【六枚落ちマニュアル】第2部第2章第15節 9筋攻め定跡 ステップ4-4

◆本節では、9筋攻め定跡 ステップ4-4を解説します。これで9筋攻め定跡が完了します。

上手が△5三金と寄った148図から解説を再開します。
下手はと金を2枚作り、順調です。ここから飛車と角を成りこめばゴールに近づきます。よって、まずは▲7四と寄(149図)と指します。

2枚のと金で金を攻めます。上手は金を取られたくないので△5五金(150図)と逃げつつ攻めます。

 この△5五金は、少し前に「△5五歩▲同歩」というやり取りがあったからこそ指すことができます。△5五歩の「突き捨ての歩」は、こうしてのちに金が進むルートを作っていたのです。
下手は▲9三角成(151図)と成ります。

これで角から馬に昇格し、下手順調です。
上手は△3四歩(152図)と突きます。

この△3四歩は次に△3三玉と逃げる手を作った手です。上手の立場からすれば、もう少し早めに突きたかったのですが、8筋の守りに集中するため、その余裕がなかったのです。
下手は▲8五飛(153図)と指します。

待ちに待った飛車の活用です。これで飛車を成ることが確実になりました。
上手は△3三玉(154図)と上がります。

この△3三玉はステップ2やステップ3でも現れた手です。ここに玉を上がると上手は粘りがききます。
下手は▲6三と寄(155図)と指します。

2枚のと金で上手の金を攻めます。上手は金を取られたくないので△5四金上(156図)と逃げます。

5三にいた金を上に上がったから「上」を付けます。                     5五の金を5四に動かす場合は「△5四金引」です

 下手はさらに上手の金を狙い、▲6四と寄(157図)と指します。

上手は金を取られたくないので△4五金上(158図)と逃げます。

下手はなかなか上手の金を取ることができませんが、と金を上手玉に近づけて順調です。そしてここで飛車を成ります。飛車を成るマスは「8一」「8二」「8三」の3か所があります。本マニュアルの推奨は▲8二飛成(159図)です。

二段目に成る理由は、遠く△2二銀を狙っているからです。今、2二の銀は3三の玉がかろうじて守っています。もし玉が2四などに逃げれば、玉と銀のひもが切れてしまうので、下手は▲2二竜と銀を取ることができます。つまり、▲8二飛成と成って△2二銀を狙うことで、上手の玉を上に逃げにくい(逃げたら銀を取るよ)ようにしているのが、この▲8二飛成の意味です。なお、▲8二飛成に代えて▲8三飛成(参考132図)も良い手です。

上手玉が三段目にいるので、こちらも三段目に竜を作って横から攻めるのは理にかなっています。ただし、参考132図では△2四玉と逃げる手があるので、本マニュアルでは▲8二飛成を推奨します。
では159図に戻ります。

 上手は受ける手がないので△5六金直(160図)と攻めます。

金が横に並んでいる状態から、一方の金をまっすぐ前に進む場合は「直」を付けます

この△5六金直の狙いは△4七金あるいは△6七金です。どちらかと言えば、桂取りになる分△6七金の方が厳しい狙いです。ただし、と金の攻めとは違い、金で攻められてもそれほど厳しい攻めではないので、下手は受けずに攻めて大丈夫です。▲5三と寄(161図)と攻めます。

と金2枚+竜で攻めています。この▲5三と寄の次の狙いは▲4二竜です。本手順ではここで△同銀と「と金」を取るのですが、下手の狙いを確認するために△6七金(参考133図)と指してみましょう。

この△6七金は下手玉に近づくとともに△7七金と桂を取る手をねらっています。ここで下手は狙いの▲4二竜(参考134図)を指します。

上手は△2四玉(参考135図)と逃げる一手です。

上手の玉と銀が離れたので、下手は▲2二竜(参考136図)と銀をただで取ることができます。

下手の攻めが成功しました。このように▲4二竜といったん王手をかけ、△2四玉と追ってから▲2二竜と取る手順は時折現れますので、覚えておくと便利です。
では▲5三と寄と指した161図に戻ります。


