【六枚落ちマニュアル】第2部第3章第15節三間飛車定跡 ステップ4-4

◆本節では、三間飛車定跡ステップ4-4を解説します。

前回ステップ4-3では、上手が△5三銀と引いた205図まで解説しました。今回はここから上手玉を詰ますまでを解説します。
205図は下手が駒得したものの、どう攻めるのか分かりにくい局面です。ここから下手は工夫して攻めます。まずは▲8四歩(206図)と打ちます。

この▲8四歩は「合わせの歩」の手筋です。次に▲8三歩成とされたくないので上手は△同歩(207図)と取ります。

下手は▲同角(208図)と取ります。

角で取った理由は、次の下手の手番で「▲5一角成」を狙えるからです。
そこで上手は△7三歩(209図)と受けます。

これで上手は▲5一角成を防ぐことができました。
しかしここで下手に好手があります。▲6六角(210図)と引く手です。

この▲6六角は、「▲8二飛成」「▲2二角成」を狙った好手です。上手は両方を受けることができないので、△8三歩(211図)とこちらを受けます。

下手はもちろん▲2二角成(212図)と成ります。

下手の工夫した手順が成功し、角を成ることができました。そして下手の次の手番で「▲6三金」と挟み撃ちをする狙いがあります。
そこで上手は△5二玉(213図)と逃げます。

この△5二玉は「玉の早逃げ」の好手です。こうして玉を馬から遠ざけます。下手は▲3二馬(214図)と追撃します。

この▲3二馬は上手玉に一歩近づき、次の下手の手番で▲4三金などを狙います。上手はさらに△6三玉(215図)と逃げます。

この△6三玉も「玉の早逃げ」です。上手はこの玉の早逃げをよく使います。さて、下手はどう攻めるか。本手順は▲6一銀と攻める手ですが、代えて▲4一馬(参考111図)と攻めたらどうなるかを解説します。

この▲4一馬も自然な王手です。
しかしこの場合は△5二銀(参考112図)と受ける手があります。

この△5二銀は王手を受けると同時に馬取りにした手です。こう打たれると下手は馬を逃げるしかなく、攻めが一手遅れることになります。
なお、この△5二銀のように「相手の大駒が攻めてきた時に金や銀を打って次に取るぞとして、退却させる手」のことを将棋用語で「はじく」と言います。
215図に戻ります。

以上、▲4一馬の王手は△5二銀とはじかれてしまうことを解説しました。そこで215図では▲6一銀(216図)が工夫の一手です。

この▲6一銀を打っておくことで、次の下手の手番で▲4一馬と攻めた時に上手は△5二銀とはじくことができません。
上手はこの▲6一銀に対しても△5二銀(217図)と打ちます。

この△5二銀は、▲4一馬を防いだ手です。しかし下手は先に▲6一銀と打ってあるので、この△5二銀を▲同銀不成(218図)と取ることができます。

この場合は王手になるので、「不成」が良いです

上手は△同玉(219図)と取ります。

なんだかこの局面を見たことがある、という方は鋭いです。実は219図は「66手目214図」とほぼ同じ局面なのです。しかも、214図では上手の手番だったのが、今回は下手の手番ですから条件が良くなりました。
よってここで▲4三金(220図)と攻めることができます。

この▲4三金は単なる王手ではなく、△5三銀も同時に狙った手です。
上手は△6二玉(221図)と逃げます。

この△6二玉は、銀を守りながら玉を逃げた手です。△6二玉に対して▲5三金なら△同玉と取り返すことができます。なお、△6二玉に代えて△6一玉だと▲5三金で銀をただ取りされてしまいます。
さて、ここで下手に寄せの好手が出ます。▲5一銀(222図)です。

この▲5一銀は「送りの手筋」です。△同玉と取らせることで上手玉と△5三銀を引き離し、▲5三金と銀を取る狙いです。
上手は素直に△同玉と取るのが本手順ですが、先に△同玉に代えて△6三玉(参考113図)と逃げたらどう攻めるかを考えます。

この△6三玉は、やはり△5三銀を守りながら玉を逃げる手です。
この△6三玉に対しては▲4一馬(参考114図)がうまい追撃です。

こうなると上手は△7二玉と逃げるよりなく、下手は▲5三金と銀をただで取ることができます。
222図に戻ります。

あらためて、下手が▲5一銀と打った222図です。
上手は素直に△同玉(223図)と取るのが本手順です。

下手はようやく▲5三金(224図)と銀を取ることができます。

これで下手は次の手番で▲5二銀あるいは▲6二銀で上手玉を詰ます手を狙っています。この「次に詰ますぞ」と言う手を将棋用語で「詰めろ」と言います。224図の▲5三金は「上手玉に詰めろをかけた手」なのです。
本手順はここで△6一玉と逃げる手ですが、先に5二と6二のマスを同時に受ける△6一銀(参考115図)にどう攻めればよいかを考えます。

この△6一銀で5二と6二のマスは守りました。しかしこの△6一銀自体が玉の逃げ道をふさいでしまうので、参考115図では▲4二馬(参考116図)で詰みです。

詰みを防ぐために打った駒が玉の逃げ道をふさいでしまうことはよくあります。224図に戻ります。

あらためて224図。
では本手順の△6一玉(225図)の解説に進みます。

この△6一玉も「玉の早逃げ」です。
しかし下手は▲6二銀(226図)と追撃します。

上手は△7二玉(227図)と逃げる一手です。

次に△8一玉と逃げればまだ上手は粘ることができるのですが、ここで▲5四馬(228図)が決め手です。

この馬の利きで上手玉を8一に逃がさず詰みとなります。

これでステップ4が完了です。上手の堅い守りを、下手がさまざまな工夫で破りました。
そして三間飛車定跡もこれで完了です。

次回から「四間飛車定跡」が始まります。
次回は「四間飛車の基本」です。


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