【六枚落ちマニュアル】第2部第5章第8節 四間飛車定跡 ステップ3-2

◆本節では、四間飛車定跡ステップ3-2を解説します。

前回ステップ3-1では、上手が△2四歩と突いた95図まで解説しました。ではここから下手が攻撃を開始します。ただし、一気に攻めるのではなく、良い形を作るための攻めです。まずは▲5五歩(96図)と突きます。

この▲5五歩は5筋の歩交換をする目的です。上手は△同歩(97図)と取ります。

下手は▲同銀(98図)と取ります。

上手は銀を追い返したいので△5四歩(99図)と打ちます。

前回ステップ3-1で解説したように、この局面は上手の守りが堅く、▲6四歩と攻めても△5五歩と銀を取られて失敗します。よってここはおとなしく▲6六銀(100図)と引きます。

これで下手は5筋の歩交換に成功しました。この手順はある攻めの形を目指したもので、すぐにその意図が分かります。上手は△8五歩(101図)と突きます。

この△8五歩は△8四銀と銀を前進させる手を可能にしています。下手はここで▲5七銀(102図)が工夫の一手です。

下手は銀を下がってばかりで損に見えるかもしれません。上手は△8四銀(103図)と上がります。

この△8四銀は次の上手の手番で△7五歩と突いて攻める手を狙っています。下手は▲6六角(104図)と上がります。

この▲6六角は△7五歩の攻めを防ぎつつ銀取りにした手です。なお、この▲6六角の位置は角の利きが四方に届くとても良い位置です。飛車の利きを止めてしまうマイナスがありますが、このステップ3では角が攻めの主役なので、ここに配置するのが良いのです。上手は△7三金(105図)と上がります。

この△7三金は△8四銀を守りつつ、6筋の攻めにも備えた手です。下手は▲5六銀(106図)と上がります。

この▲5六銀という形を作ることが下手の狙いでした。▲6六銀型に比べて▲5六銀型は4筋を攻める手が可能になりますし、角の利きが直接上手陣に通るようになります。
この▲5七銀→▲5六銀という手順を「銀の繰り替え」と言います。銀は1手で横に動けないので、こうして2手かけて横に移動するのです。
上手は△9四歩(107図)と突きます。

この△9四歩は9筋を攻めるというより、将来上手玉が9筋に逃げた時に玉が逃げるマスを増やした手です。
さて、下手は▲5六銀型を作り、▲6六角とともに4筋を攻める態勢を作っています。しかし現在4筋を上手の銀、玉、金が守っており、角+銀では攻め切ることができません。そこで下手は攻め駒を増やすために▲3六歩(108図)と突きます。

この▲3六歩はやや大胆な手です。基本的に、将棋は自分の玉の囲いの近くで戦いを起こさない方が良いです。しかし今回はある狙いがあります。
上手は△同歩(109図)と取ります。

下手はもちろん▲同金(110図)と取ります。

通常、このように金が美濃囲いから離れるのは良い指し方ではありませんが(以下略)。上手は△3四歩(111図)と突きます。

「キズ」とは、弱点や攻めの目標になるマスのことです。

この△3四歩は自陣のキズを消した手です。この△3四歩を打たずにいると将来下手から3筋を攻められやすく、こうして打っておくのが良いのです。
下手は▲3七桂(112図)と跳ねます。

この▲3七桂で4筋を攻める駒を増やすことができました。上手は△9五歩(113図)と突きます。

この△9五歩は、将来玉が9筋方面に逃げた時に玉が逃げられるマスを増やした手です。さあ、これで下手の攻撃態勢がほぼ完成です。今のところ、角+銀+金+桂+歩の5枚で4筋を攻める態勢です。それでは▲4五歩(114図)と突きましょう!

さあ、戦いが始まりました。下手は4筋に角、銀、金、桂を集中させて攻めています。ここで上手はこの▲4五歩と取らずに△1四歩と突く手を本手順としますが、素直に△同歩(参考68図)と取ったらどうなるかを解説します。

参考68図ではいろいろな手があります。その中でも、シンプルに▲同桂(参考69図)が良いでしょう。

これで金と銀の両取りです。下手成功です。
114図に戻ります。

よって、上手はこの▲4五歩を△同歩と取ることができません。そこで△1四歩(115図)と突きます。

この△1四歩は将来1筋を攻める狙い…という訳ではありません。正直なところ、上手は「動かす駒がない」状態なのです。▲4五歩と突かれても△同歩と取れないし、今4筋を攻められているので△3三銀、△4三玉、△5三金のいずれも今の持ち場を離れることができません。下手が良い攻めの形を作ったので、上手の指し手が限定されていることを感じ取ってもらえたらと思います。

ステップ3-2は以上です。
次回「四間飛車定跡ステップ3-3」では、ここから一気に下手が攻め切る手順を解説します。


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