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他者に共感し、自分の感情に従い行動していく:栗山さやかさん講演会・座談会

旅をする中で、困窮している人たちに出会ってしまったら、あなたはどうしますか?私は、正直分かりません。僅かばかりの寄付をするだけ、かもしれません。そうした人々に対して無関心でいられず、実際の行動をおこしたのが栗山さやかさんです。

今回、栗山さやかさんの講演会・座談会で私が感じたことを思うままに書いてみようと思います。


1. 栗山さやかさんをご紹介していただく

2020年1月23日に静岡県立大学草薙キャンパスで栗山さんの講演会・座談会を開催しました。リツアンSTC・野中社長にお願いして、栗山さんをご紹介頂きました。野中社長と栗山さんは野球部の先輩後輩の間柄です。そのご縁で、リツアンSTCは栗山さんの活動を支援しています。

今回、私も多くの人たちに、栗山さんの活動を知ってもらいたいと思い、公開講座の形で、さらに生中継(やわラボさんのお仕事です!)の手配と援助もリツアンSTCさんにお願いしました。平日の日中にも関わらず、地元静岡を含め、西は名古屋、東は神奈川からも多くの皆さんが参加してくださいました。これには栗山さんの活動に関心のある人がこれだけ多くいるのか!ということに驚くとともに、皆さんに感謝申し上げます。

2.栗山さんの人生を変えた出来事と出会い


栗山さんは、静岡県御前崎市出身で、東京の短期大学を卒業後、109ショップの店員、店長をされていました。2005年に小学校からの親友が乳がんで亡くなったことをきっかけに、これまでためていた貯金を使って2006年バックパッカー世界旅行に行きます。講演の中ではあまり触れられませんでしたが、この「親友の死」が、彼女の生き方を大きく変えた出来事であるのは間違いないでしょう。そして、栗山さんは旅に出ることを決意します。これまでの生活を一旦休止して。ここで世界旅行に行かなかったら、栗山さんはまったく違う人生を歩まれていたかもしれません。
 

世界を一度見て回りたい。そう思った栗山さんは世界50か国以上をバックパッカーとして回りました。その中には、今は紛争地域となっているシリアも含まれています。多くの国で沢山の素敵な友人と出会いました。そして、何かに導かれるようにアフリカ・エチオピアで、ボランティア活動に従事する機会を得ます。その病院、施設で多くの出会い、そして悲しい別れも経験した後、ケニア、タンザニア、ザンビア、マラウィ、モザンビーク、南アフリカ、スワジランド、ジンバブエなどアフリカ諸国を旅しながら、施設、病院を見学、手伝いしていきます。その中で、子ども、女性、老人、障碍者の人たちの現状を目の当たりにすることになります。

栗山さんは、「出会ってしまった」のです。物質的な助けを必要としているだけでなく、精神的な助けを必要としている人たちに。

3.もう一つの転機 

もう一つの転機が来ます。栗山さんは、モザンビーク北部で地域の支援活動を始めようとするNPOのメンバーとなり、現地でより本格的な活動をするための準備を始めました。ところが、そのNPOが諸事情で解散になってしまったのです。しかし、現地のNPOがなくなるということは、その地域での社会的機能も失われるということです。多くの人が苦しむことになるというです。

その折、栗山さんがアフリカでの体験を記していたブログを、ある企業が携帯で配信してくれたことをきっかけに、収益を得ることをできました。栗山さんはそのお金を厳しい生活を送る現地の人たちのために全て使うことを決め、自分の貯金と合わせ、NPOアシャンテママを立ち上げ、現地で教育、医療支援の活動をより本格的に開始しました。それが2009年のことです。2006年にバックパッカー世界旅行に出て、3年が経過していました。

4.栗山さんから私たちが学べること

栗山さんは単なる支援者ではありません。現地での活動の傍ら勉学を継続し、「医療技術師」の資格を2014年に取っています。日本の親友、亡くなったエチオピア、モザンビークの子どもたちの写真を置いて、まだ生きていて、自分のしたい勉強ができることに感謝しながら、学校とNPOの仕事を両立しながらも夜一人でも勉強したそうです。  

よく社会的な貢献意識が大事、といわれます。SDGs(持続可能な開発目標)が登場し、日本でも社会的な課題(環境、貧困など)を改善するための取り組みを加速させていこうという機運もあることはよいことだと思います。ですが、時に壮大な目標は置いておいて、まず「目の前の人に共感し、関心をもつこと」ことも大事なのではないでしょうか。そして「自分の感じたこと」に従い、行動を積み重ねていくことが、最終的に大きな目標を達成することに繋がるのではないでしょうか。

栗山さんは最後におっしゃいました。

「まず、皆さんの周りの人たちを大事にして欲しい。そして、少し余裕があったら、困っている人たちのことも考えてもらえれば嬉しい。」

私たちも始めてみませんか?周りの人たちに共感し、関心をもつことを。そして、自分の感じたままに行動してみましょう。それが世界を平和にする第一歩かもしれません。


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  <座談会の最後まで同席された出席者の皆さんとの記念写真>

*本文は栗山さやかさんの講演・座談会を通じて、私が感じたことを書いたものです。栗山さんご本人の講演の内容については以下のリンクからアクセスして頂ければ視聴することができます。

「国際ボランティアから見えてくる世界 越境する日本人」(リツアンSTC公式チャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=eltivAo8fKIhttps://www.youtube.com/watch?v=eltivAo8fKI

(文責:上野雄史)


(補足)

栗山さんは一人ひとりの寄り添った支援活動をされています。こうした活動は、学術的にはEmotional supportと表現できます。今、Emotional supportに着目したケアや支援が注目されており、その効果も科学的に実証されています。小林登先生は、子どもに対する「優しさ」と体重増加に関係していることを明らかにした研究を紹介しています。またYoshikawa and Beardslee (2012)の研究では、家庭の貧困と子供のメンタル、健康状態に関係があることを示しています。認知症のケアとして注目されている「ユマニチュード」は、見る・話す・触れる・立つの4つの原則で成り立つ、人との人の関係に着目しています。

物質的な支援はUNHCRなどの国際機関が担うことが出来ますが、Emotional support(感情的な支援)までは手が回らない、というのが現状です。こうした中で、民間のNPOが担う役割は物資的な支援だけでなく、Emotional supportという点で非常に大きいと思われます。

(参考文献)
1. 小林登「「優しさ」を科学する」チャイルド・リサーチ・ネットhttps://www.blog.crn.or.jp/report/01/074.html
2. 本田美和子, ロゼット・マレスコッティ, イヴ・ジネスト『ユマニチュード入門』医学書院、2014年。
3. Yoshikawa, Hirokazu and William Beardslee, “The Effects of Poverty on the Mental, Emotional, and Behavioral Health of Children and Youth Implications for Prevention,” American Psychologist , 67(4):272-84,May 2012 

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