【六枚落ちマニュアル】第2部第5章第9節 四間飛車定跡 ステップ3-3

◆本節では、四間飛車定跡ステップ3-3を解説します。

前回ステップ3-2では、上手が△1四歩と突いた115図まで解説しました。現在、下手は攻め駒を4筋に集中しています。ただし飛車が参加していないので、▲4八飛(116図)が好手です。

この▲4八飛は今攻めている4筋に攻めの大将である飛車を加えた手です。これで飛角金銀桂歩(!)が4筋を狙っています。「全員集合!」と言いたくなる攻めの形です。上手は△8三金(117図)と寄ります。

この△8三金に…それほど前向きな意味はありません。上手は「指す手がない」状態なのです。4筋を守る銀、玉、金は持ち場を離れることができませんし、△4五歩と歩を取っても▲同桂で逆効果です。それ以外の歩を動かしても取られるだけ…このような「指す手がない」状況に相手を追い込むことができれば優勢になります。
下手は▲4四歩(118図)と取りこみます。

この▲4四歩でいよいよ総攻撃開始です。上手は△同銀(119図)と取ります。

この△同銀で、上手は銀+玉+金の3枚の連携を保っています。それなら、それ以上の枚数で攻めれば良いのです。下手は▲4五金(120図)とぶつけます。

相手の駒に向かって進む手を「ぶつける」と言います

現在、下手は飛+角+金+銀+桂という強力な攻め駒で攻めています。上手は△同銀(121図)と取ります。

下手はもちろんこの銀を取ります。銀で取る手と形で取る手、どちらも良い手ですが、攻めのスピードに勝る▲同桂(122図)を本マニュアルでは推奨します。

▲同桂に代えて▲同銀も自然な攻めです

下手の攻めが強烈です。この▲4五同桂が銀を取りつつ金取りですし、飛車と角の利きもあります。ここは上手の選択肢が3つあります。
1)△5二金(金を逃げる)
2)△4四金(金を逃げる)
3)△4四歩(本手順)
では1)△5二金(参考70図)から。

この△5二金は、金を逃げる自然な手です。しかしこの局面では危険な一手になります。なぜなら▲3三角成(参考71図)で上手玉が詰んでしまうからです。

▲3三馬に代えて▲3三桂成も良い手です

この▲3三角成とされた局面で、上手は△5二玉と逃げることができれば詰まないのですが、先ほど5二に金が動いたことで逃げ道をふさいでしまったのです。122図に戻ります。

あらためて122図。
次に2)△4四金(参考72図)です。

この△4四金は金を逃げると同時に角の利きを止めた手です。これなら▲3三角成とは指せません。
しかしここでも下手に好手があります。桂を取られるところに成る▲5三桂成(参考73図)が好手です。

この▲5三桂成は△同玉(参考74図)と取られてしまいますが…

桂をわざと捨てることで、飛車の利きを通したのです。これで▲4四角(参考75図)と金を取ることができます。

参考75図は下手優勢です。実は本手順もほぼ同じ展開になるのでこの手順の解説はここまでとします。では122図に戻ります。

あらためて122図。
では本手順の3)△4四歩(123図)の解説に進みます。

この△4四歩は、金を逃げるよりも角の利きを止めることを重視した受け方です。下手はもちろん▲5三桂成(124図)と金を取ります。

上手も△同玉(125図)と取ります。

「~筋がある」というのは「~という手がある」という意味です

ちなみに、ここまで下手が攻めることばかり解説してきましたが、桂を上手に渡したので、上手の手番になれば△3六桂!という王手飛車の筋があります。そのため、桂を渡したあとは王手をかけ続けるか、いったんこの△3六桂を防ぐ手を指すか、どちらかになります。
ここで王手をかけ続ける▲4四角(126図)を本マニュアルでは推奨します。

この▲4四角の局面は、さきほど解説した参考75図とほぼ同じです。
さて、ここも上手の選択肢が3つあります。
1)△4三玉(玉を逃げる)
2)△4二玉(玉を逃げる・本手順)
なお「△5二玉」と逃げる手もありますが、これは△4二玉と逃げた時とほぼ同じなので省略します。
では1)△4三玉(参考76図)から。

この△4三玉は、飛車の利きに入りつつも角の死角に入りこむ逃げ方です。ここではいろいろな良い手がある中で▲3三金(参考77図)を推奨します。

この▲3三金は玉を3筋方面に逃がさず、5筋に追い立てる手です。上手は△5二玉(参考78図)と逃げる一手です。

この△5二玉は、このあと△6一玉→△7二玉といるルートで逃げる手を狙っています。それを許さないのが▲5三銀(参考79図)と打つ手です。

この▲5三銀は、△6一玉と逃げた時に▲6二銀成で詰ます手を用意した、「上手玉を6筋に逃がさない手」です。上手は△5一玉(参考80図)と逃げます。

下手は先ほど打った金を使い▲4二金(参考81図)と上手玉を攻めます。

▲4二金に代えて▲6二銀成も良い手です

上手は△6一玉(参考82図)と逃げるよりありません。

ここで下手の狙いである▲6二銀成(参考83図)が決まります。

上手玉を6筋より左に逃がさず、見事詰ますことができました。
では126図に戻ります。

あらためて126図。
では本手順の2)△4二玉(127図)の解説に進みます。

この△4二玉も下手の飛車の利きに入りますが、今のところは角が飛車の利きを止めているので大丈夫です。ここで下手は先ほどと同様に▲3三金(128図)と打ちます。

上手玉を徐々に追い詰めています。ここで上手玉は4つの逃げるマスがあります。
1)△3一玉は▲3二銀で詰み。
2)△5二玉は▲5三銀と打ち、さきほど解説した手順と同じなので省略。
3)△4一玉(まっすぐ下に逃げる)
4)△5一玉(6筋を目指す)
では3)△4一玉(参考84図)にはどうするか。

この△4一玉はまだ下手の飛車の利きの中です。そこで▲5三角成(参考85図)が好手です。

この▲5三角成は、角を動かすことで飛車の利きを通して王手をかける「開き王手」です。上手は4二に合駒を打っても▲同飛成で意味がないので△5一玉(参考86図)と逃げる一手です。

ここで▲5二銀(参考87図)と打てば上手玉は詰みです。

「頭金」ならぬ「頭銀」の詰みです。
では128図に戻ります。

この▲3三金に対して一通りの玉の逃げ方を解説しました。最後に本手順である4)△5一玉(129図)の解説に進みます。

この△5一玉はこの後△6一玉→△7二玉のルートで逃げることを目指しています。それのルートをふさぐために▲6二銀(130図)と打ちます。

これで上手玉の逃走ルートをふさぐことができました! ここで上手は「△4一玉」か「△5二玉」のどちらかです。実はどちらも同じ手で詰むので△4一玉(131図)のみ解説します。

この131図と似た局面を少し前に解説しました。やはり▲5三角成(132図)が好手です。

角を動かして「開き王手」。これで上手玉が詰みです。
これでステップ3が完了です。上手が6筋を厚く守っているのを見て、下手は4筋に攻め駒を集中して一気に破りました。
次回は「四間飛車定跡ステップ4-1」です。


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