上手はあまりと金を取りたくないのですが、仕方なく△5三同銀(162図)と取ります。

下手はもちろん▲同と(163図)と取ります。

これで下手は上手の銀をはがすことができました。上手は△6七金(164図)と攻めます。

この△6七金は、さきほど解説した通り、△7七金と桂を取る手を狙っています。しかし…さきほどの解説と同様に▲4二竜を防いでいません。それなら下手は▲4二竜(165図)と指します。

上手は玉を逃げるしかありません。先ほどは4四に銀がいましたが、今はいないので△4四玉(166図)と逃げます。

下手はここでも▲2二竜と銀を取ることができます。しかし、上手玉が2四に逃げた場合と違い、▲2二竜は銀を取れるものの上手玉から遠ざかります。よって本マニュアルでは▲4三竜(167図)と銀を取らずに上手玉に迫る手を推奨します。

この▲4三竜の王手で、上手は玉を「3五」「5五」に逃げるしかありません。本手順で△3五玉を解説しますので、先に△5五玉(参考136図)と逃げた場合を解説します。

上手側としては、このように中央に逃げた方が逃げ道が多く、つかまりにくいケースが多いのです。しかし、この場合は下手の馬の利きなどがあり▲5四竜(参考137図)でなんと詰んでしまうのです。

竜と馬の利き、そして▲4七歩が4六の逃げ道をふさぐなど、見事な連携で上手玉を詰ますことができました。
では△5五玉に代えて△3五玉(168図)の解説に進みます。

この局面は下手優勢であり、いろいろな勝ち方があります。本手順は▲6八銀と上がる手にしましたが、それ以外に▲2六銀(参考138図)と打つ手も良い手です。

上手は△2四玉(参考139図)と逃げる一手です。 

 これで上手の玉と金が離れたので、下手は▲4五竜(参考140図)と取ることができます。

これも、先ほどの「▲4二竜と王手をかけ、玉と銀を離して▲2二竜とただで銀を取る」パターンと似た攻め方です。参考140図は下手の攻めが成功しています。ただし、ここで△1四歩(参考141図)と逃げ道を開ける手があります。

ここから下手が勝つまでに少し時間がかかるので、▲2六銀がベストの手とは言えません。
では△3五玉(168図)と逃げた局面に戻ります。

ここで▲2六銀ともう一つ、▲6八銀(169図)が覚えて欲しい手で、本手順とします。

なんと、攻めてきた金に守りの銀をぶつけてしまうのです。通常「攻めの駒と守りの駒の交換は攻める側の得」なのですが、この場合は「△6七金を盤上から消し、さらに下手の持ち駒のするため」にこう指すのが良いのです。
169図にて、本手順で△6六歩をのちに解説しますので、まずは上手が△同金(参考142図)と取るとどうなるか解説します。

下手はもちろん▲同金(参考143図)と取ります。

 これで、下手玉の周辺に上手の駒がなく、下手玉が安全な状態になりました。今回のように、攻めの駒が1枚だけで攻めてきた場合は「攻めの駒と守りの駒の交換」でも、「守る側の得」になることがあるのです。
では▲6八銀とぶつけた169図に戻ります。

上手はこの▲6八銀に対して、△同金と取るとせっかくの攻め駒が盤上から消えてしまいます。そこで、ここでは△6六歩(170図)と打つのが高度なテクニックです。

こうして金を歩で支えておけば、▲6七銀と取られても△同歩成で下手玉に迫る攻め駒を新たに作ることができます。しかし下手はかまわず▲6七銀(171図)と取ります。

 上手はもちろん△同歩成(172図)と取ります。

本来は、受ける側がこのようにと金を作られる指し方は大きな損です。
しかし、この場合下手は金を手に入れるのが目的でした。ここで▲2六銀(173図)と攻めます。

上手は△2四玉(174図)と逃げる一手です。

下手はここで金を持っているので▲2五金(175図)と打てば詰みです!

175図、竜+金+銀の協力で見事に上手玉を詰ますことができました。
 
以上でステップ4が完了です。よって9筋攻め定跡自体もこれで完了です。
スズメ刺しとはまた違うおもしろさを味わってもらえたらと思います。

さて、ここでいったん一区切りです。少し準備期間をおいて、第3章「棒銀定跡」の解説をスタートします。次回は「棒銀定跡の基本」です。 


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