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第3章 主な医薬品とその作用1

かぜと風邪薬のはたらき


▢ 1.かぜの発症
かぜは、かぜ症候群という、主にウイルスが鼻や喉などに感染して起こる様々な症状の総称です。
かぜの原因のほとんどはウイルスの感染であるが、細菌の感染や、まれに冷気や乾燥、アレルギーのような非感染性の要因による場合もある。生体の免疫機構によリウイルスが排除されれば、通常は数日から1週間程度で自然に治癒します。
 
▢ 2.かぜの症状
かぜの症状は、くしゃみ、鼻汁、鼻 閉、咳、痰等の呼吸器症状、発熱、頭痛、関節痛等の全身症状が組み合わさって現れます。
かぜの症状には、ほかに咽頭痛や全身僧怠感などがあります。かぜとよく似た症状が現れる疾患は、喘息、アレルギー性鼻炎、リウマチ熱、関節リウマチ、肺炎、肺結核、髄膜炎、急性肝炎、尿路感染症等多数あります。
 
▢ 3.かぜ薬の働き
かぜ薬は、総合感冒薬とも呼ばれ、咳で眠れなかったり、発熱で体力を消耗しそうなときに諸症状の緩和を目的として使用されます。
かぜ薬は、ウイルスの増殖を抑えたり、体内から取り除くものではなく、かぜ薬の使用は対症療法です。発熱、咳、鼻水など症状がはっきりしている場合には、それぞれ解熟鎮痛薬、鎮咳去痰薬、鼻炎用内服薬を選択することが望まれます。
 
▢ 4.かぜ薬の配合成分
総合感冒薬は、解熱鎮痛成分、くしゃみや鼻汁を抑える成分、鎮咳成分、去痰成分など複数の有効成分が配合されています。
かぜ薬は、通常、複数の有効成分が配合されているため、他のかぜ薬や解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、鼻炎用薬、アレルギー用薬、鎮静薬などが併用されると、同じ成分または同種の作用を持つ成分が重複して、効き目が強すぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがあります。
 

風邪薬の配合成分

 ▢ 5.解熱鎮痛成分
かぜ薬に配合される解熱鎮痛成分には、アスピリン、サリチルアミド、エテンザミド、アセトアミノフェン、イブプロフェン等があります。
アスピリンは、小児にはいかなる場合も使用しない。サリチルアミド、エテンザミドは、水痘またはインフルエンザにかかっている15歳未満の小児には使用を避け、アセトアミノフェンや生薬成分からなる製品を選択します。
 
▢ 6.くしゃみや鼻水を抑える成分
かぜ薬に配合される抗ヒスタミン成分や抗コリン成分には、くしゃみや鼻水を抑える働きがあります。
抗ヒスタミン成分には、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、メキタジン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェンヒドラミン等があるが、眠気や口渇の副作用に注意します。抗コリン成分として、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドが配合されています。
 
▢ 7.アドレナリン作動成分
かぜ薬に配合されるアドレナリン作動成分には、鼻粘膜の充血を和らげ、気管、気管支を広げる働きがあります。
アドレナリン作動成分には、塩酸メチルエフェドリン、メチルエフェドリンサッカリン塩、塩酸プソイドエフェドリン等がある。生薬成分のマオウが配合されていることがありますが、いずれも、依存性があることに留意します。
 
▢ 8.鎮咳成分
かぜ薬に配合される鎮咳成分には、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルフアン等があります。
鎮咳成分には、ほかにノスカピン、ヒベンズ酸チペピジン、塩酸クロペラスチン等があります。リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデインには依存性があり、また胃腸の運動を低下させる作用も示し、副作用として便秘が現れることがあります。
 
▢ 9.痰の切れを良くする成分
かぜ薬に配合される去痰成分には、フェネシン、塩酸ブロムヘキシン、チルシステイン等があります。
去痰成分には、ほかにグアヤコールスルホン酸カリウム、生薬成分のシャゼンソウ、セネガ、キキョウ、セキサン、オウヒ等があります。セネガは糖尿病の検査値に影響を生じることがあるので注意します。
 
▢ 10.抗炎症成分
かぜ薬に配合される塩化リゾチーム、セラペプターゼ等の抗炎症成分には、鼻粘膜や喉の炎症による腫れを和らげる働きがあります。
抗炎症成分には、ほかにセミアルカリプロティナーゼ、ブロメライン、グリチルリチン酸三カリウム、 トラネキサム酸等がある。塩化リゾチームは、組織の修復に寄与して、気道粘膜の線毛運動を促進させて痰の排出を容易にします。鶏卵アレルギーがある人では使用を避ける必要があります。
 
▢ 11.抗炎症成分
抗炎症成分であるブロメライン、セミアルカリプロティナーゼは、蛋白質分解酵素であり、炎症物質を分解する作用を示します。
ブロメライン、セミアルカリプロティナーゼは、フィブリノゲンやフィブリンを分解する作用もある。血液凝固異常の症状(出血傾向)のある人では出血傾向を悪化させるおそれがあり、注意が必要です。
 

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