【六枚落ちマニュアル】第2部第5章第4節 四間飛車定跡 ステップ1-2

◆本節では、四間飛車定跡ステップ1-2を解説します。(ステップ2を作成中に上手の好手が見つかった関係でステップ1を改訂して解説しています)

前回ステップ1―1では、43図の▲6四歩に対して2)△5五歩を解説しました。この1―2では残りの2つを順に解説します。1)△同歩はのちに解説しますので、まずは3)△5三金(参考8図)から。

この△5三金は△5五歩と銀を取るよりも6三のマスを守ることが大事という考え方です。6筋の防御力が上がり、攻めるのが大変に見えますが、ここで下手は▲7七桂と跳ねた手を生かして▲6五桂!(参考9図)が好手です。

ここで▲6五桂と跳ねるために▲7七桂と備えておいたようなものです

参考9図は、駒が入り乱れてややこしい局面です。この局面を上手の立場で見ると、次の下手の手番で「▲5三桂成」と金を取りながら桂を急所になりこまれるのが一番嫌です。よって△6四金(参考10図)と金をかわします。

今度は下手の立場で局面を見ます。「▲6四銀」で金を取る手、そして「▲7三桂成」で銀を取る手、どちらも良い手です。ただし▲6四銀は「△同銀」で目標にしている銀に逃げられてしまう面もあり、本マニュアルでは▲7三桂成(参考11図)を本手順とします。

ここも、上手は「銀を取る△5五歩」と「成桂を取る△同金」のどちらも良い手です。ただし成桂を取っておかないと次の下手の手番で▲7二成桂とただで金を取られてしまいますので、△同金(参考12図)と成桂を取る手を本手順とします。

下手はガンガン攻めましょう。▲6四銀(参考13図)と金を取ります。

上手は△同歩(参考14図)と銀を取ります。

ここでは▲6五歩や▲5三銀なども良い手です

ここで下手はいろいろな攻め方があります。その上で本マニュアルでは▲同角!(参考15図)と勢いよく攻めます。

この▲6四同角は平手でもよくある攻め方です。角と金の交換になるのですが、飛車の活用を重視した攻め方です。上手は△同金(参考16図)と攻めます。

下手はもちろん▲同飛(参考17図)と取ります。

これで戦いが一段落しました。お互い取った駒を整理すると「金金銀対角銀桂」の交換、よって「金金と角桂の交換」です。駒の損得としてはやや下手が駒損ですが、「上手陣を弱体化させたこと」「次に必ず飛車を成りこむことができる」の2点が大きく参考17図は下手優勢です。では43図に戻ります。

43図で2)△5五歩3)△5三金のいずれも下手優勢になることが分かりました。それでは本手順の1)△同歩(44図)の解説に進みます。

この△同歩は、突かれた歩を取る自然な手です。
下手は▲同銀(45図)と歩を取り返します。

上手は△同銀(46図)と取ります。

ここは下手の岐路です。▲同角と▲同飛、二つの取り方があり、どちらも良い手です。どちらを本手順にするか悩みましたが、本マニュアルでは▲同角(47図)を本手順とします。

この▲同角は、次の下手の手番で▲9一角成と成りこむ手を狙っています。つまり、上手が△6三歩と打てば下手は▲9一角成で成功です。そこで上手は△7三銀(48図)と受けます。

この△7三銀は▲9一角成を受けつつ角取りにする積極的な受けです。ここで下手は▲9七角といったん引く手も良い手ですが、本マニュアルでは一気に攻める▲同角成(49図)を推奨します。

この▲同角成は角銀交換の駒損を覚悟した攻め方です。上手はもちろん△同金(50図)と取ります。

これで角と銀の交換、下手は駒損です。それを承知で銀を取ったのは、下手に狙いがあるからです。ここで▲6二飛成(51図)が厳しい攻めです。

この▲6二飛成は王手+金取りです。上手は王手を受けるしかないので△3三玉(52図)と逃げます。

上手が玉を逃げたので、下手はもちろん▲7三竜と金を取る手も良い手です。しかし本マニュアルでは一気に寄せを目指します。まずは▲2二銀(53図)と打ちます。

この▲2二銀に対して、上手は△2三玉か△2四玉、どちらかに逃げるしかありません。本手順で△2三玉を解説しますので、先に△2四玉(参考18図)と逃げたらどう攻めるかを解説します。

この△2四玉に対して、下手は▲7三竜と金を取る手ももちろん良い手です。しかしここは▲3二竜(参考19図)がスピードのある攻めです。

これで上手玉の逃げ道を減らし、次の下手の手番で▲1五銀と打つ詰みを狙います。これで下手勝勢です。では53図に戻ります。

あらためて53図。△2四玉と逃げる手には▲3二竜が良い手でした。では△2三玉(54図)の解説に進みます。

この△2三玉は、玉を逃げつつ場合によっては▲2二銀を取ってしまおうという手です。つまり、54図で下手が▲7三竜と金を取れば、竜の二段目の利きがなくなるので△2二玉と銀を取る、という狙いです。
その狙いを知りつつ、ここで▲3二銀!(55図)が寄せの好手です。

この▲3二銀は王手+金取りです。通常は文句なく良い手のはずですが、55図では大胆な一手です。なぜなら△2二玉(56図)と銀を取る手があるからです。

さきほどの▲3二銀は王手+金取りながら「竜の利きを止めてしまう手」でもあるのです。そのため、△2二玉と銀を取られてしまいました。しかしこれは下手の想定内です。ここで▲4三銀不成(57図)が継続の好手です。

この▲4三銀不成は銀を動かすことで竜の利きを通して王手をかける「開き王手」の手筋です。しかも銀を成らないのが工夫で、△3四銀を狙っています。上手は△3三玉(58図)と逃げます。

この△3三玉は玉を逃げつつ、次の上手の手番で△4三玉と銀を取る狙いの手です。その余裕を与えず、下手は▲3二竜(59図)と迫ります。

上手は△2四玉(60図)と逃げる一手です。

下手は一気に決めます。▲3四竜(61図)が決め手です。

上手玉を見事に詰ますことができました。これでステップ1が完了です。
今回、角を切って攻める手がありました。理由のない駒損はしない方がよいですが、いけると思った時は勇気を出して角を切って攻めてもらえたらと思います。
次回は「四間飛車定跡 ステップ2-1」です。


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