じょうずに生きる

初めての連作短歌です。夏頃にせっせと作りました。第二回石井僚一短歌賞応募作です。


じょうずに生きる(15首)


明け方の夢でね、君が死んでたの、私の腕で。幸せだった?

私にも守りたいものがありまして包丁を隠し持っていまして

筆箱の定規が無残にまっぷたつ私もこれほど潔ければ

棺桶でチョコレートフォンデュ作ったらさすがの君も怒るだろうか

申し訳ないですそちらの棺桶は売約済となっております

それならばこの棺桶はいかがでしょうお安くしますよ中古ですので

血肉骨みちあふれてるあれやこれ鳴けと喚けと我をゆさぶる

ぶつぶつと髪をちぎりてあゝぼくは健康なのに生きているのに

あのときはなんにも知らないままでしたまだ生きてると信じてたのです

犬、桜、電車、鉛筆、あとひとつ?それは本当に必要ですか?

神無月出雲大社へ赴けば私も神の柱となろう

今日もまた君が来りてホラを吹く私は去年死んだじゃないか

選択肢どこかでミスった迷いびとリセットしたい?それなら死んで

すきあらば夏でも冬でも殺しあういのちはつねにわがままである

せんせいが連絡ノートに赤ペンで「きょうもじょうずに生きられました」


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