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帯状疱疹とワクチンについて

こんにちは、上西内科副院長の中畑征史です。

今回は、帯状疱疹に対するワクチンの勉強会に参加してきましたので、
その内容を紹介しつつ、まとめていきたいと思います。

まず帯状疱疹ですが、原因となる微生物は水痘帯状疱疹ウイルスになります。ヘルペスウイルスの一種で小児の時に初感染すると水痘、いわゆる水疱瘡として発症します。数日で水痘は収まりますが、体内からは排出できずに神経の一部に潜み続けます。
若いうちは免疫が強いので再活性化することがありませんが、高齢になるにしたがって、特に50代以上になると再活性化しやすくなります。
再活性化した場合には水痘では無く、帯状疱疹として発症します。

再活性化したウイルスは神経線維を伝わって皮膚へ戻り、痛みのある水疱を伴う皮疹が出現します。
皮疹は、ほとんどの場合感染した神経線維の上にある皮膚に帯状に発生し、体の左右の半分に出現します。体の中心線を超えないことが特徴です。
がん患者などで免疫が落ちている場合には、数本の神経の範囲に出現したり神経を通して脳の近くに侵入し、髄膜炎を起こす場合もあります。

また、水痘に関しては空気感染という感染形式をとるため、結核や麻疹などとともに感染力が強いことが特徴です。
いわゆるコロナウイルスやインフルエンザウイルスより感染の射程距離が長い、というイメージです。
現在、小児では水痘ワクチンが定期接種化され、かなり小児の感染は減少傾向です。しかし、皮肉にも小児水痘患者の減少とともに帯状疱疹の発症率は増えているのが現状です。
この解釈ですが、周りに水痘患者がいて大人が接すると、それにより免疫が誘導されて抗体の値などが高くなります。
ブースター効果によってある程度免疫が再度強化される機会が少なくなり、それにより発症しやすくなった、と言われています。
それゆえ、成人の帯状疱疹の予防が非常に大事になってきております。

さて、現在日本で手に入るワクチンに関しては小児でも使用されている水痘ワクチン(生ワクチン)と、シングリックス(組み替えサブユニットワクチン)の2種類になります。
シングリックスはウイルスそのものを弱毒化した生ワクチンではなく、ウイルスの表面に存在する糖タンパク質Eを抗原のターゲットとした組換えサブユニットワクチンです。ワクチンの効果を高めるアジュバントと呼ばれる物質も含まれています。
これをすでに水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫を持っている人に接種すると、抗体だけでなく特異的なCD4陽性T細胞が誘導されて予防効果を発揮します。

免疫には大きく分けて細胞性免疫と液性免疫という2つがあります。
一般的なウイルスなどは抗体と呼ばれる液性免疫が重要なことが多いですが、帯状疱疹のワクチンでは細胞性免疫が重要とされており、これが50歳以上になって低下することで発症しやすくなると言われています。
そして、シングリックスはこの細胞性免疫も長期間(現在のところ10年は)保持されると考えられています。
かなり効果が高いワクチンではありますが、2回接種が必要なことと1回2万円以上、計4万円以上と高価なことが普及にはやや障害となっています。
水痘ワクチンもある程度効果はありますが、効果は5年しか持続しないことと、高齢者には効果が出にくいことが報告されています。
また水痘ワクチンは生ワクチンでもあり、白血病など接種に注意が必要な場合もあります。

シングリックスは非常に高価であり、気になるのはその有効期間です。
水痘ワクチンの効果は5年と言われており、それに対してどれくらい持つのか?というのが気になります。
まだ論文化されていませんが、2022年の米国感染症学会にてZOSTER-049試験(非盲検長期追跡調査試験)の中間解析の結果が出ています。
それによると4年の解析をした試験の後に、さらに6年間にわたり有効性、安全性および免疫原性を評価したものになります。
あくまで中間解析ですが、ワクチン接種後最長10年にわたりワクチンの有効性は81.6%でした。
少なくとも10年間での有効率81%はかなり高い数字と僕は評価します。
従来の水痘ワクチンは5年間で効果が切れることは示されていますので、高価ではありますが有益と考えます。

現状では、50歳以上の方であれば価格を気にしなければシングリックス、
価格が気になるのであれば少なくとも水痘ワクチンの接種が勧められるかと考えます。
特に糖尿病など免疫低下をきたしやすい疾患の方には、当院でも今後も情報提供していきたいと考えています。

愛知県小牧市
糖尿病・甲状腺 上西内科
副院長 中畑征史

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