葵短歌 2020

2020年に詠んだ短歌たちです。はっちゃけてるなぁ。


恋をするたびに気がかり未だ見ぬ子につける名が減っていくこと

コンタクト指からずっと離れないもうすがりつきたくはないのに

猫なんか撫でてるように恋してるもっと甘えて喉を鳴らして

日めくりはおとといのままで止まっててだってカーテンも閉めたまんまで

安物の白いティッシュに吐き出したさっきまで君のものだった白

年賀状印刷されて反りかえる君の背中を思い出してる

独特なにおいが部屋を包みこむいろんなものがいろんな白さ

元カレのいる学校で楽しげな恋を探すよアン・ドゥ・トロワ

消しゴムをわざと忘れたり落としたり口実だって知ってるくせに

やさしさが唯一取り柄のほそい手にちょっと抱かれてみたくなってる

羽ばたきを満足に鳥に与えてもどうせこの世は居場所ではない

幸せを待ってるだけの君なんてさっさと死ねばいいと思うよ

ばあちゃんの猫がめちゃくちゃ庭見てるそっかその辺に埋めたんだっけ

子を殺すことと子に殺されること親孝行になるのはどちら

首を吊るためのロープが異国では命綱なんて不公平だね

夏休み安く売られし雑巾は汚されるため白く生まれた

空は青こころ安らか君は赤 小壜に揺れて秋は深まる

秘めごとを抱えし胸は飾られてヴァージンロードのおぼつかぬ足

セックスを上手か下手かで語ってるお前らはまだスナップえんどう

古(いにしえ)のだれかが濡らす赤い袖わたしの袖はきみの涙で

金魚鉢みつめる琥珀ゆれる赤ふたりの恋をさえぎる水面(みなも)

夕焼けがきれいだったよお姉ちゃん誰かに連れてかれたお姉ちゃん

最中は無音のテレビ今週も見逃す探偵!ナイトスクープ

帰宅したスーツに絡む茶色い毛どこの空き地の泥棒猫よ

黙ってて遠くに落ちる雨がきれい涙じゃあんな色は出せない

真夜中にピエロがくれるふうせんは絶望だけが詰まってそうで

春色のリップをはじめて塗る朝はキスする前と同じつめたさ

昼下がりテニスボールは規則的 離れることも愛だと知った

ペン先を出しっぱなしの左手がぼくは何よりきらい、きらいだ

彼氏よりルナルナの方が生理とか体温とかを気にしてくれる

両想いニキビだからと言われても本日わたくし機嫌が悪い

明日から君の世界の真ん中でぼくは大きな藍色になる

五月雨があなたの髪のようだねと世界は全て私に通ず

血管を三人がかりで探す朝生かされるのもひどくおっくう

今すぐに君とひとつになれるなら梅田でもいい難波でもいい

いついつも穏やかなままじゃいられない時にはきみの腕を食みたい

限定のメロンパン色ボールペン上の方なの底の方なの

定期券範囲外だった下宿先往復三百円の恋だった

ペアリング円周率が同じだし六月なんかも近いことだし

10分も待って2分を揺られてくなんにもない町きみがいる町

SAはくちづけよりもなめらかにソフトクリームをたしなむ聖地

祝日の8時ちょうどに降る雨は恋の終わりを予感させてる

デジタルの包囲網から逃げおおせ井戸水なんかを汲むだけの夏

君にだけ見せてあげるねピアスとかクロックス履いた日焼け痕とか

そうだなあ短歌に詠むなら夏が好き楽しい記憶まるでないから

幸せにするよだなんて言う君の子どものころのゆめはアリクイ

頑張って集めたものが灰になる消しゴムスーパーボール元カレ

音漏れであたしの好きなインディーズバンドが叫ぶ優先座席

‪できるなら結婚祝いがほしいですそうして過去にしていかなくちゃ‬

‪愛だけが胸にあふれてしまっててたどりつくのはやさしい溺死‬

ねえなんで歯ブラシ2本置いてるの?私の分なの?こんな毛先で?

はるかぜが刺さるぐらいにもろいのだ失恋をした私のこころ

やわらかく首をしめてよもういちど君の名前を呼べないように

このたびはころしてくれてありがとう本日、誠にお日柄もよく


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