編もありますね。

要するに経済の世界、ビジネスの世界はアニマルスピリットをもった者同士の騙しあいともいえます。私がこうした話をするのは、偽の自律性を持った人が多くいる、という避けがたい事実です。

このことをまず認識したうえで、私たちは生き方を選択していかなければなりません。つまり、自分自身の立身出世(自分が有名になることや報酬を得る事)のために人を押しのけて自分がナンバーワンになるという生き方か、自分自身の知的好奇心や社会的貢献などの思いに基づき行動する生き方か、ということです。

前者のタイプ、つまり立身出世を目標にするタイプも人と協調することがないわけではありません。ですが、多くの場面でギブ&テイクをベースとしながら、自分にとってプラスになるかどうかで判断して行動するでしょう。一方で、後者のタイプは、自分の興味関心、社会的使命感で行動していますから、出世報酬や競争を重視していません。

このことは利己的、利他的という言葉で分けられるかもしれません。ですが、前者のタイプは当てはまりますが、後者のタイプはもともと、『そうしたことを意識していない』ので利他的ということすら当てはまらないと思います。

デシ先生は前回のノートでも取り上げた「人を伸ばす力」の中で次のように述べています。

「自律性とは、自己選択の感覚や柔軟さ、自由さを感じながら、意思を持って何らかの行為を行うということである。それは、自分の興味や価値観と調和して責任ある行動をしようとする意思を感じることである。」(同書(訳書)、190頁)

「より大きな富と権力を求めて戦い続けている、野心的で競争的なビジネスマンは、粗野な個人主義であるかもしれないが、自律性の見本ではない。彼らの目標追求が、たとえ個人の内部から発したものだったとしても、それが圧力をかけられ、強要されたものである限り、個人的であるが自律的ではないのである」(同書、191頁)

もちろん、真の自律性に基づく理想的な社会を実現していかなければなりません。しかしながら、偽の自律性(個人主義)がもつ強力なパワーが真の自律性を持つ人の前に立ちふさがることがある、ということも忘れてはなりません。

「あの」アメリカの大統領に代表されるように、すさまじい攻撃的な勢いがそこにはあります。そこに対抗するためには真の自律性を持つ人同士での連帯(協調)が必要でしょうし、同じ土俵(攻撃的にならず理性的に対応していく)ということも求められるのだと思います。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?